第3話 わーい金持ちだ!あれぇ?
呼び出されたので受付に向かう。
「一応査定により、一億二千万でお買い取りしますが⋯⋯本当によろしいのですか? 三級カードですよ?」
「はい。お願いします」
念押しされるが、俺は今すぐに金が欲しいのでお願いした。
「それでは、データの方の操作をお願いします」
俺はスマホを操作して、専用の画面を開く。
そこにギルド専用の業務スマホをかざして、モンスターカードのデータを譲渡し、対価に一億八百万が入金される。
通帳とか現金とか、そっちの方が本当は嬉しいが、データのアイテム取引はデータ通貨じゃないとダメなので仕方ない。
権利システムとかも結局はこっちで買うので、問題は無いのだが、少し勿体なく感じる。
全ての通貨をデータ通貨で統一してくれたら良いのに。
「10パーセント引かれるのはきついですね」
「すみません。それがルールですから」
税金関係として提示価格から10パーセント引かれるのだ。
現金に変える時も税金ちゃんが発生して引かれる。
この辺の調整も神がやっている。嬉しいような嬉しくないような。
しかも、神本人は金を生み出し放題なので、遊び放題なのだ。
リアルマネーとデータマネーを統一して欲しいと、きっと誰もが望んでいる事だ。
「あの、二階行っても?」
「あ、はい。フリーと個室どちらを希望しますか?」
「個室で」
「一時間一万円です。データ通貨の方をお使いさせていただきます」
先程貰ったお金から一万円が引かれる。
嬉しい事はステータスを提出する必要が無い事だろう。
神の作ったこのアプリは金さえ払えば偽る事は可能なので仕方ないのかもしれない。
「さて、ここが個室か」
ギルド、遠目では何度か見た事あるけど入るのは初めてだ。
俺が探索者をやる日が来るとは⋯⋯思わなかった。
一時間のうちに装備を充実させようかな。
「⋯⋯個室のデータか。違和感あるな」
個室に入ると、真っ白な広い空間が広がっていた。
俺の体はデブス男ではなく、巨乳美少女(初期装備)である。
入る前で見た空間よりも広い。
「メイン武器は刀⋯⋯サブに武器を用意しておきたい。防具も欲しいし⋯⋯権利システムも買わないと⋯⋯あれぇ? めっちゃ金が吹き飛ぶ」
ついでにガチャについても調べた。
結果、出て来ない。もちろん性転換の方もだ。
出て来たとしても、アバター改造のネカマなどだな。声は変えられないらしい。
見た目は変えられても声は変えられない⋯⋯道具を使えば変えられるらしい。
後は自分か動きやすいアバターにするのが基本らしい。戦闘スタイルに合わせるって表現の方が正しいか。
「俺にとってはこれが一番動きやすいと? ふざけんなよ」
装備の方はアバターに合うサイズに勝手に変わるので、その辺は簡単だ。
武器:ブラックリザードの刀(二千万円)
防具:ブラックウルフ一式(四千万円)
合計で六千万。
金銭感覚がバグる。しかもこれ、電子マネーとかに似ているので金を使っている感覚がないのだ。
それが余計に金銭感覚をバグらさる。
「次に権利システムか」
権利システム、金を払えば様々なシステムを購入可能。
中にはダンジョン以外のデータ世界に入る事の可能な権利、アバターを改造しする権利だっりと多く存在する。
「アバターには種族とかも存在するんだ。複数は持てないと。んで俺は初期アバター固定と。まぁ素で声が変わるのは強いのかもしれないけどさぁ」
なんとも言えない怒りがあるよね。
俺は撮影権利のシステムを購入。
これでダンジョン内で俺の動きを撮影出来る。
一人称から三人称と色々な設定が出来る。
システム権利は一度買えば更新とかなく、無限に使える。
なので高値であり、撮影だけの権利も四千万と防具一式レベルなのだ。
「三人称かな。編集とか出来ねぇし。Vも無理だし」
現実世界とデータ世界では俺声違うからね。姿見られても問題ない⋯⋯だろう。
後は⋯⋯。俺はカムイを呼び出した。
「少し体を慣らすか」
黒い刀を取り出して、カムイと戦う事にした。
多分、カムイは一級の中では弱い方だろう。
回復と戦闘が両立している点は強いけどね。逆に言えば、戦闘特化でも回復特化でもない。
「いくぞ!」
二千万、行くぜ!
少しはこの体でも戦えるようにしておきたいしな!
⋯⋯まさか俺が再び剣術を使う日が来ようとはな。
でも、俺自身が使える武器なんて剣術しかないから、仕方ない。
俺は四十分、カムイと戦ってギルドを後にした。
残ったお金は全部推しの為に使うつもりだ。
「お金に関しては問題は無さそうだな。ガチャ引けば金は手に入る! ガチャスキルって全く情報無いけど⋯⋯なんでだ?」
もしかして俺だけのスキルだったり?
そしたら俺、二つもあるよ?
その一つ、呪いだけど。
翌日の俺は少し上のXランクのダンジョンにやって来ていた。
ここまでなら余裕だと判断したからな。
「さて、配信のチャンネルも開設したし、やるとするか」
全ては推しの為に!
俺はダンジョンに入って撮影システムを使う。
と言うかコレ、新人に厳しいよな。
撮影する為に四千万ってさ。
まぁ、最初の方はスマホのカメラとか使うのが普通なのだろう。
後は事務所だったり、稼いでからやったり⋯⋯まぁ人それぞれ。
「リイアたんは最初から一人称だったし、システムを買ったんだよな? そんなに裕福なのに何故配信を? ありがたいけど」
モンスターカードには頼らずに俺の手でエネミーは倒して行く。
体感的にこっちの方が経験値が入りやすい。
リイアたんもモンスターの手は借りてないしね
現在のレベルは6であり、身体能力の変化はあまり感じない。
ちょっと体が軽くなったかな? 程度だ。
レベルがあってもパラメーターがないので詳しい事は分からない。
ネットでは色々と転がっているけど。
「エネミー一体で三ポイント、単発するにも数十体は倒さないといけない。確定保証のためには⋯⋯」
ガチャ引くの結構辛いな。
モンスターを使ってエネミーを狩ればすぐに集まるか? でも、他の人と接敵したら嫌だしな。
「って、撮影システム使っても、何も言わずに黙々とエネミー斬るって意味ないじゃん。帰ったらパソコンで編集しておくか」
いや、難しいそうだし撮影をやり直すか。
三人称で、俺の姿が見えるようにして、それを俺が確認出来る状態にする。
結構細かく設定出来るな。
「お、始まった。⋯⋯初めまして、日陰でーす!」
日向だから日陰、なんか良さげな装備を選んだら全身黒になったのでちょうど良いと思う。
こっからは喋り方に気をつけながら、成る可く俺が戦うのは控えよう。
モンスター同士が戦っている方が映えるわ。
モンスターカードってレアだしね。
「さぁ、モンスター使いの日陰、いざ参る!」
ん〜なんか変!
とりあえずカムイは見た目がアレなので流石に御遠慮させて貰おう。
なのでその一つ下、SRの二級を使う。
「固有名詞はないのか?」
俺はモンスターカードを掲げる。
「
出て来たのは太ももがなんともエロいムッキムキの男だ。顔はタコ。触手が肩から数本伸びている。
タコ男、そう言う名前だった。
「⋯⋯よし、タコ男、エネミーを倒すぞ!」
なんも喋らねぇ! 触手で言語使うから分かるけど!
俺のトーク力舐めんなよ! これじゃ動画として成り立たないよ!
ど、どうする? 俺が上手く実況出来るか?
いや、やるしかない。
「いたぞ、エネミー⋯⋯だ?」
エネミーが視界に入った瞬間、触手を伸ばして貫き、倒してしまった。
⋯⋯つ、強い。
てか敵が弱い!
これじゃ実況どころじゃない!
既にお前は死んでいる、状態が永遠と映ったら、ただのキル集だよ!
「タコ男、もう少し手加減をしなさい」
首を傾げるな!
エネミーを倒しながら実況しようと努力する。
「もっと弱いモンスターにするべきか、それともダンジョンの難易度を上げるべきか?」
でも、レベルが推奨レベルよりも低いのに行くのは嫌だな。
今なら問題なく復活可能だけど、アバターは成る可く壊したくない。死にたくない。
難しいぜ。
「ドロップアイテムって換金以外になにか使い道あるのかね?」
武器とかはアプリ内のショップで買えるし、具現化してコレクション用にしかならない。後は装備の素材とかにも使えたり⋯⋯あ、意外とあるな。
だけど、低ランクのダンジョンで手に入るアイテムなんて見た目も良くないし、素材としても低ランクだ。
本当に使い道がない。売っても額少ないし。
「あ」
俺は自分の持っているモンスターカードの一枚をチェックする。
それは七級と決して高くは無いが、そいつのスキルに〈製作〉があるのだ。
「もしかして⋯⋯でもダンジョンで試したいスキルじゃないよな」
ギルドのお試し空間でやるにしても目立つだろうし、個室なら大丈夫か?
いずれ試してみよう。
戦闘系じゃないから売れないだろうし。
「さーて、タコ男、ボスエネミーを倒すぞ!」
そう言うと、タコ男が自分の影から一本の触手を取り出した。
それに絡まっているのは、なんとも少しばかり凶悪そうな見た目のモンスター。
目を凝らして見ると、相手が敵だと分かるレッドカーソルが出る。
「こいつ、ボス?」
タコ男が頭を前に倒した。
⋯⋯⋯⋯Xダンジョン、攻略したようだ。俺が色々と考えているうちに。
俺は今回の動画を早速投稿した。
日陰チャネルとして。
装備により金がある事が予測され、モンスターカードの強さに注目が集まる。
新人探索系配信者は初回の動画でも一万人は行く程に娯楽としての需要が高かった。
その結果、日陰は装備はそこそこ揃い、モンスターカードは超レア、知識量などは素人。声は変えられないので女性だと判明した(正確にはそれらしい装備はしていない)。
その摩訶不思議な事に注目が注目を集めて広がった。
そう、バズってしまったのだ。
それに気づくのはかなり遅かった。
俺は甘く見ていたのだ。二級を。
【あとがき】
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