God bless you through your acting!
『君が新入社員の田道間守くん?』
『え? ああ、いや人違いですよ。俺はたじまもりじゃありませ――』
『ねえ君うちの班に来ない? いま映画がつくってるんだけど人手が足りなくてさー。面白いよ映画づくり。一緒につくろうよ』
『映画づくりですか……。新人のくせに生意気言って申し訳ないんですけど、正直あまり良い思い出がなくて。命削ってまで俺はひとりで一体何してたんだろうって……。そう言えば先輩はどうして映画作ってるんですか?』
『そんなの決まってるじゃん。God bless you through your acting! だよ』
『actingですか? writingじゃなくて……? たしか遠藤周作がマザーテレサにもらったっていう言葉ですよねそれ。God bless you through your writingっていう』
『え……あ! そうそう。そうなの。でもactingバージョンも良くない? 本歌取りみたいでさ。演じることは生きること。字を書くときも歌うときもある意味演じている。それにどっちもリアルタイム。あ、ほら、繋がった! よかったー』
隠すつもりがあるのかないのか、無理やり理屈をでっち上げる彼女の姿はどこか愛らしいと彼は思った。きっとこの人はいつも独り言を呟きながら乗り越えてきたのだろう。
「もう、しゃっきりしてくださいよ先輩。別にメガホンがなくたっていいじゃないですか」
彼は真っ直ぐな瞳をバルコニーに向けると、初めて彼女をその名で呼ぼうと思った。
「みんなあなたの声に励まされてるんですよ、監督」
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