ターリアを探す
野紫
第1話
「以前のお姉様はどこに行ったというのですか。この世界の歪みを共に正すと誓い合ったのをお忘れですか」
叫んでいるのは、第3王子キース殿下。
彼の糾弾を受けているのは姉第4王女のフェリメス。
「そのように正義に燃えていた自分もいたのでした」と遠くを見つめていいる。
「何を言われているのです、今王国で獣人をどう扱っているのか私に教えてくれたのは姉様ですよ。2人で正義を成すと神に誓ったではないですか」
一層熱と帯びるキース殿下の言葉に対しても
「哀れな事を考えていました。忘れなさい全ては意味の無い事なのです」とフェリメスは何もかも諦め、心を動かされる様子は無い。
王子は、その姉を一瞬睨みそして見限った「私は1人でもやりとげます」と部屋を出て行ってしまう。
それを目で追い「私も何も知らなければあのように幸せだったのでしょうか」
「その話を詳しく教えてくれませんか」突然別の男性の声。
王女は驚き当たりを見回し声の主を探す。彼は部屋の中にただ立っていて隠れてもいない。
「何者ですか」
「GMと言ってご理解いただけますか」とその男は答える。
「ええ」
その日、第4王女フェリメスは殺された。
それは事実なのだが大きな話題にはならなかった。人々の噂は小さなさざなみを起こしたがすぐに消えてう。一部の人を除き彼女に興味を示すものがすくなかったのだ。
「姉様これが世界の摂理なのですね。私は負けません1人になってもやり遂げて見せます」
ーーーーー
「強制ログアウトはやっぱりダメね。記憶の欠落が多くて詳細な情報を入手できなかった」
うさぎの耳と尻尾のある女性がダメ出しをしている。注意を受けているのは疲れやる気のなさそうな青年。
「キルは運営側の要求だった。心理的ダメージ軽減のため記憶をロストする仕様どうにかなんないのかよ」その青年がぼやく。
「この世界はほぼリアルです。自分が殺される瞬間を覚えていたら戻っても生活に支障をきたすでしょう」うさ耳少女。
「だから、消す記憶をユーザーに選択させる仕様が変だって言ってるんだよ。せっかく該当者見つけても記憶をサルベージュできなきゃ意味ないだろう。こっちの世界で聞いたって素直に応えてくれないんだから、そっちで何とかしてくれよ」
「それが出来ないから、貴方に頼んでいるのでしょ」
青年も彼女にいくら言っても答えが変わらない事は知っている。だが言わずにはいられなかったのだ。
彼がこっちに潜って4ヶ月、その間に該当者を3人見つけた。最初の1人は直接接触して訳を聞いたが協力を得られなかった。そして逃亡され、今も見つけれていない。
2人目は身辺を調べたが何も出てこず。そうしているうちに調査している者の存在に気づき行方をくらました。ここから該当者が見つけにくくなった。可能性が高い人物が消えて行ったのだ。
そしてやっと見つけた3人目は運営の指示で強制アウトさせたのに、うさ耳少女の先ほどのセリフだ。
ベッドに足を投げ出し「で、どうすんだこれから」と投げやりに青年はうさ耳少女に聞いた。まともな返事は期待していない。
「どうするって、今までと変わりなくやるのよ。地道に調査するしかない」ほら何もない。
「はぁ」青年の口から大きな溜息が出る。
「明日、この街の冒険者ギルドに行く。そこにも監視者いるんだろ」
「いないよ」あっさりと否定された。
「は!」青年は驚く「何でいないんだよ」
「監視者はいかにもな所には配置されてはいない、いるのはその前にある防具屋」
よくわからないルールだ。
翌日、2人は連れ立って防具屋に来た。
「いらっしゃい」店の店主が入ってきた2人を見て声をかけてきた。「何をお探しですか」
「緑氷結晶で出来た腕輪を探している」と青年。
途端に主人の機嫌が悪くなる「何の用だ」しかもそれを客の青年に隠そうとしていない。
「話が聞きたい」と青年。店主は諦めたように店の奥を顎でさした。
先に店主が奥に進み「何が聞きたいんだ」どさりと腰をおろす。
青年が続き「未帰還者だ」うさ耳少女もいる。
「未帰還者だと」店主が首を傾げる。未帰還者という単語そのものを知らないようだ。
「お前はここが何なのか知っているよな」青年が一応確認する。
「あぁ。ゲームの世界だってんだろう、俺も本当の人じゃなくNPCとか言うやつだってのもな」店主が投げやりに答える。
「ここで遊んでるプレイヤーが期限を過ぎても帰ってこない。それが未帰還者だ」
「居心地いいんだろう。何の苦労もしないチート能力を持ってるんだ、うらやましいよ」
そう言ったが店主は羨ましがっていない。
「そんな簡単な話じゃない。アラームはログアウトを催促して能力も制約する、プレイしても楽しくないはずだ。そもそも普通ならアラームがなる前に自分用のスレッドに移行しているはずだ、共有エリアに居続けているのがおかしんだよ」
この知識は店主にも有った。この世界で遊んでいるユーザーに記憶に制限がされていてここがゲームの世界と言う認識がない。転生者か転移者だと思っている。
ただ、この場合リアルへ影響が出てしまうまで長く遊び続けてしまうので設定した期限でプレイヤーだという記憶を戻すと同時にログアウトを促すアラームが発生する。
そして専用スレッドとはこの世界に対して影響力が大きくなったキャラクター用に切り離された世界だ。基本的に1人専用となる。対して共有エリアとは同じ世界のルールで何人ものプレイヤーが遊んでいる空間だ。
専用スレッドに移行していたら、スレッドの世界ごと停止させてログアウトさせられる。強制ログアウトと言うなの殺人は不要だ。共通エリアの場合は複数人同時にプレイしてるので強制パージが出来ない。1人ごと探し出し個別に対応する必要がある。
「俺に心当たりがないか聞いてきたのか。共通エリアで普通の生活してたら見分けつかないさ」興味も無さそうだ。
「最初からこの共有エリアだけで遊ぼうとするプレイヤーはいない。途中からチート無双をやめて意図的にスレッドに行かないようにしていると思われる。過去に見つけた3人はそうだった」
店主にやる気が無かろうが青年には関係なさそうだ。
それはうさ耳少女も同じなようで「そんな連中に心当たりない?」
「少しは俺の愚痴にも付き合ってくれや」と店主。
「強制力が働いている以上意味ないだろう。お前は俺たちに言われてた事は必ず実行する」
「そうなんだがな。これなら奴隷の首輪のほうがよっぽどいいぜ」
「できるだけ監視者の希望は通すようにと言われてるから提案してみる。ただ、それつけると行動が狭まるから、運営としては採用しないと思うな」
うさ耳少女のセリフや仕草は芝居がかっている。いかにもわざとらしい。
「美人の嫁さんと可愛い娘、それから店が絶対に潰れない保証も有る。十分な対価はしはらわれていると思うけど」
「そいつがふと意味のない事だと思ってしまわなければな、最高だったんだが」店主のぼやきは続く。
「お前が自分が生きてると思ってたんなら、それでいいじゃねえか」と青年、無責任な言いようだ。
「どっかの神様からの恩恵、とでも思っていればいいんじゃない」とううさ耳少女がなんの慰めにもなっていない事を言う。
「最初はブイブイ言わせておきながら突然大人しくなる奴だろう、ほとんどがスレッドにいった奴だと思っていたが」これが強制力だ店主は結局は強力する。
「最初のバーストだけで、後が続いていない、そんな感じの奴だ」チート無双は最初に感じれるこのゲームの楽しみだ、絶対にやっているはずだ。
「確かにちょっと早いなと感じたのは何人かいる。そいつらをリストアップすればいいのか」監視者は能力を高く割り振られている。十二分に使えるのだ。
あれとあいつがあり得るか、後こいつ、そうだ商人だがこいつもありか。
店主はブツブツ言いながら、十数人の名前を書き出した。それを「ほら」と渡す。
青年はそれを受け取り「ありがとう」と席をたった。
うさ耳少女も後に続く「今度入荷するアイアンスネーク、鱗が何枚かミスリルんなってるから見落とさないように」と部屋を出る時に一言。店主への今回の報酬だ。
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