24日目「微分積分学の基本定理の素晴らしさについて語る回」

微分積分学の基本定理といったら、次のような関係式が思いつくのではないだろうか。


fが可積分で、原始関数Fを持てば、∫(a→b)f(x)dx=F(b)-F(a)


この定理はとても有用なものだ。本来積分は面倒な極限操作が含まれているが、この定理により、簡単に積分を解くことができるからだ。ここで可積分であるというのは、リーマン和が収束することを意味する。積分というのは、リーマン和の極限として定義される。ここで、リーマン和について知っておこう。


リーマン和の定義

有界なf:[a,b]→Rという関数について、a=x_0<x_1<......<x_n=bと区間を分割する。Δ_k=x_(k+1)-x_kと定義して、a_k∈[x_k,x_(k+1)]をテキトーに選ぶ。このとき、Σ(k=0→n-1)f(a_k)Δ_kのことを[x_k,x_(k+1)],a_kのリーマン和という。

ここで、最大の区間幅、つまりΔ=max{Δ_k}を0に近づけていくように、分割を変化させていく。このとき、x_k,a_kに関わらず、lim(Δ→0+)Σ(k=0→n-1)f(a_k)Δ_kの極限が一定であれば、このfは[a,b]で可積分であると言って、この極限は∫(a→b)f(x)dxとかく。


可積分というのは一見多くの関数には成り立ちそうにないが、実は我々が多く扱うような関数では成り立つことが証明されている。証明は一様連続などの概念を使うので、解析学系の話に持ち込む。


定理

[a,b]で連続な関数は、[a,b]で可積分


定理

[a,b]で単調な関数は[a,b]で可積分


そして、リーマン積分について知ったところで、定義通りに∫(0→1)x^2dxの計算をしてみる。


∫(0→1)x^2dx=1/3

定義に従った証明

x^2は連続なので、定理より可積分であるといえる。つまり、リーマン和の極限が分割の仕方などに影響されないことを言っている。

lim(Δ→0)Σ(k=0→n-1)f(a_k)Δ_k に対して、x_k=k/nとおいて、整理してみる。

lim(Δ→0)Σ(k=0→n-1)a_k^2 1/n、Δ=1/n、a_k=k/nとできるので、これを式に代入していく。

lim(Δ→0)Σ(k=0→n-1)(a_k)^2 1/n

=lim(Δ→0)Σ(k=0→n-1)k^2/n^2 1/n

=lim(n→∞)1/n^3Σ(k=0→n-1)k^2

=lim(n→∞)1/n^3 1/6 n(n-1)(2n-1)

=1/6 lim(n→∞)(n-1)(2n-1)/n^2

=1/6 lim(n→∞)(1-1/n)(2-1/n)

=1/6*2

=1/3

よって示せた。


なかなかに面倒な計算だった。しかし実際はこんなことをしなくても、積分は求めることができる。そう、原始関数があればね。


微分積分学の基本定理を用いた証明

x^2は連続なので可積分である。F(x)=1/3 x^3をx^2の原始関数としてとる。すると、微分積分学の基本定理より、

∫(0→1)x^2dx=1/3-0=1/3。


定義通りの計算よりもこちらの方が何倍も早いことがわかる。すなわち、微分積分学の基本定理というのは、積分という計算が面倒なものの答えを一瞬で導けてしまう素晴らしい定理だということだ。我々はこれを当たり前だと思っている。これは、悪いことではないが、もう一度積分を定義通りに計算する難しさというのを感じて見てはどうだろうか。










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