第10話 最上くんは頼られる
一学期最大の校内イベント──球技大会。
今年の種目は男子がサッカー、女子がソフトボールとなった。一年生から三年生の全クラスで男女それぞれ一チームずつつくり、トーナメント方式で対戦する。
すると男子チームは連戦連勝をかさね、あれよあれよという間に決勝にまで勝ち上がった。
決勝戦をひかえた昼休み、一組の教室は盛り上がっていた──
「
「蘆毛さんだってすごかったじゃん。ヒット打ってたし」
「あはは。みてたんだ。あれはたまたま当たっただけ」
「そんなことないって。蘆毛さんテニスやってるし、ボールをとらえるのが上手なんだろうね」
「そんな褒められるとテレるなー」フミカはぽりぽりと頭を掻いた。
「塚本、マジ神だあ!」と教室内で歓声があがった。
クラスで唯一のサッカー部員、塚本の席のまわりには人垣ができていた。みんなが塚本のことを
その光景をみてフミカがいった。
「塚本くん、ヒーローだね」
「うん。実際、2ゴール3アシストの大活躍だったから」
「すごーい」
フミカと最上が談笑していると、そこにクラスの男子生徒五人がやってきた。
「ごめん、最上君。ちょっといいかな?」クラスでも影が薄く大人しい林が話しかけてきた。
「え? ああ、かまわないけど。なに?」
「あの……僕たちにサッカーの守備のやり方をもっと教えてくれないかな」
やってきた五人は、試合でディフェンダーとゴールキーパーのポジションを務めていた五人だ。
「え?」最上はすこし驚いたようだった。
林がいった。
「僕たち運動オンチだし、球技大会がはじまる前はサッカーなんてイヤでたまらなかったんだけど……なんか決勝戦にいくことになって、そしたら……できれば次も勝ちたいなって」
それを聞いたフミカの顔がぱあっと明るくなった。
「すてき」とフミカがつぶやいた。
林は照れて、
「いや……あの……なんていうか、僕たちが足引っ張ってみんなに迷惑かけたくないんだ」
といった。
「迷惑だなんて。林たちは全試合完封してるじゃん」最上がいった。
「それは最上君が僕らを統率してくれたからだよ。僕たちは君の指示通りに動いただけ」
「そんなことないって」
「そんなことあるって!」いつも大人しい林が珍しく声を荒げた。「……もっと上手に動けるようになりたいんだ。最上君の指示にもっと応えられるように」
「林……」
フミカが最上の肩をとんとんと叩いた。
「え?」
最上が振り向くと、フミカが目を
「最上くん! やってあげなよ!」
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