猟師のクマ鍋記録ー食欲のなくなる話

2023年6月7日に

和田正雪氏が「オカルト寄りの食にまつわるコワイ話」を

募集しておられた。


和田正雪氏は

最近新しく知って好きになった作家さんである。

どの作品も非常に面白い。

次の展開がどうなるのか予想が付かなくてよい。

読むのが楽しみで仕方がない。


和田正雪氏に

「食欲のなくなる話」として、話したことが始まり。

説明不足として近状にも書いたのだが

見た目や匂い、味については何も言ってなかった。


補足だらけのエピソードなので

それらも踏まえてメモ的に残しておこう。


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縁あって猟師の振舞う「クマ鍋」を食べた。

ジビエ料理として人気が出る遥か前のことだ。


街中にクマが出るならニュースにもなるが、

猟師が仕事でケモノを捕らえるのは当たり前。

害獣指定ならば、よほどのことがない限り

話題にすらならない。


季節はいつだったか覚えていない。

寒かった記憶はあるのだが、だいたい山の中は

年中寒く感じるもの。

その上、あまりに衝撃的な体験で、詳細な記憶は

吹っ飛んでしまった。


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仕事仲間の友達に猟師がおり、遊びに行くという。

一緒に行くか?と聞かれ、面白そうなので

ついていくことにした。


山の中にある小さいが、立派な山小屋だった。

数人で遊びにいったのだが、

余裕で泊まれたくらいだった。


猟師は陽気で豪快な印象。

猟師のイメージ通り、ヒゲのおっちゃんだった。


夜 嵐だったような気がする。

妙に風が強かったような気がする。


我々一行が訪れる前日か、前々日くらいに

クマを撃ったという。


自宅となっている山小屋の隣に

獲物関連のものがおいてある

少し小さい小屋があった。


話の流れで

その日の夜は

撃ったクマを鍋にして

振舞ってくれるということになった。


小屋の中を見せてもらった。

元が何か判る状態の肉が

吊るされている。

肉は床の無い部分、土がむき出しの場所に

吊るされ、土の部分は変色していた。


リアルなスプラッタ現場は

こんな状態だろうか。

野生動物の匂いと、血の匂いが

凄まじい。

これだけで十分過ぎる経験だが

今思うと大したことではなかった。


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さて クマ鍋だ。

猟師が ざっくり手早く食べる通りの鍋だ。


とにかく 灰汁が延々と出ている。

灰色というより、

嵐の中の黒っぽい雲のような色。

通常の灰汁よりも

若干重く感じるくらいの灰汁。


湯気と共に立ち昇る匂いが

『THE野生!』

なかなか迫力のある匂いだった。


クマの肉は

硬かった。

ちょっと噛み切れるものでもなく、

咀嚼するのも大変だった。

キッチン用のハサミで切ろうとしたが

かなり苦戦した。

食感としても

『THE野生!』

ある程度、肉を味わって

ビールで流し込む。


『THE野生!』の鍋を囲み

盛り上がっていた。


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追加のクマ肉が足され、

交代で灰汁を取り、

鍋をかき混ぜて・・・



一一人が言った。



「骨付きソーセージ美味いね」



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鍋にはクマの肉しか入っていない。


多少野菜は入れたが

断じて他は入っていない。


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鍋の煮立つ音だけが聞こえていた。


入れていないはずの

骨付きソーセージ。


「ちょっとそれ 出してみろ」


猟師に言われて

食べ掛けが口から出てくる処を

皆で見守り・・・


最初に見えたのは

間違いなく 人の爪先だった。





野太い絶叫が夜の山小屋に響き渡る。


猟師のおっちゃんが

あり得ない声で叫んでいた。


鍋をかき混ぜていた猟師のおっちゃん。


腰を抜かして鍋から後ずさる。


指さす鍋をのぞき込むと

人の指が数本、ぷかり。


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右手か左手か

同じ方の手の指が数本あったり。


推定だが

2~3人が

このクマに食べられていたようで。



腕や足、頭は残すんじゃなかったか。

先に食べるのは腹からじゃなかったか。


人が喰われる現場を見た人の話を

思い出しながら、鍋に浮かぶ指を見ていた。


声も出ない。

呆然と見ていた。


クマ肉と共に

指も仲良く煮えていた。


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売り物にならない肉は

適当に血抜きして、

適当に煮るか

焼くかして食べると

猟師は言った。


その日のクマ鍋は

「猟師の適当クッキング」だった。


人を喰ったクマの鍋になるとは

猟師のおっちゃんも予想しておらず。


知らぬこととはいえ、

間接的とはいえど

人を食べてしまった・・・


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近隣で クマが人を襲うような話も

聞かなかったそうなので

たぶん行方不明扱いになるのだろう。


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和田正雪氏に話した後に追加で説明を書いた後、

一緒にクマ鍋を食べた人物に

ちょっと聞いてみた。


それで骨付きソーセージだと思った話が出てきた。


これは全く覚えていなかったのだが

その人物は良く覚えていた。


「だって 食ったの俺だもん」


彼は肉が大好きで、骨付きソーセージも大好きだ。

はがねのメンタルに違いない。


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これは 近年人気の「ジビエ料理」のクマ肉ではない。

「ジビエ料理」で提供される野生動物の肉は

「ニンゲンが食べる為の肉」として

かなり食べやすい状態になっている。

決して、今回の話に出てくるような状態ではない。


言ってしまうと、この話の鍋は

絶対に「鍋料理」でも「ジビエ料理」でもない。


野生動物の肉も、加熱しとけばなんとかなる。

ただそれだけの無茶な内容だ。


「ジビエ料理」は

珍しいの料理なので、

安心して食べて欲しい。


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人を喰ってしまった、かも知れないので

もしかしたら

「よくも食べたな!」とかもしれないと

心の準備もしていたが

現在に至るまで一度も出ていない。

一応 食べたことは怒っていないようだ。










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