(10)

 制服やプロテクターがビミョ〜に違うので……そこに居る警官達は3つの別のチームの人達が入り混じってるらしいのは判る。

 一番、重装備の人達が、モスグリーンの警官と言うより軍人か何かに見える制服の人達をブチのめしていて……それも、あたし達、そっちのけで……一番、警官っぽい制服の一団が、それを呆然と見付けていた。

「見ろ、小官が言った通りだ。都境警備隊が『外』のテロリストと内通して、奴らを、このシン日本首都に招き入れてるんだ‼」

「ち……違う……。裏切り者は奴らだ……特務機動隊が……」

 続いて銃声。

「殺すな。力の差を見せ付けるだけでいい」

 強化装甲服パワードスーツの女が、そう言った時には……一番警官っぽい紺色の制服のチームの何人かが地面に倒れていた。

「えっ?」

 更に、その次の瞬間……同じく紺色の制服のチームの1人……一番偉そうなの……の首元に、2本の刃物が交差クロスして突き付けられていた。

 1つは黒い虎男の持つ大きな鉈。もう1つは銀色の狼男の手首から生えた……多分だけど、狼男の毛が変化した刃。

 2人が、いつ、動いたのか……判らなかった。

「ええっと……撤退を勧告する」

 強化装甲服パワードスーツの女の声。

「な……何を……言って……」

「あんたが力を使っても、それが効く前に、自分の喉笛をカッ切られる事は判ってる筈だ。部下を撤退させろ、そして、あんたらの上司には、あんたらが一番面倒事を被らなくて済みそうな報告をしろ」

「ふ……ふざけ……る……な……」

「真面目に言ってるんだ。あたしらが大阪に入って何かやっても、あんたの勤め先が消えてなくなるような程のとんでもない真似が出来る訳がない。バレさえしなければ、あんたの生活や収入は安泰だ。でも、あたしらの事を上に報告すれば、あんたらも余計な仕事を押し付けられる羽目になるんじゃねえのか?」

「あ……それも……そうだ……」

「ま……待って下さい」

 流石に別の警官から抗議の声。

「ふざけ……」

 一番、重装備のチームの1人が、あたし達に殴りかかろうとした時……。

 光……。

 目がくらむ程の……。

 そして、一番重装備のチームの警官達は、手足を痙攣させながら地面に倒れていた。

「都境警備隊と特務機動隊の『准玉葉』はテロリストとの交戦で殉職された。都境警備隊と特務機動隊はテロリストの一味の精神操作能力者により操られ同士打ち。我々が来た時には、両チームの死体だけしか無く、検問所の監視カメラの録画データも破壊されていた。いいな?」

「はい」

「はい」

「はい」

 ……。

 …………。

 ……………………。

「あの……」

 あたしは、強化装甲服パワードスーツの女に質問。

「何?」

「あなたにも……精神操作能力が……」

「ねえよ。向こうの精神操作能力者が、ビビってるせいで能力を使えなかっただけだ。精神操作能力の弱点もう1つ。精神操作能力者本人が自分が操作対象より優位に立ってると思ってる場合は効き目が強まるが、その逆の場合は効き目が弱まる。その精神操作能力者が、生まれ付きの能力持ちで体系的な訓練を受けてない場合は特にな」

「ふにゃっ?」

 狼男と虎男の人質になってた警官の首筋に注射器が刺さる。

「あ……あの……こんなに馬鹿馬鹿しい方法で……」

「とりあえず入ったぞ……大阪に……」

 何故か、紺色の制服の警官達は……電波が届いてない遠隔操作ロボットのように……つっ立ったままだった。

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