41日目「種の多様性の指標とその最大化」
生物学において、種の多様性を表す一つの指標として、次の関数を定義する。
種多様性関数ψ
C(k)という種類の生物がx(k)匹存在するとする。生物の種類をnとした時、ψ(x(1)......x(n))=1-Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2と定義する。ただし、X=Σ(k=1→n) x(k)
である。
ここで、生物の種多様性を表す指標として、ψが満たしていて欲しい性質を書き並べる。
1、x(k)が全て等しくなると、ψは最大になる。(種の均整による種多様性の最大化)
2、ψは値域は[0,1- 1/n]である。(指標の比較可能性)
3、ψは単位の取り方によって変化しない、すなわち、スケール不変性を持っている。(スケール不変性)
4、ψが0になる時は一種類の生物が存在し、それ以外の生物が存在していない時である。(種の独占)
先ほど定義したψがこれら4つを満たすかどうか見てみよう。
[証明]
非負性の証明は簡単である。ψ=X/X-Σ(x(k)/X)^2=Σx(k)/X -Σ(x(k)/X)^2であり、x(k)/Xは1以下であるから二乗はそれ自体よりも小さい。
1- 1/nが最大値であり、等号成立が全ての変数が等しい時であるという結果は、コーシーシュワルツの定理を要する。ψ=1-Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2であり、結局Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2のとる最小の値を導けば良い。
Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2をコーシーシュワルツで抑えると、(二乗の和)・(二乗の和)≧(積の和)^2というようになるので、二乗の和を作り出すと、
Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2={Σ(k=1→n) {1/X√n}^2}・Σ(k=1→n) x(k)^2
≧{Σ(k=1→n) x(k)/X√n}^2=X^2/nX^2=1/nと抑えられることがわかった。
すなわち、0≦ψ≦1- 1/n
また、この時の等号成立条件はコーシーシュワルツの不等式より、全ての変数が等しい時。
3を証明する。全ての変数をf倍しても、x(k)/X=f・x(k)/X・f=x(k)/Xより示せた。
4を証明する。ψ=0のとき、1=Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2が成り立っている。あるx(k)=Xとならないのであれば、1=Σ(k=1→n) x(k)/X>Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2が成り立ち、1=Σ(k=1→n) (x(k)/X)^2が成り立たない。よって、あるx(k)=X。
逆にあるx(k)でx(k)=Xが成り立てば、ψ=1が成り立つことは簡単な計算で示せる。
種多様性の値域が[0,1 -1/n]である妥当性は、単純に生物種が多いほど種の多様性の最大点はどんどん大きくなるからである。
計算
生物A、生物B、生物Cがそれぞれ120,140,60[匹]存在するとする。この時の種多様性ψを求める。まずX=320であり、(x(k)/X)^2の計算をすると、
ψ=1-(120/320)^2 -(140/320)^2 -(60/320)^2
=1-(3/8)^2 -(7/16)^2 -(3/16)^2
=1- 6^2+7^2+3^2/16^2=1- 94/256=162/256=81/128=0.63......
生物Aが5000、生物Bが1000、生物Cが1000種、生物Dが500種いる場合を計算してみる。
スケール不変性より、A,B,C,Dがそれぞれ5,1,1,0.5いるとしても良い。
X=7.5
ψ=1-(5/7.5)^2 -2・(1/7.5)^2 -(0.5/7.5)^2=1- 5^2+2+0.25/7.5^2=1- 10^2+8+1/15^2=1-109/225=116/225=0.51......となる。
つまり、前述の環境の方が種としての多様性に富んでいるということをこの結果は示唆している。
次に、全ての種が同数存在するとした場合、ψ=1-1/nとなることを見てみよう。
Aが400匹、Bが400匹、Cが400匹存在しているとする。
この時、ψ=1-3・(1/3)^2=2/3。結局、1 -1/3になっている。
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