第4話 孫堅の戦略、20万の兵士
「あ、あの、酔ってるんですかい?」
孫堅軍は孫堅が『正気ではないのでは?』と疑ったが、孫堅が大軍師の末裔であり、この藁がこの時代で最も強力な武器となる。
「呂布の慌てふためく顔が目に浮かぶ………」
藁をいくつか手に持ってそんな事を言う。
一同は孫堅が何を言っているのかも分からなかった。
「いいか、孫策、戦争というものは数ではない。時には知恵も必要だ。『機転』と『奇抜』、『意外』、それらが必ず敵に『大打撃』を与える。」
この時、孫策も父上が何を言っているのか理解できなかった。
しかし、周瑜は『天性の才』を持っていた。
「孫策よ。孫堅様は凄いお父上だ!! この『風』を使うのですね!!」
周瑜の言葉に孫堅は驚いた。
『もしかしたら、周瑜とかいう男、将来大業を成し遂げるやもしれん。』
孫堅は孫策と周瑜にこう言った。
「周瑜よ。これからも孫策の力になってやるのだぞ。そして、孫策よ。お主は周瑜の意見をよく聞くのだぞ。」
その頃、董卓は呂布の大勝利に宴を開いており、呂布軍も野営地で酒に明け暮れていた。
無論、馬鹿騒ぎをしていても10万の屈強な兵士たち、たかだか5000の兵士が攻め込んでも勝ち目はない。
「おらおら、飲め飲め。」
しかし、どれだけ屈強な兵士と言えど、欲望に敵わないようではまだまだである。
―――カンカンカンカンカン―――
呂布の陣営に敵襲の鐘が鳴り響く。
「何だ何だ? 敵襲か? 酔ってても余裕だぜ………武器を貸しな………ヒック!!」
屈強な男が武器を手に取れば目の前が真っ赤に燃えた。
それは余りにも大きくて速く、とても回避できるものではなかった。
「火達磨だ!! 火達磨の群れだ!!」
普通の火達磨を転がしても屈強な男どもなら簡単に止めるだろう。
しかし、この強風の中では、火達磨の速度を加速させ、それは衰えるどころか早くなる一方だ。
気がつけば呂布の陣営は火炎地獄、炎の海に飲み込まれていた。
「ぎゃ~~、助けてくれ~~~!!」
「うおおおおお!!」
「み、水~~~!!!」
どれだけ体を鍛えていても、所詮は人、自然を利用した火計には勝てなかった。
「おのれ!! 孫堅め!! この呂布、一生の不覚!! 必ずこの借りを返してくれようぞ!!」
呂布は炎で暴れている赤兎馬を押さえつけて無理矢理落ち着かせれば、従わせた。
自慢の『方天画戟』を地面に突き刺して火達磨を止め、赤兎馬に言い聞かせた。
「俺には、自慢の『方天画戟』よりも『赤兎』、お前のほうが大切だ!! それ!!」
呂布はすべての部下を見殺しにして赤兎馬で火炎地獄の中を駆け巡った。
火達磨の群れは風が続く限り、呂布軍を飲み込んだ。
しかし、赤兎馬はそれ以上であった。
難を逃れた呂布を見て孫堅はため息を着いた。
呂布の持つ赤兎馬とは1000里を駆ける馬、因みに、1000里とは約2119kmでこれを24時間で割ると約90となる。
無論、赤兎馬が24時間ずっと走れるわけではないから大凡だが、時速120kmで走る馬と考えられる。
その赤兎馬が風に乗れば、時速120kmを超える。
無論、すべてを恣(ほしいまま)にする董卓の軍勢の馬は名馬ばかりであったが、それでも、この火炎地獄に飲み込まれていく馬が大多数だ。
孫堅は呂布を捕まえるのは容易ではないと知った。
「おのれ、呂布め………逃した魚は大魚だ………」
翌日、孫堅が呂布10万の兵士を壊滅させたことを袁紹に報告した。
孫堅の大勝利に曹操は大喜び、袁紹も一応は安心した。
董卓は10万の軍勢を失い。
敗走した呂布に大激怒、散々怒鳴りつけた後で孫堅という男が怖くなってしまう。
感情の変化が激しい董卓ではあるが、本質は臆病であり、10万の兵士がいなくなった事実に叱りつけた呂布へと縋り付く思いで命令を下す。
「呂布!! 虎牢関が落ちたら、この洛陽も終わりだ!! 無論、俺たちの首も跳ねられる!! なんとしてても守り切るのだ!!」
呂布はこの時、董卓に罵詈雑言を浴びせられて余りいい気分ではなかった。
洛陽の民も孫堅への期待を膨らませていった。
孫堅が呂布を敗走させたことで、洛陽の民は董卓に嫌がらせをするものも現れ始める。
『独裁者董卓!! さっさと洛陽から出ていけ!! もうすぐ孫堅がお前の首を跳ねるぞ!!』
この立て札に董卓はカンカンだ。
董卓の怒りは金持ちに向けられた。
董卓は董卓五銖を作り、これがあればどんな効果なものでも買い取ることが出来るという強欲な通貨を作り上げた。
この通貨で贅沢三昧をし、この通貨を利用して巨額の借金を返したものも居る。
ある意味では、董卓の強欲がその他の小悪党を一網打尽にしたという結果へと繋がった。
これを腐れ儒者のバカが『董卓天才だ』と謎の評価を下している。
悪には悪を毒には毒をということだろう。
しかし、根本である悪と毒を取り除いては居ない。
無能な人間が金にしがみつき、有能に金が回らない不正な取引、それらを帳消しにしたため、有能にも無能にも平等な利益がもたらされた。
中には、武器を購入し、金持ちを暗殺するものも現れた。
戦争中だと言うのに董卓の暴政で洛陽は混乱状態となった。
しかし、孫堅には何か不穏なものを感じていた。
そんな時に将軍程普が孫堅に進言した。
「孫堅様、敵は思わぬ大敗をし、10万の兵士を失いました。それに加えて、『天下無双の呂布』が命からがら逃げていきます。追撃しましょう!! 今こそ『将兵の粋』が高まっています!! ご決断を!!」
敵の損害は莫大的なものである。
しかし、董卓軍は20万の兵権を任された男、華雄軍に5万、呂布に10万、残る兵士は5万である。
孫堅はたった2日で董卓軍の15万の兵士を殲滅させた。
因みに、董卓が政権を掌握できたのも20万の兵士に誰も逆らわなかったからである。
唯一、逆らった丁原は、呂布が裏切ることで殺害され、董卓政権はますます強固なものになっていた。
その『呂布』に孫堅の悩みのタネがある。
「うむ、兵は『神速を尊ぶ』!! よくぞ言ったぞ程普!! 目の前の関所が何だというのだ!! 敵の体勢が立て直る前に攻め落とすぞ!!」
ここでの判断は間違いではない。
しかし、例外というものもある。
本来なら敵の大将が敗走し、目の前に本拠地があるなら体制を立て直す前に攻めること混乱を誘うことになり、大勝利間違いなしだが呂布は孫堅に対して激怒していた。
敗走した呂布が虎牢関の兵士を叩き起こすと直ぐに戦の支度をさせた。
董卓の命令ではなく独断である。
「ん? 関所から鬨の声が聞こえる。」
孫堅の不安は的中した。
「ぐぇ!!?」
この距離で一人の兵士が射殺された。
呂布である。
「りょ、呂布だ~~~!!!」
呂布は3000の兵士を連れて打って出てきたのである。
呂布は矢で兵士を次々と射殺すれば、突撃前に弓を仕舞い、新しい方天画戟で孫堅軍を蹴散らした。
「なんという射程距離、だが、呂布から近付いてくれるとは好都合!! 感情的になってるな呂布め!! 戦争というものの厳しさをこの孫文台(孫堅のこと)が教えてくれる!! 皆の者、槍と盾を構えろ!!」
負けじと孫堅も矢で兵士を射止めた。
しかし、一人の兵士が射殺されたかと思ったが、その兵士が立ち上がる。
無能な兵士ではあるが、呂布軍の防具は優秀だ。
その鎧を貫くことができなかった。
本来なら呂布の屈強な軍は孫堅の軍勢を飲み込むだろう。
孫堅の農民兵が押し返すことは不可能だ。
だが、何故か呂布を押し返すことができている。
それは、先程の『火計』同様、風が孫堅軍に味方しているからだ。
「なぜだ!! なぜ我軍は勝てぬ!!」
呂布は計画性がなく、果敢に飛び出してきたが、追い風で赤兎馬以外の馬は本来の力を発揮することができなかった。
貪欲の董卓が集めた名馬だが、訓練の環境よりも董卓は私利私欲に力を注ぎ込んだ。
従って、名馬らはいつの間にか、普通の馬といい勝負をしている。
農民兵の馬には風というアドバンテージもある。
呂布は他人のことを考えたことも無い董卓や呂布には理解できないことであった。
「呂布将軍!! 私達の馬は赤兎馬のように速く走れません!!」
この言葉に、呂布は激怒する。
「この軟弱者共め!!」
呂布の理不尽な振る舞いに兵士たちが苛立つ、士気が低下した呂布軍は孫堅軍に飲み込まれてしまった。
呂布の敗因は『風』と己の『傲慢』さにある。
おまけに、董卓という無能も軍隊にストレスを与えている。
肉体的には元気そうだが、精神的に弱っている兵士も気持ちで負け始めてきた。
孫堅が好機と見て名乗りを上げ、呂布を挑発した。
「貴様が呂布だな!! この孫堅が戦というものを叩き込んでやるぞ!!」
呂布は孫堅の挑発に怒号を上げて突撃する。
「おのれ!! 孫堅め!! 貴様の首だけは絶対に取ってやるぞ!!」
呂布が孫堅の首を狙う中で、孫堅もまた、呂布を逃すまいと槍を構える。
ここに二人の豪傑が衝突する。
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