26日目「Hey,Siri.方程式の解を求める方法は?」

方程式の解を予測する方法をいくつか書く。ここでは、Zを整数全体、Qを有理数全体を表す集合として定義しておく。

また、b|aでbがaを割り切ることを表す。(a,b)はaとbの最大公約数を表す。


・因数分解

ab=0→a=0∨b=0となるような代数体で利用することができる。おなじみの方法なので、例などは省く。


・因数定理

高次の方程式を解くときに必須の定理で、一つ解を見つけることで次数を下げることができるのが最大の強み。


Statement

P(x)=0がaという解を持つとき、あるQ(x)が存在して、P(x)=(x-a)Q(x)とできる。

証明

ここでは、多項式の除法の原理を認める。より一般的な定理を証明する。

除法の原理より、P(x)=(x-a)Q(x)+Rとあまりが計算できることがわかる。deg(R)<deg((x-a))=1より、deg(R)=0がわかる。P(a)=Rより、P(x)=(x-a)Q(x)+P(a)とかけることがわかる。この定理から因数定理は簡単に導ける。P(a)=0とすると、P(x)=(x-a)Q(x)と変形できるからである。


例題

x^3-8x^2+11x-20=0となるようなxを求めよ。


答え

x=-1を代入してみると、左辺は0となるので、解の一つは-1。このとき、因数定理を用いて分解してやると、(x+1)(x^2-9x+20)となって、第二因数は簡単に因数分解できる。

・有理解定理

解を求めるというより、解を絞り込む定理。有理数が方程式の解となるときの有理数の分母分子の条件を述べた定理で、高校数学の大体の方程式は解が有理数になるので、知っておくとかなり得をする定理。


Statement

s∈Q(sは既約分数とする)がΣ(k=0→n)a_k x^k=0(a_n≠0、a_k∈Z)の解になるとき、sの分母はa_nを割り切り、分子はa_0を割り切る。


証明

簡単のため、二次方程式の場合にのみ証明する(一般の場合も同様にできる)ax^2+bx+c=0となる有理数xの条件を割り出す。x=p/qとおく。このとき、p/qは既約分数と仮定する。このとき、p∈Z、q∈Z\{0}である。仮定より、a(p/q)^2+b(p/q)+c=0、両辺q^2をかけて、ap^2+bpq+cq^2=0、これを式Aと呼称する。

ここで、ap^2=(-bp-cq)qであるので、ap^2はqで割り切れる。q|pを仮定すると(p,q)=qが簡単にわかる。q=1でなければ、既約分数の仮定に反する。つまり、q|p→q|a。

q|pでない場合、q|p^2も当然成り立たないので、q|ap^2よりq|a。つまりq|pでない→q|a。つまり、解となる有理数の分母は最大次数の係数を割りきる。

式Aに立ち帰って、今度はcq^2=p(-ap-bq)と変形してみる。p|cq^2がわかるので、先ほどと同じような議論を進めていくと、p|cがわかる。つまり、解となる有理数の分子は定数項を割り切る。


例題

x^3-6x^2+11x-6=0となるようなxを求めよ。


答え

先ほどの定理より、有理数解は±1,±2,±3,±6に限られる。方程式を見ると解がマイナスではないことが予想できる。ひとつづつ候補を代入していくと、x=1が解であることがわかる。因数定理より、(x-1)で左辺は割り切れて、計算していくと左辺は(x-1)(x^2-5x+6)となる。x^2-5x+6=(x-2)(x-3)より、この方程式の解は、x=1,2,3。



・解の公式(2、3、4次の時のみ)

解の公式を使ってゴリ押していくのもいいだろう。ただし、2次以外では殆ど使えない。


ax^2+bx+c=0(a≠0)の解は、x={-b±√(b^2-4ac)}/(2a)。ただし、a,b,c∈R。

証明

a(x+b/(2a))^2+c-b^2/(4a)と左辺は変形することができる(a≠0より)ので、移項して平方根をとる。まず、D=b^2-4ac≧0の場合、普通に平方根をとればよい。D<0の場合、-D>0を利用して平方根をとる。a≧0のとき、√(-a)=±√(-1)√(a)を利用して平方根をとると、x={-b±√(b^2-4ac)}/(2a)となる。


3次、4次の場合にも解の公式があるが、長くなるので省略する。


・中間値の定理

fは[a,b]で連続とする。f(a)<f(b)、a<bのとき、kがf(a)とf(b)の間にあれば、あるa<c<bが存在して、f(c)=kとできる。

証明

解析学の話でする。今は難しいのでパスするが、直感的には当たり前の定理と思える。


例題

f(x)=e^x-1/xとする。f(x)=0となるような実数xが存在することを示せ。


答え

f(1)=e-1>0、f(1/5)=e^(1/5)-5。e(1/5)<2より、f(1/5)<-3。つまり、あるcが1/5から1の間に存在して、f(c)=0とできる。


今回紹介した方法は、あくまでも厳密に(存在性を示すためのものもあったが)解を求めるためのものである。しかし、実際には、解を近似する方法の方がよく使われている。今回ではそれらの方法の紹介は割愛したが機会があれば紹介したい。






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