𓏲𓎨 日常、時々、憂鬱
──「え、
時計の針が昼の12時を指す頃、わたしの声が社内のエントランスに響き渡る。
「しー!もう花帆ってば、声大きいよ…。」
同期の美月がそう、呆れたように笑う。
「まだ誰にも言ってないんだから、内緒ね。昨日付き合ってからちょうど2年だったんだけど、あっちからプロポーズしてくれたの。綺麗な花束も用意してくれてさ。」
事の顛末を話す美月は可愛くて幸せそうで、素直に祝福したいと思ったのと同時に、言葉に表せない不安の波が押し寄せてきた。
「結婚かぁ……、わたしは何年後かなぁ。」
「何言ってんの、花帆もそろそろ
"成田くん"。営業部で同期の、わたしの彼氏。
告白された時は戸惑ったけど、話しも合うし一緒にいて楽しかったし、断る理由が思い当たらないから彼の告白をOKした。
最初は一途に愛してくれてすごく幸せだったけど、付き合ってから月日を重ねるごとに、関係はかなりマンネリ化していた。
原因は、彼とわたしの生活リズムの違い。
彼は営業部だから、出張があったり帰ってくる時間も早かったり遅かったりで不規則なのに比べて、人事部で社内の仕事が比較的多いわたしは、定時通り会社を出れる事が多い。
唯一一緒に過ごせる土日も、遠出してデートをするという事も無くなっていた。
美月は付き合って2年も経っているのに
「……今はお互い仕事が忙しいからね。とにかくおめでとう、結婚式とかいろいろ決まったらまた教えて!あ、そろそろミーティングがあるから、わたし先に戻るね!」
わたしは半ば無理矢理話しを戻して、逃げるようにその場を後にした。
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