寺の離れ。





久しい人からの連絡があった。


某所、

山奥の寺の副住職からだ。

離れと東屋。

看板というか 表札というか。

新しくしたいという。




ほんの少し前。


「PCやスマホは苦手」


そう言っていた副住職。



今やリモート会議ツールを

使いこなしている。

ITも進化するが

僧侶も進化の波に乗っていたようだ。




表札ー

看板というと「商い」的な印象なので

「表札」としよう。


風雨に曝され

随分と風格が出てしまった様だ。


寺の表札。


モニター超しにも

状態が判る。


前回 表札を作ってから

5年くらいと思っていた。


「7年です」


笑顔で返された。



看板作りを生業としているわけではない。

縁あって知り合った副住職が

毛筆と造形 

両方手掛ける人に

頼みたいと依頼してくれたのが最初だ。


試作した 掛け軸を

住職も気に入ってくれた。

細々とした品を作るたび

いつも喜んでくれた。



「真摯に遊びを」


「渋い色で 元気よく」


「落ち着きのある 気楽な」



相も変わらずの表現。

仕上がりの注文をする住職も含め。

こちらも迷わずに

作業を進める。

最終的なコーティングは

東屋の修繕に来ていた職人さんが

仕上げてくれることになっている。




「手ぶらで来ておくれ」


筆と墨は 寺にある。

寺で常に使い

こなれた道具だ。


道具に

あまりこだわりはないのだ。

リクエストにあった菓子を

調達していくのみ。



寺の人々と

職人さんたちと。

肌寒い中の

山の空気は

季節を感じるには十分 心地よく。

持ち寄った様々な菓子と

熱いお茶を満喫するのは

楽しいひと時だ。



「お迎えが来る前に

 また頼もう」


笑う住職は誰よりも強壮だろうに。



次に皆と会うのは

モニター超しになる予定。


春すぎて

夏を迎える前には

修繕された離れと東屋に

新しい表札が

そっとつく。

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