第2話 呪災 承

 押し入れの件から一夜明けた。あの声が何だったのか結局わからないが、今日から私も学校に通うことになった。


 布団から出て、祖母の作った朝食を食べた。おにぎり一つ、味噌汁に納豆、果汁100%のオレンジジュース、鮭の塩焼き


 朝食を食べ終わり、台所の流しに食器を置いたら、歯を磨いて、顔を洗って、学校の制服に着替えた。


 いつかのクリスマスに父がくれたヘアピンをつけて私は出掛けた。このヘアピン、正直あまりお気に入りじゃないけど、つけていると、父のことを思い出す。


 押し入れのことはきっとすぐに忘れるだろう。そう考えながら登校した。


 「おはよう。ここら辺で見ない子だねえ。」


 自転車に乗ったおじさんが私に声をかける。


 「あ、おはようございます。」


 登校していると後ろから声が聞こえてきた。


 「あっ。その制服。うちの学校のじゃん。君転入生?」


 私と同じくらいの背丈の少女だった。私と同じ制服を着た黒髪の子だ。


 「え、あ、はい。」


 私はあどけなく返事した。すると少女は


 「敬語じゃなくていいよ。私は御巫千草(みかなぎちぐさ)。よろしくね。」


 「御巫さん、よろしく。私は安堂ユリ。」


 御巫はよくしゃべる子だった。私に対して色々なことを聞いてきた。


 でも、家族のことについては聞いてこなった。私からしたら触れないで欲しいところだけど、なぜか御巫さんは家族の話についてはしなかった。


 私が転校した 祝橋第四中学校 は一学年に数人しかいない学校だった。学年に一人もいない年もあると言う。


 「東京から引っ越してきました。安堂ユリです。よろしくお願いします。」


 「よろしくな。」


 私のクラスには先生を入れた五人がいた。これから、馴染めるかな……。







 丁度その日、事件は起きた。







 遠吠え村砂霧林道配達業殺害事件


 遠吠え村に古くからある砂霧林道にて、配達業の男性 佐々木博文氏(38) が林道の端にて血を流して倒れているところを警察に発見された。


 佐々木氏は発見時、既に死亡しており、遺体には四十九箇所もの切り傷、刺し傷が見つかった。付近には佐々木氏のものと見られる自転車が落ちており、警察は殺人事件として調査を進めている。


 「佐々木さん。通学路でいつも元気に子供たちに挨拶をしていて、仕事熱心な人でしたね。最近はこの村も物騒になってきましたね。お父さん。」


 祖母は縁側にいた祖父にお茶を出しながら言う。


 「元から物騒な村だっただろう。ほら、よく言われただろう。この村の言い伝え。」


 「あーっ。ありましたね。もうすっかり忘れてましたよ。でも、それが本当として何で今になって……。」


 「……。さあな。」


 


 

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