男女比1:99の異世界は貞操逆転していた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?~優しさを振りまき約束されたハーレムを作り上げていく~
第112話 お祈りを捧げていると心が浄化されますよ
第112話 お祈りを捧げていると心が浄化されますよ
島の観光は一時中断して部屋へ戻ることにした。
さらに予定通りミシェルさんには、変装の指輪、変音のチョーカーを返してくれないかとお願いする。
最初は拒否されたんだけど、小麦倉庫のようなトラブルが起こって欲しくないと説明して納得してくれた。彼女としても信者には、男を渇望する気持ちは忘れて欲しいのだろう。相手を思いやれる素敵な女性だ。
と、ここまでは僕の要望通りに進んだけど、メヌさんが作ってくれた氷魔法の使えるバングルだけは返却できないと言われてしまう。
戦う手段は奪っておきたいという考えなんだろうね。気持ちはわかるから、これ以上の無理は言うつもりないけど、大切な人が作ってくれた物だ。「丁寧に保管してね」とだけは伝えておく。これで雑な扱いはされないと信じてるから。
* * *
島に連れられてきてから数日が経過した。
ミシェルさんは仕事で忙しいらしく、今は付きっきりでいない。その代わり信仰心が最も高い側近を付けてくれた。
名前はベル。種族はドワーフらしく小柄だ。僕の側仕えとしてメイド服を着ていて腰には小さな水筒がある。中にはお酒が入っているらしい。
アル中じゃん……。
でもそれ以外は、すごくまともだ。メヌさんの様に隙あればセクハラをしてくることはないし、理性が蒸発して襲ってくることもない。着替えも手伝えるほど欲望のコントロールができていて、すごく落ち着く。しかも他の信徒と違って僕を神みたいな扱いはしていないのだから最高だ。ミシェルさんに選ばれて任され得たのも納得できる。
朝起きて顔を洗い着替えを済ますと、返してもらった指輪を触って姿を変える。これで女性の姿になったはずだ。さらにチョーカーも首に付けて声も変えてく。
「今日はどうされますか?」
ドアの前に立っているベルさんが予定を確認してきた。
どうしようかなぁ。島の観光は終わったので、やることはあまりない。
正直なところ暇なんだよね。
「オススメの場所はありますか?」
「礼拝堂です。一日中、お祈りを捧げていると心が浄化されますよ」
それはいやだなぁ。イマジナリー彼女なんて創るつもりはないので、この案は却下だ。
とはいえ何も思い浮かばない。気分を変えようとして窓から外を見る。
海の上に船が見えた。こちらに向かっているようだ。帆には簡略化された男根のマークがあるので、ポンチャン教の所有物だというのがわかった。
「船が来るみたいですね。積み荷はわかりますか?」
「専属の商人が乗っているので、島で手に入らない食料を中心に色んなものが積まれていますね。あと聖地巡礼している信者たちもいるかと思います」
新しい人たちも来るのか。
少し気になる。
「見に行っても良いですか?」
「島内であればイオディプス様は自由にしていただいて問題ございません」
「ベルさんの監視付きであれば、ですよね?」
「私の事は雑用係だと思ってください」
ちょっとだけ意地悪なことを言っても機嫌を損ねることはなく、丁寧に頭を下げてくれた。
静かな女性だ。騒がしい人たちばかりだっので新鮮に感じるし、そんな雰囲気が嫌いではなく、なにかと落ち着く。ミシェルさんは色々と裏を感じるような人だけど、ベルさんは信仰深い以外の特徴はない。安心できる。
「では、見に行きます」
「かしこまりました」
ドアを開けてくれたので部屋から出て廊下を歩く。
すれ違う人たちも多いんだけど、姿を変えているので僕だとは気づかない。島に着たお客さん、って扱いだ。
みんな会釈してくれるので僕も返事をしながら進む。
誰も暴走しない。嬉しくもあり、ちょっぴり寂しかった。いつのまにか男として求められるのが当然だと感じるようになっていたのかなぁ。それは良くない兆候だ。絶対に普通だと思ったらダメだ。
気持ちを新たに歩き続けて、城の玄関まで着くと馬車が待機していた。
「港まで遠いのでお乗りください」
先に歩いてドアを開けてくれた。
知らない間に手配してくれたようだ。できるメイド……!
何もかもが完璧で不便はないんだけど、ちょっとだけ物足りなさも感じてしまう。
レベッタさんの家では朝から騒がしかったよなぁ。それこそ、なぜ転生したのかと思い悩む暇が無かったぐらいだ。日本に帰りたいなんてホームシックになることもなかったのは、日々が充実していたからこそ。
もし最初に目覚めた場所がここだったなら、どうなっていたのかな?
不自由しなくても寂しかったかも。
早く会いたいなぁ。脳内にはレベッタさんたちの姿が思い浮かぶ。きっと誘拐されてしまったことで大騒ぎしていることだろう。絶対に取り戻すと言って、スカーテ王女に掴みかかっているはずだ。
相手は王族なのにね。
処刑されても不思議ではないのに。不敬罪に問われないのは、きっと僕という存在があるからだ。
彼女たちの一人でもかければ国を出て行く。
もしくは協力的な態度は取らない。
それがわかっているからこそ狼藉も不問とされている。じゃなきゃ、王族としての威厳が保てないからね。
あえて思い出さないようにしていたのに、すごく寂しくなっちゃった。
隠れて船に乗って島から脱出する?
ううん。ダメ。仮に上手くいってもその後が続かない。ポンチャン教の走力を持って、また誘拐しようとするはずだ。落とし所というのを見つけないと。
「どうされました?」
考え事をして立ち止まっていたことを不信に思ったみたい。ベルさんが首をかしげていた。
「すぐに行きます」
頭を軽く振って雑念を飛ばし、馬車に乗り込む。
今は大人しくして相手を油断させよう。無力な僕は、そんなことしかできなかった。
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