私  その5

 ついに見つけた。

 平井富夫という男の妻で、名前は郁子。

 妻のやることすべてが気に入らない、神経に障る。だから――殺す。

 典型的な、そして不純な動機だ。そんなに妻が憎いのなら、離婚すればいいのだ。

 だが、その不純な動機も、私が譲り受けた瞬間から、純粋なものへと昇華される。

 人を殺したい。

 この純粋な動機により、私は平井郁子を殺す。

 明日からじっくりと準備に取りかかろう。

 こんな機会はまたとあるまい。

 準備の段階から楽しもう。

 あわてないことだ。

 ゆっくりだ。

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