クラスで話題の美少女配信者がデブスの俺だとは推ししか知らない〜虐げられても関係ない、推しに貢ぐ為にスキルのガチャを引く〜
ネリムZ
第1話 なぜこうなる?
「おい豚、そこどけよ」
俺はそう言われて蹴り飛ばされて、教室の廊下に転んだ。
避けようとしたけど、やはり昔とは違って重心が上手く合わずに転けてしまった。
蹴られて転けても、誰もが見て見ぬふり、笑いもしない。
寧ろ見て見ぬふりと言うより、それが当たり前かのような感じで、誰もか各々のグループで会話をしている。
そう、これはあくまで日常の一ページに過ぎない常識的な出来事なのだ。
「⋯⋯はぁ」
俺はデブだ。
朝のホームルームが始まるまで俺の好きなVの歌ってみた動画をイアホンで聞く事にした。
「よぉ、
「
俺は芹沢と言う男に反抗したが、帰って来たのは前蹴りだった。
椅子から転げ落ちる。
「お前のようなデブの底辺が口答えするなよ!」
スクールカースト、こんな『神と近い世界』でも存在する。
昔の話ではないのだ。
「でも、お前は
「あんな、はした金すぐに無くなるわボケ!」
探索だけで生きていけるのは上位クラスのみ⋯⋯とは聞くけど実際どうなんだろうか?
ダンジョンに行った事ないから分からないや。興味もないし。
「おいおい、お前のような奴に拒否権は無いの、分かる?」
「
俺の肩に腕を回して来る。拒否権も何も、無い物は無い。
こんな日常の中で俺にこのように言葉を出して来るのは芹沢、阿久津⋯⋯そして今教室に入って来た
「お前、反抗的だなぁ。今日もちゃんも教育が必要だな」
クラスメイトも教師もこの日常に異常性を感じる事なく、空気のように扱う。
そう、これが俺の生活なのだ。
放課後、教育と言う名のサンドバッグを終えて家に帰る。
家には剣道場があり、そこでは幼馴染の
今日は剣道教室じゃないので、剣術を習っているのだろう。理由は不明だが。
「あ、
「日向⋯⋯」
幼い頃は可愛いらしい顔立ちだったのに、今では凛々しく出来るエリート会社員みたいな見た目になっている。
銀髪を揺らしながらよって来る。
「ひ、日向くんも一緒にやらない? ほら、昔みたいにさ」
「愛梨、言ったろ? もう俺は剣術を伸ばさない。もう、剣の道には進まない。それじゃ」
「待って日向くん!」
俺は待たずに部屋へと走って向かった。
階段を登っている最中に、転けそうになったのは秘密だ。
俺はストレスにより太り、醜い姿へとなったが、愛梨は対照的に美しい姿へと変わっている。
まぁ、だからなんだと言う話だが。
俺の部屋には壁や扉、天井までアニメなどの推しのグッズなどで埋まっていた。
今日は新たに更新されたVの動画を見るのだ。
『どうも皆、リイアだよ!』
ダンジョン探索系VTuberの侍リイア。
実力が高い刀を扱う女性である。
一人称視点の戦闘映像に後から音声を付けての解説などを行う、解説実況的な感じだ。
検証なども行っている。
他にも雑談配信や歌ってみたなど、ダンジョン探索以外の事にも挑戦している。
「はぁ。この耳に馴染む声が良いんだよなぁ」
昔から傍に居るかのような安心感が得られるこの声が俺は好きで、立派なファンになっていた。
「そう言えば、フィギュアの購入予約明日からだよな」
八分の一スケールのフィギュア、絶対に欲しい!
リイアたんの為なら俺は金を出せる! あんなへっぽこヤンキー達よりも!
「でも、あのヤンキー三人が絡まなかったら、俺は本当に教室にいる豚になるんだよなぁ」
これは俺だから思う感性だが、一般人は不登校になっているだろう。
さてさて、財布の中身は⋯⋯あれ?
学校には持ってていないのである筈なんだけど。
通帳⋯⋯0!
色々な所を探索⋯⋯見つけたのは貯金箱に入れた一円だけだった。
「金が⋯⋯ない」
しかも剣術を放棄しているので、両親に金を頼みにくい。
どうしよう。
芹沢の存在を思い出した。
あいつはダンジョン探索で小銭を稼いでいる。
「俺も⋯⋯やるか。今まで興味なかったけど、流石に金が無い!」
ダンジョン探索の方が短期間で沢山のお金を稼げるチャンスはあるのだ。
まぁ、今日は暗いし明日からだな。
「異世界データ入れておくか」
スマホに神が作った専用アプリをダウンロードしておく。
これないとダンジョンに行けない。
夕飯、父、母、愛梨と食卓を囲む。
「今日も愛梨居るのか」
「良いでしょ。アンタと違って、愛梨ちゃんは家事の手伝いをしてくれるし」
「⋯⋯ご、ごめんね? 嫌だった?」
「別に。高校生になっても変わらないな〜って思っただけ。今更迷惑とか感じないよ」
「そっか、なら良かったよ」
少し顔を赤らめて唐揚げを食べる。
彼女の両親は仕事で忙しくて、愛梨との生活時間と噛み合わず、いつも一人だ。
なので、夕飯などはうちで一緒に行う
母も父も愛梨を気に入っているので、問題ないだろう。
俺よりも自分達の子供のように接している。
俺は愛梨の横に座って食べ始める。
「日向」
「なに、父さん」
「最近ずっと部屋に籠ってるだろ。明後日でも良いから、ジョギングくらいしたらどうだ? そのままではいかんだろ」
俺の胴体を見て、愛梨を見る。
その後に出て来た言葉がそれか。
「明日少し外に出る」
「おお! そうか、よかった」
父が純粋に喜んでくれる。
そこまで俺はヒッキーになってたのか?
「え、日向くんどこかに行くの? 一緒に行って良い?」
ソワソワしながら愛梨が聞いて来る。
「ダメ、一人で行動する」
「そっか」
しゅんとする愛梨に俺は何も言わなかった。
翌日、俺は昨日ダウンロードしたアプリを開いて、近くのダンジョンを探る。
ダンジョン、それは神が作り出したゲームのようなシステム。
化学が発展し時代が進み、人からは神を崇める心が薄くなり消えていった。
それを危惧した神々がこの世に降り立ち、信仰心を集める為に行ったのがダンジョンだ。
正確には異世界、名前を『データ』としている。
データの中での感情は全て神の信仰心へと繋がる。
データと言う名に相応しく、ダンジョンを攻略するのは自分でありながら自分では無い人『アバター』となっている。
ダンジョンの敵モンスター、エネミーを倒すと金とドロップアイテムが手に入る。
武器、防具、ステータス、全てがこの異世界データと言うアプリで一応は完結する。
まぁ要約すると、神は信仰心が欲しい、だから人間にとってのメリットを作り出した。
結果として、神を信じる宗教が荒れ、人間は新たな資源の獲得を死の危険がなく行えるようになった。
データ世界と現実世界、それが今、神の手によって存在している。
データ世界で死んでも現実世界には影響がない。
いや、影響はある。
殺された時の感覚などは残るらしい。
難しい事はよく分からないけど、簡単に言える事がある。
『神ってスゲー』である。
この言葉は便利であり、今時は大抵の事、これで解決する。
そんでその神⋯⋯複数人存在する奴らはオタク文化に寛容と言うか好きになったのか、イベントなどを時々行う。
ラノベとかである干渉云々はないのだ。
「難しく考えても意味ないな。金を稼げる、ダンジョン探索系のゲームだと思うべきってネットにはあるし」
尚、PvP要素もあったりする。合法殺人である。
そのお陰か、今時は殺害で捕まる人はかなり少ない。
俺は難易度の一番低いダンジョンがある場所に来て、アプリ内の専用カメラ機能を開いた。
そのカメラ越しに見える世界が『データの世界』である。
そして見えるのがボロボロの廃墟であるダンジョン。シャッターを押す。
パシャリ、ダンジョンを撮影する。
すると、画面が変わって『入場しますか』と出て来る。
ダンジョン内部なら、何も支払わなくてもデータの世界に入れる。
俺は『入る』を押した。
全身が光に包まれ、俺の体が解析されて、『アバター』が生成される。
アバターには装備やステータスが与えれる。
最低ランク(Zランク)のエネミーは一体に十円から三十円らしい。ボスは百円レベル。
「お、解析が終わったか」
目の前に半透明のパネルが現れる。
視界が暗転して、俺は違う世界へとやって来た。
「不思議な感覚だ。VRとは本当に違うんだな。空気も何もかもが存在する⋯⋯データと言うなの異世界、か」
これが神が人間に与えた物。
そりゃあ誰でも神に対して、何らかの感情は出るわ。
俺的には敬意と感謝かな? やっぱリイアたんを生み出してくれた神には感謝だわ。
「それにしても、初期アバターは現実世界に近いって聞くけど、声は変わるんだなぁ。それに胸の部分が現実の俺よりも余計に際立っている」
データ世界の俺は現実世界よりも太っいるようだ。
声はかなり女性に近い。
でもなんか体が軽い気がするんだよなぁ。
「そう言えば、アプリでステータス確認出来るんだっけ?」
スマホを開いて、ステータス画面に向かう。
霧外日向
レベル:1
称号:なし
スキル:【データ転性】《モンスターカードガチャ》〈剣技.7〉〈剣術の才〉〈殺人の才〉
魔法:なし
「ほーん。【データ転性】って何?」
確か自分のスキルは確認出来た筈。
【データ転性】
現実世界とデータ世界の性別を真逆にする。アバター外見改造システムを使用不可にする。体型は現実世界の現状と全盛期の肉体から参照され作られる。一度決まったアバターは変わらない。アバターは必ず相性が良くなる親切設計。
「へ〜⋯⋯はあああああああ!」
俺は自分の髪を触って引っ張った⋯⋯腰まであった。
凄く長い。あと綺麗。
腹を触った。
少し筋肉質で柔らかくも鍛えてる感じはあった。
いや、筋肉を触った感覚で分かるレベルって事は痩せている。
そして強調された無駄にでかい胸は⋯⋯嘘だろ、おい。
「俺、スタイルの良い女になってるじゃん」
しかも、アバター変更が出来ないって言うデメリット付き。
胸を引っ込める事も、髪型や髪色を変える事も、男になる事も、データ世界では出来ないのか。
「なんで、なんでだよ。これじゃスキルじゃなくて、呪いじゃないか」
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