青カルト

六塚

青カルト

潮鳴り は、あなたの悲鳴?

薬剤の染み込んでいない身体 そんなふうに言わないで

裸足に刺さった貝殻 

焼けるような痛みはあっただろうか 赤い血は流れたんだっけ 親指の間が裂けたか人差し指の間が裂けたかした

幼すぎて断片的にしか覚えていない記憶

奥にしまって取り出せない

奇麗な海岸はもう思い出せない

水中は冷たすぎて入りたくなかったから砂浜に立っていた 両手は塩化ビニルの臭い 

汚い波打ち際にはごみ袋の残骸が浮いていた? 流木は流れ着いていた?

綺麗とは言い難い風景 だったはず

水母の大群に包まれる男の子

多分全部死骸だったのに 憧憬は遠く遠く思い出の彼方へ

砂まみれで剥がれかけの絆創膏

海中で目を開けられなかったこと

エゴへ 折り返すものを

目を瞑っているときだけは楽園にいるようで

はじめての夏を見つめては

瞼の裏で

海の向こうを見つめながら

水平線の向こうになにか特別なものがあるはずだと

信じてはいない

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