どうやら転生したようですが今回の人生は私のものです。
@n-c
第1話 初めまして
此処は鬼畜王国のとある森の中。
鬼畜王国と言っても、お小遣い程度のお金と檜の棒を渡して魔王を倒せとか言って来る王国では無い。
この森は魔の森と呼ばれ、魔物も多いが自然が豊かな場所だ。
私は依頼のためにこの森に来ている。
冒険者の私はこの森に薬草採取に来ていた。
この森の深層手前まで来なければ手に入らない魔力草、回復ポーションや魔力回復ポーションなどに使う薬草だ。
この辺りは自分の庭のように歩ける私には丁度良い仕事になる。
私はフラフラと歩いては魔力草を回収して行くが、手に持ってもいないし袋や鞄を持ち歩いているわけでは無い。
ましてや私には左手も無いのだが。
十分な数の魔力草を回収出来たので街に帰ろうと思ったのだが、20m先にゴブリンが複数居る。
向こうは既に気付いているようで、木の裏に隠れて居るが私には丸分かりだ。
私は指輪を嵌めた右手を握る、弓を持ったゴブリンが木の上から私のことを狙って居るが既に遅い。
木の上のゴブリンは、私の木目調のナイフによって喉を掻き切られている。
残りのゴブリンはそれにすら気付かずに、私に襲い掛かる気でいるようだ。
私のナイフは次々にゴブリンの喉を掻き切っていく、最後のゴブリンが私の目の前に出て来たときには残りは全て始末していた。
漸く仲間の異常に気付いたゴブリンだが、時既に遅し。
最後の1体も私の拳に殴られてお亡くなりになって居る。
ゴブリンは繁殖率が高いので討伐推奨の魔物だ。
何処ぞの薄い本のように多種族を犯して繁殖は出来ないが、1度の出産で多数産むのでほっとくと大変なことになる。
ゴブリンは素材が取れないので、魔石だけを抜き取っておく。
死体はスライムが処分してくれるので、放置で構わない。
ゴブリンは他の魔物でも食べないくらい不味いみたい。
それを処分してくれるスライムには感謝しかない。
その後は何事も無く街まで帰ることが出来た。
左手が無くても冒険者として稼ぐことが出来るようになって良かった。
此処まで来るのに私は努力して来たからね。
私は鬼畜王国のバカ男爵が納める街にある孤児院の出身だ。
私の両親は商人だったのだが、行商に出た際に魔物に襲われて亡くなった。
産まれて間もなかった私はその時に左手を魔物に食べられた。
母が何とか庇ってくれたので左手だけで済んだのだが、その後が大変だった。
父と母には親戚が居らず、私は孤児院に引き取られることになったのだが、そこが最悪の場所だった。
鬼畜王国のバカ男爵は孤児院に渡すお金をちょろまかしていて、孤児院は貧乏だった。
孤児院は隣のアホ教国から来ている教会の経営なのだが、アホ教国も偉い人がお金を着服しており孤児院にはお金を回してくれない。
孤児院は孤児院で院長が孤児を人身売買していてお金を稼いでいた。
私は乳児で左手も無かったので、院長からは要らない子と思われて居たので適当に育てられた。
教会に来る人が偶々乳飲子を育てて居て、その人が善意で私にも乳を与えてくれたので何とか生き延びられた。
離乳食など与えられず、乳離した後はスープのみの生活だった。
そのお陰で私はガリガリの子に育っていた。
ガリガリで、左手も無いので棒のような子供だったのを覚えている。
孤児院でも棒っ子と気持ち悪がられた。
なので孤児院でも私は1人でいることが多かった。
それは私にとっては幸運だったと思う。
私には産まれて数日からの記憶がある。
記憶と言うか、自我があった。
産まれてどれくらいなのか定かでは無いが高熱で3日ぐらい浮かされたときがあった。
その後から多分だが前世の記憶が蘇った。
日本と言う国で働く1人の男性の記憶。
名前や家族などのことは思い出せないが、文化や男がハマっていた趣味などのことは何故か思い出せた。
男の記憶曰く、異世界転生と言うようだ。
男の知識は創作物のようだが、私に取っては現実のことだ。
記憶が蘇ったからと言っても私は私で記憶の男では無いのだが、そのときから自我が芽生えたと思う。
両親が生きていたときから自我があり、両親の顔も覚えているし魔法を使っていたのも覚えている。
私は両親が生活魔法を使っているのを見て此処が日本とは違う世界なのだと気付いたのだから。
私が産まれて半年ほど経った頃、両親と私は行商に出ることになった。
それがただの行商なのか、街を移るためのものだったのかは分からないが、両親と左手はそのときに失った。
狼の魔物に襲われ、父が殺られ母も襲われた。
母は私を抱き抱えて何とか庇おうとしていたが、その時に左手だけは食い千切られた。
私は助かるために近くにいたスライムの酸で、傷口を焼き血止めをした後、気を失った。
それまで私は魔法を使うために体内の魔力を感じ取り、魔力を操作しようと懸命に練習していた。
全身に魔力を巡らせて、身体能力が上がっていたのは感じていたが、赤ん坊が多少動けても魔物には抵抗出来なかった。
私も魔物に食べられて死ぬのだと思ったのだが、偶々通りかかった冒険者に私は救われた。
今思えば偶々では無いのかも知れないが、あの冒険者に会うことは2度と無く真実は分からないだろう。
その冒険者が私を冒険者ギルドに連れて行き、ギルド経由で孤児院に送られることになったのだ。
ギルドで保護されている時が1番幸せだったのかもしれないが、そのときから生き残るために独学になるが魔法の練習は始めていた。
私が自我に目覚めたときに新しい力にも目覚めていた。
それが今も私の視界の右隅に映っているメニューなる文字、日本のカタカナ表記だ。
この世界の言葉も文字も独自のものなのだが、視界に映る文字は私にしか見えないし読めないもの。
メニューを意識するとそこにはストレージとマップ、後はスキルなる表記が出て来る。
ストレージは、前世の記憶にあるゲームにあったものだと思う。
ストレージを意識して見ても最初は何も入っていなかった。
マップはその名の通り地図が映し出されるが、私が通った所以外はグレーアウトしていて見えないようになっていた。
そこには青赤黄色の光点が映し出され、青は味方、赤が敵、黄色はその他だと思われた。
自分は白の三角表記になっている。
最後にスキルを意識すると、そこには
[ ]0歳
スキル:[メニュー][生活魔法][魔力操作][魔力視][魔力感知][再生][回復魔法]
自分が保有しているスキルが表記された。
スキルに関しても意識すると説明が表記される。
[メニュー]:この世界に迷い込んだ転移者が授かるスキル。
ストレージ、マップ、スキルの確認が使用出来る。(この能力は子孫にも引き継がれる場合もある。)
メニューは私のご先祖さまに転移者がいて私に引き継がれたもののようだ。
回復、生活魔法は名前通りの魔法。
回復は私が魔物に襲われた時に覚えた魔法だろう。
左手を失った時に無我夢中で使った記憶がある。
そのせいで私は魔力切れになって気を失ったのだが、そのお陰で私は助かったのだから。
生活魔法はその名の通り生活を便利にするような魔法で、火種や清水、清掃に重量物を運ぶための身体強化やフロートボードなどの魔法が使える。
他にも色々あるがそのうち説明しよう。
ただ私はこの魔法は魔法の基礎のように思っている。
全ての属性魔法を満遍なく使用出来るのは凄いと思うが、あくまでも基礎なので戦闘などでは使えないとされているが使い方次第だと思っている。
後の3つは私が生きる為に努力した結果である。
[再生]に関しては何故生えて来たのかは分かっていないが、便利そうなので良しとしよう。
私は左手が無いので魔力で補えないか試して見たのだが、魔力そのものでは物は触れない。
生活魔法のフロートボードは物を運ぶ魔法だが、物理も魔法も防げる魔法障壁になる。
実際に両親が生きている時に私は自分の出したフロートボードに乗り移動出来るか試しているし、成功もしている。
自分で出したフロートボードなら動かすことは自由に出来た。
乗って移動するには魔力を消耗するが、赤ん坊の私でも出来たので微々たる物だろう。
フロートボードに乗せて移動はできたが、乗せることが出来ないと不便である。
最初はフロートボードで挟んでみたが、硬い障壁だと挟み辛っかった。
なので私は前世の知識にあるゴムやシリコンなどの硬さをイメージしてみた。
ゴムは伸びるが多少硬い感じになり、シリコンは伸びないが柔らかい感じに仕上がった。
挟むだけならゴムでも良かったのだが、シリコンのような硬さに出来たときに欲が出た。
これを手のようにしたら握ることが出来るのではないかと。
それを常時発動出来れば左手の代わりになると考えたのだ。
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