第5話 投げ銭機能を使ってみる

 家に帰ってひと息つく。

 ユラちゃんは塩のお風呂で休憩です。


『ユラ〜〜♪』


 フフフ。

 

 そういえば、昼にアップしたペット配信はどうなったかな?


「うは! 再生回数100万越えだ!」


 チャンネル登録者数は15000人を超えていた。


 うはぁ、凄いことになってる。

 これは目標の2万人なんてあっという間では?


 ヅイッターはどうなっているんだろう? お昼にユラちゃんの写真をアップしたんだよねぇ。


「リヅィートが1万越え! 良いねが10万越え!!」


 ふぉおおお!

 とんでもない数字が出てる!


「ヅイッターのフォロワー5千人突破! 凄ぉッ!」

 

 DMが千件以上。

 こ、これはバスり散らしている……。


 ま、まさかと思うけど……ゴクリ。


「キターーーー! ついにやってしまったトレンド入りーー! ヅイッターのトレンドランキング7位に入ってます!! ユラちゃんすごすぎぃいい!!」


 ふぉおお。

 これは本当に配信者として食べて行けそうですよ。


 ではでは。

 ペット配信をしてみましょうか。

 スマホで気軽に行きましょう。


「みなさんどもです。ダンジョンモンスター大好きっ子、ダモ子です。こちらは私のペット、ダンジョンクラゲのユラちゃんです。今は塩水に浸かって体を癒しております」


『ユラ〜〜』


 もう、数秒でコメントが入ります。


『待ってた!!』

『可愛い!』

『可愛いすぎる!!』

『主さんの声も好き!』


 なんか、変なコメントも入ってますが無視しましょう。


「ただの入浴動画でした。それではまたーー」

『ユラーー』


 僅か数分の入浴動画。

 再生回数はたちまち100万越え!


「ちょ! もう怖いレベル!」


 チャンネル登録者数が見る見る上昇します。ふはーー。これがバズるというものか。


「ユラちゃん! あんたはすごい!!」


『ユラァ!』


 編集も何もしていない動画が100万再生ですよ?

 こんなお手軽なことがあるでしょうか?


 まだまだ時間があるからね。次の配信動画を上げましょうか。

 そうだ。次は投げ銭機能ウルトラチャット。略してウルチャをオンにしてみましょう。

 もしかしたらいくらか貰えるのかもしれません。


 えーーと。

 題名は『入浴しながら家でご飯。ダンジョンクラゲの生態』でいいかな。


 一回目は、屋上で食べた乾燥ワカメだったからね。

 今度は入浴バージョンの食事です。


「ども、みなさんこんにちは。ダンジョンモンスター大好きっ子。略してダモ子です。今回はダンジョンクラゲの生態、と題しまして。浴槽の塩水に入りながら餌を食べる仕草をごらんください」


 乾燥ワカメを、


パラパラ〜〜!


『ユラァ♪ モグモグ』


 あは。食べてる食べてる。


「可愛いでしょ? ふふふ」


 コメント欄は沸く。


『超可愛い!』

『いくらでも見れる!!』

『最高かよ!』

『欲しい! その子くれ!!』


 そして、


チャリーーン!


 ん、この音は?


【狸の腹鼓はらづつみさんから千円のウルチャが入りました】


 うは!

 初、ウルチャいただきました!


「狸の腹鼓さん、ありがとうございます!!」


 それから数回。

 数百円から数千円入ります。


『うは! 手が可愛い!!』

『手、手ww』

『甘えてるwww』

『たまらん』

 

 手?


 ああ、ユラちゃんの触手が私の手首に絡んでいることか。


「あはは。この子。1本だけは私の手首に絡むんです。もう甘えたで」


 そう言ってその部分をアップにする。


チャリーーン!

チャリーーン!

チャリーーン!


 え? え?

 なんか一気にウルチャ入った!


「うわ! 1万円!? あ、ありがとうございます!!」


 ひえーー。太っ腹ぁあ。

 ただで1万円くれるとか、そんな人が実在するんだ……。


『ユラちゃん可愛い!』

『最高!』

『主さんも優しくて癒される!』

『ダモ子は声が可愛いんだよな。絶対美少女だろ』

『手が小ちゃいよな。学生?』

『JK? JCかな?』


 ははは。社会人だよ。

 今日、会社を辞めたね。絶対に言えないけどね。


「それでは次の配信でお会いしましょう。ユラちゃん。みんなに手を振って」


『ユラァ』


「ふふふ。ではまたねーー」


 ふぅ。配信終了。


「うわぁあ。ウルチャだけで10万以上も貰っちゃったよ! たったの数時間だよ? 信じられない」


 視聴回数に対する広告宣伝費は再来月だから、それまで収入ないけど、ウルチャなら即時入金だからな。

 これは完全に仕事を辞めて正解だったね。


 それから一緒にテレビを見たりダラダラと過ごします。

 部屋の中を私が動けばユラちゃんは追ってきます。


「トイレだから。そこで待ってて!」


『ユラァ』


 ユラちゃんはトイレの扉にビッシリとへばりついてます。

 構って欲しいのか、時折トントンと叩いたりしてます。


 ああ、音聴かれてるなぁ。


 扉を開けると即座に飛びついてくる。


『ユラァ!』


「んもう。この子ったら」


 そういえば、ユラちゃんってトイレしないな?


 通常のダンジョンクラゲなら水辺にするはずなんだけど?


 浴槽の水は綺麗なままだしな。

 食べたワカメはどこに出しているんだろう?


「もしかしてユラちゃん。トイレしない子?」


『ユラ?』


「アイドルってトイレしないもんね。それか!」


『ユラ!』


 新種だからな。

 謎が多い。


 ふふふ。でも楽しみだな。

 新種の生態を私が解明していくんだ。

 

「ふはーー!!」


 と、ベッドにダイブする。


 明日からは会社に行かなくていい。

 ああ、もうあの地獄の日々から解放されたんだ。

 これからはユラちゃんと楽しい配信。

 ぐふふふふふ。ああ、笑いが止まらぬ。


ペト……。


 気がつけばユラちゃんの触手が私の腕に巻きついています。


「ふふふ。ユラちゃん」


「ララァ」


 ママって言ってるように聞こえるな。

 でも、残念ながら私は君のお母さんじゃないんだよねぇ。


「私は 博梛はかなだよ。は か な」


『ラ ラ ラ?』


「そうそう! もう一回。はーーかーーなーー」


『ラーーラーーラーー』


「あはは! 賢い! 私は 博梛はかな。君はユラちゃん。アーユーOK?」


『ラララァ!』


 ふふふ。 博梛はかなって言ってるように聞こえるな。


「偉い偉い。なでなで」


『ユラァ♪』


 ふふふ。カワユスなぁ。


「んじゃ寝ますか」


『ユラ』


 抱き締めるとフリース素材のぬいぐるみみたい。

 匂いがほんのりとあるんだけど、林檎に近いかな。ちょっとフルーティーでいい香り。

 

「ユラちゃんがいると安眠できるよ。おやすみ」


『ユラユラァ』


 ああ、明日が楽しみだ。

 これからは毎日が日曜日になる。



────

次回は顎田主任視点です。

お楽しみに!

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