最強の冒険者編①

「おはようございます。アレス」


 朝、目が覚めると目の前にメイド服を着た美女がいた。


「おはよう。ローナ。」

「朝食の準備はできています。」

「ありがとう。」


 メイド服を着た美女の名はローナだ。明るい茶髪をショートカットにした彼女はこうして毎日、僕のお世話してくれる。僕としてはメイドを雇った覚えはないのだが、ローナのような美女にお世話してもらえたら正直うれしい。

 ローナに朝の挨拶をしてベッドから起き上がる。


「今日のご予定は?」

「今日は、クランハウスに顔を出すよ。」

「なら私もご一緒します。」

「クランハウスに寄った後、冒険者ギルドにも行くよ。」


 ローナが作ってくれたおいしい朝食を食べ終え、ローナに手伝ってもらいながら外に向かう準備をする。昔は、手伝いは要らないと言っていたのだが、それでもローナは手伝おうとするのでいつしか諦めて言わなくなった。


「じゃあ、行こうか。」

「はい。」


 準備を終え、外に出ると続いてメイド服のローナも出てくる。朝に僕を起こしたときとは別のメイド服を着ているローナを見て、いつ着替えたんだと不思議に思いながらも今更なので気にしないでおこう。ローナと出会ったのは5年前で、魔物に殺されそうなとこを助けてから僕の世話をしてくれるようになったのだ。前に「なんでメイド服なの?」と聞いたら「メイドですので」と帰ってきたのでそれ以上聞くのをやめた。


 朝の活気がある町をローナと歩いていると。この町でも一番大きい商業地区についた。この地区はこの町の領主により商業用の地区に認定されており、あらゆる店がこれでもか並んでいる。クランハウスはこの地区を抜けた先にあるため、なにか良いものが売っていないかと歩いていると。店先に立っていたおっちゃんに話しかけられた。


「おう、アレスじゃねーか。」

「おはよう、おっちゃん。」

「ローナの姉ちゃんもおはよう。」

「おはようございます。」

「最近はどうよアレス。」

「特に変わりはないよ。それよりもおっちゃんは?」

「おかげさまで繁盛しているよ。」

「そりゃよかった。」


 この商業地区はあらゆるものを売っている。食材から魔法を覚えるための魔導書まで、この商業地区で手に入らないものはないとさえ思える。ちなみにこのおっちゃんは八百屋だ。


「最近は領主様もよく視察に来てくださっているようで。」

「へぇそうなんだ。」

「この町の領主様は優秀らしいですね。」

「領主様とお前らのおかげでこの町はどんどん活気がついていくぜ。」


 とおっちゃんが言う。実は僕たちはちょっとした有名人なのだ。この町はライレッド王国の東にある商業都市グラシアという町で、王国の中でも特に栄えている町である。ライレッド王国は、この大陸で大国と数えられる3つの国の1つで西の王国と呼ばれる。その大きな国の大きな町で有名なんだから僕って意外とすごくねと思いながら、しばらくおっちゃんと話していた。


「そーいやこの前お前らのところ新しい奴が入ったらしいじゃねーか。」

「そうなんだよ、よく知ってんな。」

「結構、期待の新人らしいじゃねーか。」

「らしいな。」

「なんだお前まだ会ったことないのか?」

「ここのところ忙しかったからな。クランハウスに行くのは、5日ぶりだな。おっちゃんこそよく知ってんな。」

「お前んとこの冒険者がこの前自慢げに言っていたからな。」

「そうか、そろそろ行くぜおっちゃん。」

「おう、これ持ってきな。」

 

 そう言っておっちゃんはリンゴをローナに渡した。


「ありがとうございます。」

「サンキュー。じゃーなおっちゃん。」


 そう言っておっちゃんと別れ町を歩きだした。

 

 商業地区を抜けると通常の街並みに戻り、その先にひと際目立って大きい建物が見えてきた。その建物こそ僕が目指していたクランハウスであり、この町でも有名な建物だ。この町の腕利きの建築家が建てただけあって、派手な見た目ではないが芸術的な装飾が施されている。このクランハウス目立つなと思いながら、クランハウスの目の前まで来ると、突然中から怒声が聞こえてきた。


「ふざけんな!ぶっ飛ばすぞオラァ」


 という声が聞こえたあと、クランハウスの入り口が爆発し、中から男が飛び出してきた。


「またですか。」


 とローナが呆れたように呟いた。


「痛てぇな、くそが」


 と言って飛び出してきた男は何事もなかったかのように立ち上がり、クランハウスの中に入ろうとした。その男は筋肉を盛りに盛ったような肉体をしており、スキンヘッドのいかにもといったような見た目をしていた。そんな男に僕は話しかけた。


「おはようゲルド」

「あぁ?なんだ。」


 そう言って男、もといゲルドはこっちにいかつい顔を向けた。


「なんだアレスじゃねーか。」

「何をしているんだ。」

「そうだ、サラのやつが」


 すると、爆発で跡形もなくなった入り口から1人の女性が出てきて言った。


「おい、筋肉ハゲ。もう終わりか。」


 そして、その女性はこっちを見て。


「アレス!」


 と満面の笑みで抱き着いてきた。この女性の名はサラ。長い赤い髪を後ろでまとめており、自分の身長くらいの大きさの剣を担いでいる。サラが僕に抱き着いていると。


「サラ、離れなさい」


 とローナが不機嫌そうな顔をしながら言った。その言葉にサラも不機嫌そうにし始めたのでケンカになるより前にサラから離れ、クランハウスの中に入った。そうすると2人もお互いをにらみながらあとに続いて入ってきた。


「そういや、なんで入り口が爆発したの?」


 と2人のケンカを回避した僕は、すっかり蚊帳の外になってしまったゲルドに尋ねると。


「そうだ、この脳筋女が俺に向かって魔法を撃ちやがったんだ。」

「違うんだアレン、先にこの筋肉ハゲが私に掴みかかってきたんだ。」


 ローナとサラのケンカを回避したと思ったら次はゲルドとケンカをし始めたので、呆れながらクランハウスの奥の酒場に移動した。この酒場はこのクランの人たちが集まり、騒いだり、情報交換をしたりする場所だ。朝の時間だからかこれから仕事をし始める人たちが結構いた。すぐ横でケンカしている奴らがいるのにこんなにも落ち着いているのは、これがいつものことだからだ。


「今回は何でケンカしているの?」


 と近くで仕事の準備をしていた冒険者に話しかけると。


「ゲルドが朝食で食べようとしていたプリンをサラが横取りしたからっすね。」


 それだけで魔法を撃つようなケンカをするかと呆れた。このクランには喧嘩っ早いのが多すぎる。サラとゲルドだけではないのだ、ローナもそうだが他にも問題の奴らがこのクランには数多くいる。


「なんでこのクランにはこんなバカが集まってくるかな。」

「そりゃ、マスターが彼らみたいのを受け入れるからでしょうね。」

「まったく、誰だそのバカは。」

「あんたでしょ、アレスさん。」


 そう、この問題があるクランのマスターは僕なのだ。その事実にぼくはため息を吐いた。転生して10年、気付いたら僕はバカが集まるクランのクランマスターになっていた。


 



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プロローグと1話を公開してみました。

初投稿なので感想などもらえるとうれしいです。

2話以降の公開はもう少し書き溜めてからしてみようかと思いますがすぐ出せるようにします。

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