第三十七篇 テーマ「刃物を持った少年」 ジャンル「現代ファンタジー」

 夜の街を歩くと、たまに刃物を持った少年が目に入ることがある。

 赤い目で周囲をキョロキョロと見回し、どこか狼のようだ。


 そんな少年が、今夜も俺の前に現れた。

 肌の露出が多い黒いジャージを着て、細い刃物を握っていた。


「何しに来たんだ?」


「お前と戦いたかったんだ」


 俺は少年の言葉に笑いをこらえる。

 何も言わず、後ろに下がる。


 少年は俺の動きを見極めるように、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 俺は目を細めて、足元を見つめる。

 少年も備え、俺と同じように構えている。


 電光石火のような瞬間、俺たちは刃物を振り下ろした。

 痛みはなかったが、音は響いた。

 ようやく気づいたのだろうか、路地裏を歩く客たちは、俺たちを見るために足を止めた。


 俺たちは誰よりも早く、離れた場所へと走り去った。

 よく知らないが、少年は俺のことを何故か好きになったようだ。


 俺と少年のように、憎しみと戦いのために刃物を持つ者たちがここにはいる。


 それでも、俺は少年と共に、闇の中で鬼たちと戦っているのだ。

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