第四十二篇 テーマ「枯れた桜」 ジャンル「恋愛」

 彼女と僕は大学の同級生だった。

 彼女は一年生のときに、友達から聞いたキャンパスの「枯れた桜」に一目惚れしたという。


「まだ咲いてないのにすごく美しいんだって。」


 彼女の熱い語り口に、僕は彼女自身もすごく美しいと思った。

 そして、僕は彼女に恋心を抱いた。


 彼女は毎朝、通学前に枯れた桜の木のそばを通っていた。

 ある日、僕はそこで待ち伏せして彼女に声をかけた。


 彼女はびっくりして、ちょっと驚いたような笑顔を浮かべた。


「何してるの?」


「君に会いたかったんだよ。」


「えっ?」


 彼女は驚いたような顔をして、僕を見つめた。


「好きだよ。君を。」


 僕は彼女の手を握り、彼女は僕の手を握り返した。


「私も……あなたが好きです。」


 そう言って、彼女は僕にキスをした。

 僕たちはその場を離れ、キャンパス内でデートをした。

 そこで普段しないような話もたくさんした。


 それから、僕らは毎朝、枯れた桜の木のそばで会うようになった。

 枯れた桜は僕らの出会いの場所でもあった。


 ある日、枯れた桜の木はふとしたきっかけで誰かに倒されてしまった。

 僕らは寂しく、悲しく、その場を訪れた。


「これからも、この場所で待ち合わせしよう。」


 僕は彼女にそう告げた。


「うん、そうしよう。」


 彼女は僕にそう答えた。


 それから、僕たちは枯れた桜の木の跡地で毎日待ち合わせをして、愛を確かめ合った。


 枯れた桜の木が倒れた後も、僕たちは傍にいた。


 たとえ、何かが変わろうと、僕たちは変わらずに愛し合っていく。


 あの日以来、僕たちは枯れた桜の木の場所を「出会いの場所」と呼んでいる。


そこには、幸せと愛がたくさん詰まっている。

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