第6話 洛陽炎上と曹操の再起

 汜水関の出来事である。


 孫堅戦死の知らせに汜水関の曹操だけが苛立ちを覚えていた。


「なぜだ。なぜあの孫堅が負けた!! 俺には、孫堅が死んだとはとても思えない!!」


 曹操の目的は董卓の首、そのためなら何でもしただろう。


 指名手配にされて安息の地など曹操にはどこにもなかった。


 逆賊呼ばわりされた悪夢の日々が思い出される。


「俺はお前たちの下らん私利私欲などどうでもいい!! この俺がどんな思いで檄文を書いたと思ってるんだ!! つまらん野心など捨てろ!! 董卓の首を打ち、天子を救う!! それ以外考えるな!!」


 曹操の怒りは最もであった。


 それに呼応する者、それを逆恨みする者、連合軍は真っ二つになってしまった。


 そんな中で、一人の男が曹操に力を貸す。


 そう、あの公孫瓚であった。


「この公孫瓚、曹操のお言葉に心打たれました。再度進軍許可を貰いとうございます。」


 この申し出に曹操は大いに喜んだ。


「おお、公孫瓚、よくぞ言ってくれた!! 今度は私が食料班に着く、大船に乗ったつもりで行って参れ!!」


 曹操の言葉に安心した公孫瓚はこういう。


「曹操殿が後方支援してくだされば百人力です!! 命に変えても董卓の首を取ってまいります!!」


 公孫瓚は白馬を愛し、白馬の研究をしていた。


 故に白馬陣の公孫瓚と知れ渡っていた。


 公孫瓚の馬術はそこらの役人よりも桁違いの技術力であり、天下からの評価も高かった。


 公孫瓚が汜水関から出兵すると目の前の呂布軍に宣戦布告する。


「呂布め!! 孫堅の仇はこの公孫瓚が取ってくれる!! 赤兎馬に目が眩み、丁原(呂布の元義父)の命を奪った仇もついでにとってやるわ!!」


 公孫瓚が白馬の軍は白馬陣を組み、呂布軍と対峙する。


 しかし、呂布は挑発に乗らず、堂々と前に出てくる。


「どうした呂布、天下無双の豪傑は陣も組めぬのか?」


 公孫瓚が呂布を挑発すると呂布が突撃の号令を掛けてきた。


「ふん!! 愚か者め!! 陣を組もうが神速の攻めには敵わぬわ!!」


 そういうと公孫瓚は不意を突かれてしまう。


 赤兎馬の速さに大きく身を反らして呂布の攻撃を回避するも思わず落馬し尻もちを着いてしまった。


「この呂布の攻撃を避けることはできたみたいだな。だが、死ね!!」


 呂布が落馬した公孫瓚にトドメを刺そうとすると張飛が呂布の突きを払い除ける。


「貴様が呂布だな!! 孫堅の仇は俺が取る!!」


 そう言うと張飛が力任せに呂布を捻じ伏せる。


 しかし、呂布は武芸に長けており、一本の槍を使って攻撃と防御を同時に行ってくる。


 そのため、張飛の勢いも次第に無くなり、いつしか防戦一方となってしまった。


 呂布の槍術が余りにも見事故に劉備が急いで加勢に入る。


「張飛、助太刀するぞ!!」


 劉玄徳(劉備のこと)は両腕が非情に長く、中国では超人的身体は神として崇められる風習があり、劉備の双剣による攻撃は劉備の腕が長すぎる故に流石の呂布も攻撃範囲が見きれず、はじめは戸惑った。


「な、なんという剣の間合いだ!!? この攻撃範囲で2つの刃でなく寵妃の槍まで飛んでくるか!!?」


 劉備と張飛の連携攻撃に戸惑う呂布であったが、劉備と張飛には余裕がなかった。


 劉備が勝負を焦ったのか、何度も最大距離で攻撃したために、呂布は劉備の射程を把握してしまう。


 すると、劉備の攻撃が届かなくなってしまったのだ。


「間合いを測られたか、関羽よ!! 呂布はここだぞ!!」


 劉備が関羽に助けを求めると関羽が声を挙げて呂布の注意を引く。


「貴様が呂布か、この関雲長(関羽のこと)がその首取ってくれるわ!!」


 いつしか劉備、関羽、張飛の三人が集まり、呂布の攻防一体も三人の攻撃には防戦一方となってしまう。


 呂布が周囲の形勢を見るに、呂布軍は崩壊寸前であった。


 先程の公孫瓚が白馬義従を呂布軍に仕掛けて呂布軍は白馬の波に飲まれてしまったのだ。


 官職の者で言えば優れている公孫瓚だが、公孫瓚には確かな実績があった。


 公孫瓚は異民族や盗賊共から『白馬長史』と言われて恐れられていた。


 董卓の軍勢など、公孫瓚の白馬陣を打ち破ることなどできるはずもなかった。


 呂布は撤退を決意する。


「この勝負しばし預けた!!」


 呂布が背を向けて逃げていくと張飛が叫んだ。


「待て~!! おめおめと逃げるつもりか!! そうはさせんぞ!!」


 しかし、赤兎馬の速さに張飛は目玉を丸めて見過ごすことしかできなかった。


「なんて速さだ………!!」


 呂布がまたもや敗走すると董卓の軍勢は残り1万となってしまう。


 こうなると流石の董卓も不安ではいられない。


「残り兵士も最早僅か………呂布よ。打って出てはならん。虎牢関の中で戦うのだ。」


 一方、その頃、袁紹はと言うと………


「私が不甲斐ないばかりに味方の士気を乱してしまった。ここは一つ、汚名返上せねばなるまい。」


 猜疑心の強い袁紹には自信がなかった。


 だが、そんな袁紹でもある二人の言葉だけは聞くことができた。


「袁紹様、お一人とはどういうことでしょう? ここに我々が居るではありませんか?」


 袁紹が振り返るとそこには文醜、顔良が居た。


 二人は袁家の二枚看板と言われており、その実力は折り紙付きだ。


「おお、お前たちが来てくれれば呂布も木端微塵だ!!」


 袁紹が大勝利を確信した矢先に横からこんなことを言うものが居た。


「いやいや、呂布を倒せるのはこの俺様しか居ないでしょう?」


 これぞ麹義である。


 麹義は袁紹軍で一番強いと言っても過言ではない。


 しかし、傲慢な性格で袁紹は麹義のことをよく思っておらず、麹義もまた袁紹を無能な主としか思っていない。


「わかったら、お前らはここで大人しくお留守番してな。俺一人で十分だからよ………」


 そう言うと麹義は勝手に軍をまとめて出兵した。


「お、おい!! ええい!! 麹義の奴め!! また勝手に出おってからに!!」


 しかし、麹義は羌族の血を引く者で、有名なところでは馬騰や馬超と同じ血を持つものである。


 故に、麹義の実力は関羽や張飛に匹敵するだろう。


 外では公孫瓚が虎牢関の関所を前に攻略できずに立ち往生している。


「クソ!! 呂布の奴め!! 何という射程だ!!」


 そこへ麹義の軍勢が雪崩込んできた。


 麹義の馬術は羌族ならではのものがあり、呂布の弓を皆が回避して城門近くまで辿り着くと槍を投げた。


 槍を投げた後で敵が怯んだのを見れば槌を持った馬たちが城門に向かって突撃し、槌を勢いに任せてぶつける。


 槌の先端はとても硬く、重いため、鉄でできた扉も一発で大いに凹んでしまった。


 それを同じように後続から槌を何度もぶつけては他の馬も勢いを付けて槍を投げる。


 また、羌族の盾も大きく矢の雨も防いだ。


 羌族の戦法は大変だが、豪快でもあった。


 それ故に羌族の皆は勇猛果敢であり、麹義の兵士たちは皆、猛者揃いであった。


「開門!! このまま雪崩込むぞ!!」


 それに続いて公孫瓚の白馬たちも雪崩込み、劉備達も続いた。


 大敗を悟った呂布は一人赤兎馬に跨がり逸早く脱出、虎牢関での戦いは苛烈を極めていた。


 一方、李儒は呂布の大敗も時間の問題と試みるや董卓に急いで面会を求める。


「思うに洛陽は守れる城ではございません。ここは一つ、洛陽を捨てて長安で戦の準備をしましょう。」


 これに対して董卓は今の贅沢三昧が惜しいためにこんなことを言う。


「長安は黄巾の乱で荒れ果てておる。このまま洛陽で贅沢をしていたいものだな。」


 これに対して李儒はとんでもないことを進言する。


「民たちに避難命令を出しましょう。避難は金持ちを優先し、招集させてから金品を一網打尽にしましょう。その後、洛陽を焼き払うのです。そうすれば、すべての金品が手に入り、洛陽炎上は討伐軍の足止めにもなります。」


 李儒の恐ろしい計略に流石の董卓も動揺してしまう。


 そこに李儒が追い打ちを仕掛ける。


「事は急いだほうがよろしいかと………」


 この言葉に董卓が笑って略奪を決意する。


「よし、洛陽の金持ちを急いで集めろ!! 討伐軍に取られるくらいなら根こそぎ奪っておけ!! 最後には洛陽を燃やして長安で街づくりだ!! はっはっは、愉快愉快!!」


 討伐軍は麹義の働きによって大いに進撃し、虎牢関を制圧、洛陽まで押し寄せる勢いであったが、付けば炎が燃え盛り、董卓の姿はどこにもなかった。


 洛陽は400年の歴史を持つ都、故に、洛陽炎上は大陸全土に衝撃を走らせた。


「ちッ、俺様が来たらこれか、これじゃあ、地の果てまで董卓を追い詰めねぇとだめだぞ。」


 麹義が瓦礫を蹴飛ばして火の起動を変える。


 一番ご立腹なのは曹操だ。


「おのれ董卓め!! 命が危ないと思えば洛陽を焼き払ったか!!」


 洛陽の民は住む家も無くなり金品も奪われてしまった。


 金持ちが金を失い、ただの老人老婆、乱世の時代では老害共に甘くはない。


 乱世を生きる奸雄・曹操は董卓への恨みに燃えていた。


「袁紹、董卓はそれほど遠くまでは行っておるまい。追撃するぞ!!」


 しかし、猜疑心の強い袁紹はそれをよく思わなかった。


「今追撃するのは良くない。罠があるやもしれん。」


 皆は呂布との戦いで疲れ切っていた。


 曹操軍も例外ではない。


 しかし、曹操は我慢ならなかった。


「袁紹!! 貴様は洛陽で贅沢三昧をし、民をないがしろにした董卓を野放しにするのか!! 俺には我慢ならん!! しかも、金品財宝を根こそぎ奪ったんだ!! みんなもそう思うだろ!!」


 これを聞いた金持ち共は皆、曹操の味方をした。


「曹洪!! 我らだけでも行くぞ!!」


 曹操は曹洪と共に董卓を追撃することにした。


 董卓軍は最早2600程度の軍勢である。


 しかし、呂布が居る以上、油断はできない。


「呂布将軍!! この李儒が及ばずながら参謀を務めさせていただきます。」


 呂布は李儒の作戦を聞くと油断ならぬ男と思ってしまった。


「貴様が味方で心強い!!」


 そう答えると呂布は早速、李儒の計略に従う。


「………曹操様、あの城に董卓は落ち延びた様子です。」


 曹洪が曹操に言うと曹操は夜襲を仕掛けることにした。


 しかし、曹洪は不穏に思ったのか曹操にこう告げた。


「董卓が入り込んだにしては静かすぎる気がします。」


 それを聞いた夏侯惇(『かこうじゅん』でも『かこうとん』でも良いことにする)も疑惑を深めてこういった。


「確かに、董卓が入った城にしては静かすぎますね。」


 しかし、曹操は聞かなかった。


「えぇい!! 天下万民のために我々は戦っているのだぞ!! 罠を恐れて民が救えるか!! 天子が救えるか!!? 着いてこないならそれでも構わん!! 胸に大義を持つものだけ着いて来い!!」


 曹操の激に曹洪と夏侯惇は胸を打たれて従った。


「曹操様の仰るとおりでした!! 我らも命を捧げます!!」


 曹操軍は何も恐れること無く城へと突撃した。


 しかし、城を守っていた兵士は数百程度ですぐに逃げ出してしまった。


 城を制圧したが蛻(もぬけ)の殻である。


「誰も居ませんね?」


 曹洪が曹操に言うと曹操は董卓が慌てて逃げ出したのだと思い込んだ。


「沢山の金品を抱え込んでいる董卓だ!! そう遠くにはいっておるまい!! 追撃するぞ!!」


 曹操軍は即座に城を出て董卓を追った。


 少し進むと山に囲まれていた。


 銅鑼が鳴り響くと、そこには李儒と呂布が居た。


 呂布が笑って言う。


「曹操!! 待っていたぞ!!」


 続いて、李儒が言う。


「曹操よ!! この大逆賊め!! 董卓の恩も忘れたか!!」


 その言葉に曹操は激怒した。


「董卓の恩だと!!? 悪徳政権、天子が見過ごしてもこの曹操は許さんぞ!! まず、貴様の首から取ってくれるは!!」


 曹操は剣を引き抜いて山を登ろうとしたが、李儒の合図に呂布軍は岩を落としてきた。


 岩は山を転がり落ちてきて時速100kmを軽々と超える程の速さ、とても避けれるものではなかった。


 これには曹操軍1万も手も足も出ず、岩の餌食になってしまう。


 大敗を悟った曹操はなんとか岩を避けるも馬を犠牲にしてしまった。


 右も左も解らず、気がつけば一人で夜道を彷徨っていた。


 後ろを振り返ると誰もいない。


「俺一人か………」


 すると董卓軍の一部部隊である徐栄がやってきた。


「そこの男!! 曹操か!!?」


 曹操は天運付きたと思い剣を引き抜いた。


 馬を失った曹操に逃げる術はない。


「この曹操、一人でも多く殺して死んでやるぞ!!」


 曹操の剣は徐栄の部下を切り裂き、槍を拾うと曹操は徐栄の兵士達を切り捨てていった。


 苦戦してしまった徐栄が一気に勝負をつけようと突撃をかける。


 すると、後ろから大声が聞こえた。


「徐栄、その首貰ったぞ!!」


 徐栄が慌てて振り返ると、そこには曹洪が居た。


 徐栄はなんとか曹洪の不意打ち防ぐ。


 そのまま曹洪は曹操の前に立ち、二人は背を合わせた。


「下郎め!! この夏侯惇が相手をしてやるぞ!!」


 続いて、夏侯惇も曹操に加勢する。


 徐栄は曹操を打ち取るのは容易ではないと思い一旦軍を退かせて援軍を呼びに行った。


「曹操、この場は預ける!! 即座にその首取りに来てやるからな!!」


 曹洪は曹操に馬を差し出した。


「曹洪、お前の言うことを聞いていればこんな目には遭わなかった。その馬は受け取れぬ………」


 曹操がそう言って断ると曹洪がこう言う。


「天下に洪あらず、公こそあり!! 曹操様は天下のために生きねばなりません!! 何を弱気になられていますか!!」


 曹操は大陸全土から命を狙われていた。


 その焦りが功に焦ってしまった。


 負けたことにより、また一人になると思っていたが、曹洪らを見て安心した。


「ふっふっふ、そうだな。この曹操は負けん!! 天下を手にするまでは!!」


 しかし、曹洪が徒歩では逃れることなど不可能である。


 そこで川を泳ぐことにした。


 曹操は馬に乗り、曹洪は馬に捕まるがこれではとても渡れず、途中で小船を見つけた。


 曹洪が船のあるところまで一人で泳いで辿り着くと、それに乗って川を下った。


「ここはどこだ?」


 曹操が聞くと曹洪が答えた。


「恐らく譙でございましょう。」


 それを聞くと曹操は安堵のため息を付いた。


「曹洪よ。俺はまだまだ強くなる!! 決して諦めたりはせぬ!!」


 曹操は大敗したが、曹操の大義名分は広く知れ渡っており、皆が曹操の名を聞いただけで暖かく迎え入れてくれた。


 揚州にて、曹洪の知人から1000の兵士を手に入れれば、打倒董卓と廬江で2000の精鋭を加える。


 さらに強兵で知られる丹陽兵を数千も手に入れることができた。


 皆が董卓の税金に怒りを覚えていたのである。


 曹操軍は敗れたが天下は曹操を求めており、曹操軍は数百から瞬く間に10000近くまで膨れ上がったのである。


「曹洪よ………ここでもお主の言った通りで天は曹操に味方しているのかもしれん。」


 曹操の言葉に曹洪も曹操の偉大さを知った。


「これも天下を思うからこそです!!」


 そんな矢先に夏侯惇が一人の大男を連れてきた。


「曹操様!! この者は漢の劉氏のためにたった一人で腐った小役人すべてを惨殺してきた豪傑、典韋殿です!! ぜひ、曹操の下で働きたいと志願しました!!」


 そう、この男こそ典韋であった。


 典韋は怪力の持ち主で誰も持ち上げれなかった牙門の旗を片腕で持ち上げる怪力の持ち主でもあった。


 典韋は曹操を見るに膝を付いて敬服した。


「董卓の悪徳政権は私の耳にも入ります。私も役所の小悪党どもを何人も殺した身ですが、行く宛もなく、ここに曹操様が居ると聞いて参りました。どうか、この罪人である私を曹操様の傘下に加えてください!!」 


 これを聞いた曹操は典韋を抱き上げた。


「俺も同じ、暗殺未遂の犯罪者とされた男だ。だが、今の世の中、犯罪者と罵られるものこそ正義なのだ!! よくぞ参ってくれた!!」


 この言葉に典韋は感服した。


 曹操は大いに喜んで曹洪に言う。


「見ろ!! 曹洪よ!! 天は我に軍だけでなく武将まで与えてくれたぞ!!」


 これを聞いて典韋は大いに喜び、こんな話を曹操にする。


「曹操様、実はもう一人、1万の盗賊を相手に戦い、岩を投げつけて戦った怪力の持ち主がおります。互いに食糧難に陥り、牛一頭と食料を交換する奇妙な関係になっていたとか、しかし、牛がすぐに逃げ帰ってきたので男は片腕で牛を掴み引きずりながら盗賊の元へと運んでいくもそれを見た盗賊は驚いて逃げ出してしまったと言われます。其れ以降、誰もその村を襲うものはいなくなりました。」


 曹操が典韋に聞いた。


「して、其の者はなんというのだ?」


 典韋が答えるとその男の名は許褚という名前らしい。


 早速、曹操は許褚を尋ねるとこう申し出た。


「大義名分のために曹操董卓を討たんとするが、無念にも破れてしまう。この曹操、天下の泣く声に耐えられず、決死の覚悟で挑む所存、しかし、我不才なため、其れも敵わず、許褚殿の力を是非とも天下万民のため貸していただきたい。この曹操、地に頭を付けて申し上げます。」


 曹操が地に頭を付けて頼むために曹操の部下たちが大いに慌てる。


 これには許褚も心を打たれてしまったのか、深々と頭を地面に擦り付けてこう申すのである。


「おいらにはよく解らねえけど、曹操様が天下万民のために戦ってることは知っている。こんな田舎者のおいらなんかで良いならなんなりと使ってくだされ!!」


 許褚は虎のような怪力を持つが痴(頭の回転が鈍い)ために『虎痴(こち)』と呼ばれていた。


 しかし、そんな虎痴に身分関係無く頭を下げる曹操、許褚も怖がられることはあるが頭を下げられて尊敬されたことはなかった。


 従って、許褚はこう思ったのである。


 この曹操という男には命を捧げようと………


 こうして、曹操は大義名分のために戦って敗れたものの、即座に再起することができたのであった。


「逆賊董卓め!! 今に見ていろよ!! 天は我に味方せり!!」

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