第17話 混浴と勉強会
声を聞き、俺は固まった。
シグナと目が合いぱちくりとする。
引きつけられる程に透明感のあるエメラルドグリーンの瞳をしているせいか彼女の目から離せない。
「どうした? 入らないのか? 」
「え? あ、え? 」
その言葉で現実に戻され気まずくなり目線を下にする。
シグナはいつも (といっても今日しか彼女の事を知らないが)露出度の高い装備を着ているせいか、今の彼女の姿に不自然さはない。
俺ほどではないが高い身長にぷるんとした大きな胸。健康疎な肌は隠していた部分とそうでない部分を区切りつけている。
違いはビキニアーマーを着ているかどうかである。
なにも違和感ない。
「そんなに見つめると――「わ、悪い」――興奮するじゃないかぁ」
再度顔を上げると彼女が顔を赤くして体をくねくねさせていた。
……やはりシグナは変態だ。
「シ、シグナ?! え、あ、いえ……、それよりもアダマ。なんで貴方が今ここに?! 」
「何故って風呂があると聞いたから……」
シグナから目線を外しゆっくりと声の方を見る。
するとそこには水滴がついたオレンジ色の短い髪が目に入った。エリアエルの青い瞳とばったり合って少し釘付けになってしまった。
が顔を赤くする彼女に気付き目を逸らそうとする。
顔を逸らす時に小さな
彼女は今日黒いドレスのような服を着ていた。いつも極端に露出度の低い服を着ているのか彼女の肌は白かった。
「み、見ましたね! わたしの裸を見ましたね! 」
「そんなことは……ない」
「何ですかその間は! 」
怒鳴る高い声が聞こえてくる。
まずい……風呂の
「悪い。俺はここで
背中を向けて扉に向かう。
しかし手を握られて止められた。
「まぁ待てアダマ。アダマは同じカエサル隊の仲間となった」
「そ、そうだな」
「だから風呂を共にして親交を更に深めるというのはどうだ? 」
その言葉にドキリとする。
非常に魅力的な言葉だ。
心揺らし足を止めているとエリアエルの声が響いた。
「ダメに決まっているでしょう! 男性とお風呂に入るのは! 」
「決まってなどいない。確かに女湯と男湯の時間が決められているが、混浴の時間もあるじゃないか。今日は
シグナの言葉に俺は驚いた。
時間で入る性別が決まっていたのか!
エリアエルが怒るはずだ。
一人納得しているとエリアエルがシグナに反論した。
「勝手に混浴の時間にしたら寮母さんに怒られてしまいます!!! そ、それに裸を見られるのですよ? シグナは恥ずかしくないのですか? 」
「私は見られて困る体はしていない! 」
言った。
シグナが堂々と言った。
だがシグナの言葉にエリアエルは声のトーンを低くした。
「シグナは良いかもしれませんが……。ってやっぱりダメです! アダマ。出て行ってください! 」
「あぁエリアエルが言うのならば、そうしよ――「アダマでなくても良いぞ? おこちゃまを先に出して私と一緒に入ろう。そうだな。それが良い」……」
「な。誰がおこちゃまですか! わたしはこれでも二十です! 」
「え? 」
振り向き驚く。
嘘だろ?
どう見ても十二くらいにしか見えないんだが。
良くて十五だ。
「……何かとても失礼なことを考えていませんでしたか? 」
「
すぐに謝り頭を下げるとエリアエルが大きく溜息をついて言った。
「分かりました。良いでしょう。一緒に入りましょう。わたしが歳
エリアエルの言葉にホッとする。
顔を上げ彼女を見るとエリアエルが腰に手をやりそう言っていた。
だが——。
「見るな! 」
★
体を洗い湯に浸かる。
エリアエル先生
知らなかった。
聞かなければそのまま入っていたな。
「……アダマが安全な人物であることはよくわかったのですが」
「これだけの美女を
カカと笑いながら俺の肩に手をやるシグナ。
「露出狂のシグナと同意見なのは不本意ですが、女として複雑な気分なのは確かです」
ブクブクと音を鳴らしながら隣でエリアエルが沈んでいた。
俺の我慢を
俺とて男。
美女二人に両
しかし、なんだ? 我慢しようと思うと我慢できる気がしてくるから不思議だ。
これはまさか
などとくだらないこと考えながら肩まで浸かる。
温かい。
こんなに体が、
「毎日入れるのか……」
「毎日混浴したいのか? 」
「ふ、
「違う違う。風呂にだ。風呂」
俺が慌てて
「冗談だ冗談。半分くらいは」
「後半分については聞かないでおこう」
「聞いた方が得かもだぜ? 」
「俺からすれば精神に悪い」
「そんなにわたしの幼児体型は精神に悪いですか……ふっ」
「そんなこと言っていない。エリアエルも十分に魅力的だ」
「やっぱり
「『も』か。はは。嬉しい事を言ってくれるね」
エリアエルがガバっとお湯から出て指を向けながら変態の仲間入りにしようとする。
うっかり出た言葉をシグナがわざわざ拾い笑った。
★
「楽しんできたかい? 」
「何で俺の部屋にいるんですか。カエサル隊長」
部屋に戻ると軍服が似合う隊長殿が椅子に座って俺の方を向いていた。
溜息をつきながら隊長の隣を通りすがる。
俺がベットに座ると隊長が言った。
「
「……初耳ですが? 」
「なら今伝えた」
後で教えられても、と思いながらも隊長に何しに来たのか聞いてみる。
「いやなにダンジョン攻略に
「俺報告書を書くの苦手なのですが……」
「む、そうか」
ポリポリと
苦手と言ったところで報告義務が消える訳でもない。
俺のちょっとしたぼやきのようなものだったのだが、言葉を受け取った隊長は違うようだ。
「ならば私と一緒に書こうじゃないか」
「良いんですか? 」
「なに部下に仕事を教えるのも隊長の
おおお……。隊長がまともに見える!
「じゃぁ勉強会と行こうか」
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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