14日目「原始ピタゴラス数の書かれ方の証明と応用」
先日、ディオファントス方程式を紹介したので、そのなかの一部を解説したいと思う。
今回紹介する主定理はこちら。
x^2+y^2=z^2 を満たし、かつx、y、zが互いに素であるような整数の三つ組みは、あるmとnを用いて、x=m^2-n^2、y=2mn、z=m^2+n^2と書かれる。
証明
x、y、zの偶奇を調べる。まず、合同式を使って絞れる組として、(x,y,z)≡(0,0,0)、(x,y,z)≡(1,1,0)、(x,y,z)≡(1,0,1)、(x,y,z)≡(0,1,1)がある。条件から、(x,y,z)≡(0,0,0)の組は省かれる。3つの候補から求めればよいわけだが、実はさらに絞ることができる。(x,y,z)≡(1,1,0)の場合、4で割ったあまりを逐一考えていくと、x^2+y^2は4で割って2余ることがわかる。しかし、左辺は平方数1つなので、4で割って2余ることはけしてない。つまり、(x,y,z)≡(1,0,1)、(0,1,1)しかあり得ない。ここでどちらも結局は同じ状況を表している。x^2が偶数のとき、これをy^2と置き直せば(0,1,1)の場合も求めることができているので、(1,0,1)の場合のみを求めればいいことがわかる。移項して、y^2=z^2-x^2。因数分解して、y^2=(z-x)(z+x)。左辺はyが2の倍数であるので4の倍数であり、(y/2)^2=((z-x)/2)((z+x)/2)となる。このとき、(z-x)/2と(z+x)/2が互いに素であることを示す。
証明
(z+x)/2=α、(z-x)/2=βとする。α、βに共通の約数d≧2があるとして、矛盾を示す。α+β=z、α-β=xなので、xとzはdで割り切れる。y^2=z^2-x^2よりyもdで割り切れる。これは仮定に矛盾する。よって、αとβは互いに素。
(y/2)^2=((z-x)/2)((z+x)/2)の左辺は平方数であるため、算術の基本定理より、α、βは平方数。α=m^2、β=n^2とおくと、z=m^2+n^2、x=m^2-n^2となる。補完するようなyを求めると、y=2mnとなる。
一応十分条件の方も確かめておくと、これは成り立っているので、定理が示せた。
応用としては、フェルマーの最終定理のn=4の場合がある。念のため、フェルマーの最終定理について見ておこう。n=4のときのフェルマーの最終定理は、
x^4+y^4=z^4をみたすような正整数x、y、zの組は存在しない
というものだ。このときに役に立つのは先ほどの定理と無限降下法である。
無限降下法
ある性質を満たす自然数の部分集合Aに対して、次が成り立てば、Aは空である。
・Aが空でないとすると、Aの元aよりも小さなある元bが存在してb∈A
証明
Aが空でないと仮定して証明する。Aは整列集合であるので、最小元mが存在する。しかしながら、それよりも小さい元がAには入っているので、mが最小元であることに矛盾する。よってAは空。
早速、証明をしていこう。x^4+y^4=z^2の非0正数解の非存在性を示せばよい。ここでこの方程式を満たすx、y、zをz最小のものをとってきたとする。zの全体を無限降下法中のAとする。そのなかでの最小値zをとってくる。
このとき、(x^2,y^2,z)=1であることが簡単に示せる。よって、ピタゴラスの方程式の定理を使うと、x^2=a^2-b^2、y^2=2ab、z=a^2+b^2とできる。
x^2+b^2=a^2の時も、(x,b,a)=1が簡単に示せるので、もう一度定理を用いて、
x=m^2-n^2、b=2mn、a=m^2+n^2
y^2=2abにb=2mnを代入して、y^2=4amn、ここで、a、m、nのどの二つも互いに素であることがいえて、算術の基本定理より、a=p^2、m=q^2、n=r^2と書ける。p^2=q^4+r^4が導ける。ここで、pとzの大小関係について調べると、z>a≧pが示せて、無限降下法の定理より矛盾がいえて、解は存在しないことがわかる。
ピタゴラス方程式の解の明示公式は他にも証明方法があるが、少々専門的な知識が必要になるので、今回では言及するだけにとどめておく。
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