あなたへ
近藤美澄
第1話 オレンジ色のフクロウ
「オカザキヤ…?」
「そう、そのオカザキヤに行くと届けてくれるんだって」
「何を?」
「手紙を、」
口に物を入れながら話す彼女は、私の友人だ。
とても仲がよく付き合いも長い。
信用もしている。
だが、彼女が言っている事を、
今はまだ理解出来ずにいた。
「手紙を、って彼に?」
「そう。届けてくれる鳥がいるんだってオレンジ色したフクロウが。」
理解したいと思っていた彼女の発言は、全く理解出来ないものへと変わった。
「まぁ、幸せの青い鳥的な感じよ」
困惑している私に、
「何言ってんだ、こいつって顔してるね」
そう言いながら彼女は食べ続けている。
「いや、そうゆうわけじゃ…」
『ない』とは、言えなかった。私は本当に「何言ってんだ」と思っていたからだ。
ナポリタンを食べながら、彼女はさらっと言った。
「確かめたいなら聞けばいいのよ直接本人に」
「ごめん。だって、彼はもう…」
「そう。そうゆう人に対して想いを届けてくれる魔女がいるんだってあの森に」
そうゆう人と、言葉を変えて使う彼女のそうゆう所を私はとても好きだなと改めて思った。
私への気遣いだからだ。
彼女が言っているあの森とは、今まで何人もの人間が神隠しに遭い、失踪していると噂のある有名な森。子供の頃から行ってはいけないと何度も親に注意されてきた。
「そこに行けば、手紙を届けてくれるの?」
「そう。」
「オレンジの鳥が?」
「うん。」
「え、待ってどうゆうこと?」
「いや、鳥じゃなくて、フクロウ。それ間違えるとめちゃくちゃ怒られるから気をつけてね。で、魔女が代わりに書いた手紙をフクロウが届けてくれるの。そのお店の名前がオカザキヤ」
「魔女?あの森に魔女がいるの?」
いるよ。と彼女はさも当然かの様に言った。
「でも神隠しのあう森だよね?あそこって」
色々と困惑している私は、とりあえず頭で理解できることから聞いてみる事にした。
「心が邪悪な人間じゃなきゃ大丈夫よ、私が行った時にそう言われたの」
「え、行ったことあるの!?」
「うん。子供の頃。どうしてもおばあちゃんに会いたくて」
彼女の顔は真剣だった。
「お店が開くのは満月の夜だけ。想いを魔女が代筆してフクロウが相手に届ける。心の綺麗な人にだけ新月に返事が届くって魔女が言っていた」
続けて彼女は、
「私は届けてもらって、返事ももらえて嬉しかったの。嬉しいと言うより安心した。だから行ってみたら良いと思う。返事が返ってくるから今の悩みがスッキリすると思う」と言った。
まだ話を理解しきれていないが、嘘でこんなオカルトちっくな話を彼女は口にしない。
自分が変な子だと思われる可能性だってある。
きっと私を信用してくれているから話してくれたんだろうと感じ、私は嬉しかった。
「ありがとう。教えてくれて。」
「いいえ〜、あっ、もし魔女に会ったらさ私は元気だって伝えといてくれないかな」
「うん。分かった。伝えておく。」
「ありがとう」
お互い何度も振り返り、手も振ってバイバイした。
本当に魔女がいるのなら、私は会ってみたい。
彼にどうしても確かめたい事があるからだ。
私は家に帰る途中のバスの中で、満月がいつ見られるのか調べていた。
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