アメリカ人は叱り上手!? 日本とアメリカにおける文化の違い

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

アメリカ人は叱り上手!? 日本とアメリカにおける文化の違い

アメリカ人は陽気で気さく!

日本人は謙虚で真面目で勤勉だ。


両国の人間性を頭に浮かべると、こういったステレオタイプが浮かぶ人も多いのではないでしょうか?

もっと偏見を含ませれば、日本人は物静かで忍耐強く冷静で、アメリカ人は騒がしく短気で感情的。


日本は島国で隣接している国もなく、人気観光地とはいえアメリカほど人種に富んでいる訳ではありませんから、およそ日本人以外の人種のことをよく知りません。

上記のステレオタイプは強ち間違いではない部分もありますが、しかし当然すべてが正しい訳ではありません。

その中のとある一面を、筆者の聞いた話から一つ紹介します。


知り合いに元SE(システムエンジニア)の女性がいるのですが、日本の職場で働いていた際に、上司からお叱りを受けたそうです。

SEの上司は現場の人間ではない人が外部から就くケースが多いそうで(管理よりプログラミングがしたいから)、割と見当はずれな説教を受けがちだった為、知り合いは上司のお叱りを呆れながらに聞いていたそうです。

そんな居心地の悪い空気を切り裂いて、同僚のアメリカ人が二人の間に割り込み、上司に対しこう物申したのです。


「パブリックで叱るべきではありません!」


アメリカの映画やドラマを見ていれば気付いている方も多いと思います。

アメリカでは公衆の面前で恥をかかせる行為を特に嫌います。


これを端的に分かり易く知れるものの一つとして、アメリカのABC局で作成された社会派ドッキリ番組“What would you do?”WWYD?(あなたならどうする?)があります。YouTubeに翻訳付きの切り抜きがあるのですぐに見れると思います。


この番組は、仕掛け人が公の場で差別や暴言を振るいます。もちろん、それらを受ける人間も仕掛け人ですので、本当のイジメではなく演技です。

つまりこれは、そのような偽の修羅場に居合わせた一般人へのドッキリで、それを知らずに悪行を見てしまった一般人は、果たしてどういった行動を起こすのかを観察する番組です。


・障碍者に悪態をつく客

・人種により態度を変える店員

・ホームレスをからかう若者

・太っている体型、または細すぎる体型を批判するジム会員

・実子と養子を差別する母親

・子供におしおきを与える父親


このように様々なパターンがありますが、結果としては、およそ正義感のある一般人が介入し、その場を取り収める流れでほぼほぼ終着します。

それはそれで感動するのですが、しかし私たち日本人が見るべきところとして大事な部分は介入の仕方です。


「ここは公衆だぞ!」

「皆の前で恥をかかせるな!」

「なにもこの場で言うことではないだろう!」


もちろん悪辣な行為そのものも指摘します。ですが同時に、公衆の面前であるという点にも、ただならぬ怒りを見せています。

しかし怒っているとはいえ激しい批判は存外すくなめで、論理的な説得が多い点も注目です。

特に現場に子供が関わる場合には、「あなたにはあなたの教育方針があるのかもしれないが――」などと相手の意志も配慮し、かなり慎重な言動を選んでいるのが見て取れます。

また指摘する際の環境においても、片側が席を外している際に声を掛けてあげるなど、イジメる側とイジメられる側の両方の体面を気にしてます。

正義の怒りに燃えてはいるものの、己自身が相手を公で非難することのないよう弁えているのです。


これは何気にとても大切なことで、我々も見倣うべき所作でしょう。

その場で怒りをぶつけることは、実は己の不快感の発散に大半を割いているに過ぎず、間違いを指摘した本人はそれで満足するかもしれませんが、指摘された側は公で恥をかかされた怒りが増すことで、後々に見えないところでの一層の関係悪化を招きかねません。


これらの振舞いはアメリカの子育てからはじまっており、公で子を叱ることは虐待として見てとられます。

必ず親と子、一対一の状況にしてから話しはじめるのです。

またアジア特有の詰め込み型教育ではなく、考えさせる教育やディベートを盛んに行うことで、交渉を重んじる性質が芽生えます。

訴訟大国と言われるように裁判が多いのも、その性質が一因しているのでしょう。(馬鹿げた裁判例などは例外に極度にスポットライトを浴びせているだけなので、当てにしてはいけません。侍・忍者・芸者や舞子がそこらにいると思われているのと同じレベルの偏向です)


ゆえに頭ごなしに怒りをぶつけるのではなく、相手を納得させようとする指摘の仕方に傾きます。


では話しは戻りますが、先の知人の同僚はアメリカ人で、上記の性質を持つゆえに上司の叱り方を指摘しました。それを受けた日本の上司の返答は――


「うるせぇ!」


だったそうです 笑

これには知り合いも苦笑い、アメリカ人の同僚も思わず肩をすくめてしまったそうです。


これはあくまで知人の話であり、ほんの一ケースに過ぎませんので、両国の性質を的確に代弁したものではありません。

様々な個人体験はあるでしょうが、アメリカは世界三位の広さを持つ大国で、州によって人間性の違いも様々です。

日本人は謙虚で真面目と言われていますが、あなたの周りにそうでない人がいるように、絶対不変の個人の性質はありません。

しかし歴史や文化を通じた大衆としての傾向は確かにあり、それが一般的に言うところの国民性です。


実際に日本人の子供のしつけを見ると、公衆の場であっても𠮟りつけるケースは多々見られます。

日頃のディベートにも慣れていませんから、子供が言い訳をしても聞く耳持たず、駄目だから駄目だと頭ごなしに叱ります。

また、そんな修羅場に介入する第三者も――


「子供が嫌がってるじゃない、やめなさいよ!」

「子の面倒をちゃんと見るのが親の責任だろ!」


などの指摘を公衆の面前であろうが、更にはそこで子供が見聞きしていようが、構わず説教を垂れてしまいます。

確かにその場は収まるかもしれませんが、しかし上でも述べたように――


あんたのせいで恥をかいた等、見えないところで親が子に八つ当たりする。

公衆で罵倒される親を見て、子が親に幻滅する。


などなど後の親子関係は更に悪化するかもしれません。

んなもん親が悪いんだから知ったこっちゃない――これでは、せっかくの正義感も台無しでしょう。

どんなに苛立っていたとしても、相手に配慮して物申さなければ、事態はより深刻化してしまうかもしれないのです。


ここまで、公衆で叱るのはNGということをアメリカだけの特性のように書きましたが、もちろん日本人だって公衆の面前で叱りたくない気持ちはあるでしょう。

しかし日本はアメリカと比べて、個人より社会を重んじる性質があります。


ほら、周りを見なさい。みな迷惑しているでしょう?

社会のルールに従って、独りよがりなことは止めなさい。


このように、対象がどれだけ世間から外れているかを知らしめようとする性質が垣間見えます。見せしめという形で社会秩序を保ちます。

他にも日常的なものであれ――


「金髪なんて、不良に見られるからやめなさいよ」

「みんなやってるよ。黒髪は私だけだもん」


などのように、世間体を気にする人種で、個性を潰してでも周囲に溶け込もうとするのです。逆に逸脱した者は公然と迫害する傾向にあります。


何やら悪意のある言い方をしましたが、しかしこれはこれでメリットも多数存在します。

皆が一定の規範に従うことは治安の良さに繋がりますし、ああなってはいけないんだという戒めになります。

これらは犯罪率という具体的なデータをWHOが発表しており、揺るがしようのない事実です。

道は綺麗で夜に女性が出歩ける。更には被災にあっても律義に列を作って支援を受け取る。

独立している個性はなく、メリットもデメリットも実は表裏一体で、必ず何かしらが根っこの部分で繋がります。


以上が日本とアメリカ、両国の違いのほんの一部です。

アメリカは歴史の短い国ですが、激動の時代や認知の変換を辿っているので調べてみるとまあ面白い。

昨今はYouTubeによる個人投稿のおかげで、映画や書籍や記事のようなフィルターを通さない、各国の人々のリアルな人間性を直接見ることができるようになりました。


アメリカは安全保障を結ぶ、日本と最も関わりの深い国の一つです。

歴史の深い中国やヨーロッパも楽しいですが、ぜひアメリカ史やアメリカ文化も学んでみることをお勧めします。

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