(6)

「救助対象とすれ違うまで、あと、どれ位ですか? じゃ、こっちに運転の制御を渡して下さい。俺に考えが有ります」

 「椅子の人」の男の方は、誰かと……多分、このトラックの運転手……と通信。

 そして、薄型のVRゴーグルを被り、手にはジョイスティック。

「何する気だ?」

 そう訊いたのは、沙也加ちゃんのお兄さん。

「とりあえず、ハッチが開いても、俺がいいって言うまで出るな。あと、全員、何かに掴まってて……救助対象に連絡、追って来てる白バイとなるべく距離を取れって……」

 そして、車ごと横方向への加速。

「何だ、おい?」

 揺れ……。

 その最中に、あたし達が入ってるコンテナのハッチが開き……いや、何、この大開きは?

 そして……外から、何か変な音……男の悲鳴……。

「出ていいぞ」

 その声と共に、銀色の狼男に変身した沙也加ちゃんのお兄さんが外に飛び出て……。

「おい、誰かッ‼……消火器持って来てくれッ‼」

 ……えっ?

「みんな……誰かさんのやり方に毒され過ぎだよ……」

 「椅子の人」達の内、眼鏡の女の方が、疲れたような声で、そう言った。

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