謎のプリント2
教室へたどり着く。周囲の雰囲気からギリギリ遅刻は免れた事を知り安堵する……が、少し教室内の空気がおかしな事に気が付く。
まだ当人同士の面識があまり無いせいか、生徒同士の会話は少なく、ほぼ全てのクラスメイトが自席につき、なにかのプリントを眺めていた。
何事かと少し興味を抱きつつも、教室入ってすぐ、前から二番目の自席へ向かう。自席へたどり着くと机の上に一枚のプリントが置かれていることに気がついた。
背負ってきたリュクを机の取っ手にぶら捧げながら、クラスメイト達が見ているであろうプリントに視線を向ける。
……何だこれ?
そのプリントにはカタカナで意味の無い文章が羅列されていた。
全部で十三列、よくわからないところで文章が改行されたりもしていた。
その、よくわからない文章の下にはこうも書かれていた。
『新入生達へ。私達から贈る言葉だ。この通りにすればきっと、高校生活はうまくいくはずだ。時々は振り返りたくなることもあるだろうけど、前だけを見て』
読み取るに在校生から俺達、新入生に贈られたものだと言う事が推察できた。
席につき、本文の方をもう一度マジマジと見てみる。
ヌヨエギケカモドナカ、サロ
キリチハスウサナ、テリ
ウサナ、チケシアイレヂワエ
ズヨエラエニハヒ、チハスメサナヂ。
ヨキウニサナンキアギオロビ、チウトウエミケウケ
アニサナヒクミチツヌヒチユセウサナヂワエ
ブステナソセズンハビスト
ステキルナへ厶スモト
テテミスケ
ミオンメウト
テリウナクサタ
全く持って意味が不明である。制作者は、どんな意図があってこんな文章を書いたのだろう。
どこかの言語をカタカタに変換でもしたものなのだろうか?
理解しようとプリントを眺めていると、肩をポンポンと叩かれた。
顔を上げると、前の席の面識の無い男子生徒が俺の肩を叩いていた。
「やあ、おはよう、はじめまして。このプリント、なんだと思う?」
前の席の男子生徒は、挨拶も半ばに謎のプリントの説明を俺に求めてきた。が、当然俺にそんなことがわかるはずもない。
「ああ。おはよう。はじめまして。なんだろうな。さっぱりだよ」
両手を顔の横に広げてお手上げのポーズを取ってみると、そうだよねとその男子生徒も困ったような笑みを浮かべた。
「あっごめん、挨拶遅れちゃったね。僕は
と、爽やかな笑顔を浮かべ、葵木はこちらへ手を差し出してきた。
邪険に扱うわけにも行かず、つい先程、正門前で推理にした自己紹介と全く同じ物を披露してから葵木の手を握った。
「それにしてもこれ、なんだと思う?どんな意味があるのだろう」
葵木が眉根を寄せ首を捻る。
「下の説明文を見るに、在校生からのメッセージかなんかなんじゃないか?」
「それはそうだろうとは僕も思うよ。暗号なんじゃないかと思っていろいろ試してはみたんだけど、意味不明だね」
「暗号か……その線はあるかもな。逆から読むとか?」
少し読んでみて違う事に気がついてすぐにやめた。
この手の暗号文みたいなのが得意な人には、朝飯前なのだろうか?
得意な顔が思い浮かぶが、今この場にその人物はいない。
「それもそうか」
静寂を切り裂いて、というより教室の中の空気なんて気にも止めずと言った感じで教室の前方の扉をガラガラと力強く開く音が響き渡る。
「おー、初日から遅れてごめんねー。おーおー。みんな席に着いてて偉いねー」
入ってきたのはこのクラスの担任教師である
金縁メガネを掛けた、少し癖のありそうな中年男性である。
「じゃあ、さっそくだけど出席をとるぞ。今日初登校日だから、自分に名前を呼ばれた者は一言、なにか自己紹介をするように」
出席番号一番、葵木の名前がコールされ、爽やかな笑顔を振り撒きながら葵木が挨拶をすると、クラスの女子生徒から歓声のようなものがあがる。
次に呼ばれるのは俺だが、多少のやりづらさを覚えつつもなんとなしにやり過ごし、プリントに再度目を落とした。
そしてふと思うのだ茜さんなら_________あるいは母さんなら瞬時に解いてしまうのだろうか。と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます