追放者サイド 3 立場がなくなる『聖杯を受け継ぐ者』
「くそっ! 何で帰還石を使った!!! 」
「僕だって
「リーダーは俺だ! 勝手な行動をするんじゃねぇ!!! 」
「ならあのまま全滅した方が良かったの! 」
メアリがボロボロのカイトに詰め寄り怒りをあらわにする。
帰還石を使った後、彼らは魔物を引き連れてダンジョンの外に出た。
もちろんその場はパニックである。
しかしそこに居合わせた冒険者達がそれぞれ撃退。一時
『聖杯を受け継ぐ者』以外に。
「何が賠償金だ! 帰還石を使ったからこうなるのは当たり前だろうが!!! 」
言葉で勝てないメアリから離れ、思い出して宿の壁を殴った。
ダンジョン内部からダンジョン外部へと移動するための魔道具『帰還石』。
かなり高価な
それを使用しただけでもかなりの出費になるのだが、ダンジョンの魔物を町に放ち冒険者ギルドの信用を
では何故帰還石のような魔道具があるのかと言うとそれは単純に帰還用である。
通常ダンジョンを攻略中はある地点まで行き転移魔法陣を見つけないと戻れない。
食事などを持って
この魔道具はパーティー全員をダンジョン外へ送り出すという性質上、どうしても広範囲に転移魔法は発動する。
使用時はきちんと周りに魔物がいない事を確認して使うのだが、今回のように緊急脱出で使う人もいる訳で。
そう言った場合に備えて冒険者ギルドは罰則規定を
「あの男本当に無責任。一体誰のせいでこうなったと思ってるのよ!!! 」
オーク・ソルジャーと戦っていた回避盾の男はすぐさまこのパーティーを
契約期間中だったが違約金と賠償金の一部を置いて逃げて行った。
「そんなことよりさ。どうするの? 」
「……何が」
「いやこれからだよ。ダンジョンに潜るにしても今回みたい失敗にしてたらすぐに借金
「俺は失敗なんてしてねぇ!!! 」
机を叩き、
少し息を乱しながらカイトはギロリとメアリを
「調子が悪かっただけだ」
「にしては攻撃を喰らっては痛がっていたけど? 」
「……古傷にでも当たったんだろう」
苦しい言い訳をするカイトに大きく溜息をつくメアリ。
「いつもならあの程度痛みを感じないはず」
「……あの男のせいだわ」
カイトの言葉にキルケーが言う。
メアリが
「『硬化』スキルで私達の痛みを
「そうだ。そうだな、キルケー」
彼女の言葉に納得したような表情を浮かべるカイト。
メアリは馬鹿二人を見ながら考えた。
(本当に『硬化』スキルだけで痛みを和らげることができると思ってるの? 馬鹿じゃないの。『範囲防御』のおかげでしょう。でもそれだけじゃダメージの肩代わりは説明付かないな。アダマに何か秘密があったのかな……)
未だに盾役のせいと決めつける二人を見ながらメアリは上を向く。
(これは
嘆息し視線を戻す。
するとそこにはやる気に満ちた表情をしたカイトがメアリの目に映った。
「ならばやることは早い。新しい盾役を見つけるまでだ! 」
カイトはそう意気込みその日は終わった。
★
翌日の朝。
冒険者ギルドでカイトとキルケーは針の
しかし、仕方ない。
何せ昨日ダンジョン二十階層から魔物を外に引き連れたのだから。
加えて昨日メンバーから抜け出した男が三人についてあれこれぼやいたのも原因の一つである。
昨日雇った彼はCランク冒険者。その彼からみても、あまりにも
回避盾と行動を共にする場合は連携が重要になってくるのだがそれすら行わないリーダー。
最近Aランクが近いということで調子に乗っていたこともあり、更に彼らは
そんな中、我慢しながらも二人はメアリを待つ。
「おせぇな」
「全くこれだからあの女は」
「同じ仲間なんだ。キルケーがメアリを
「……カイトが言うのなら」
それを苦笑しながら見るカイト。
カイトからすれば自分を
だがキルケーからすれば殺したいほどに
その役割から素早さを必要とするメアリの装備は刺激的だ。
セパレートの露出度の高い服装に健康的な小麦色の肌。
カイトを狙っているキルケ―からすれば、メアリはカイトを狙っているようにしか見えない訳で。
重い空気が
「『聖杯を受け継ぐ者』の皆さんですね? 」
「ああそうだが」
カイトが顔を上げるとそこには受付嬢がいた。
しかしいつものような笑顔ではない。
先日の事もあってか冷たい雰囲気を感じる表情だ。
「メアリさんからこちらを預かっております」
「なんだこれは? 手紙? 」
「私には分かりかねます。では役目も終えたので私はこれで」
そう言い受付嬢はササッとその場から去っていった。
受け取った封筒をカイトが開ける。
彼はそれを見てブルブルと震えだした。
「メ、メアリのやつ。逃げやがった!!! 」
★
「さて今日から僕は自由の身だ。どうしようか」
冒険者ギルドから遠く離れた場所でメアリは一人呟いた。
彼女は今一人で誰もいない。
「頭の悪い貴族子息に色仕掛けしか
独り
彼女は少し歩くとふと止まる。
そして何かに気が付いたかのように顔を上げた。
少し道から
するとそこにはいつの間にか一人の男性がいた。
「珍しいね」
「
そう言い男は口を開く。
その内容にメアリは目を輝かせ、少し笑いながら応じるのであった。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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