ハジメテ。

明鏡止水

第1話

いくらでも、びちゃびちゃと濡れてくる。

どうぞ、と男がしっかり封をした安全なスポーツドリンクを差し入れしてくれたから。

ハジメテなのに、もう声の出し方を知っている。

男が上手いわけではない。

ただ、ハジメテの女性への扱い方を勉強したわけだ。


「まずはキスからしよう」

「キスもハジメテです」

男の方から剃った髭の少しざらつく頬とを。口元を寄せながら。

まさに、唇と唇を合わせるという、何の意味があるのかわからない行為。

女に情動と恋心があれば恥ずかしさ。

そう!恥ずかしさ!羞恥心、体温の上昇。それがあったはずなのに。

男は薄目を開けたまま、

「次が、」

女は断りも要らずにされるがままにディープキスをされていた。

女は快感を取り戻したい。ただ、ストレスの多い環境にいたせいか、それとも気に入った男が現れるまで一人でいた罰なのか。性的快感を感じなくなっていた。そんな女がどうやって喘ぐのか。

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