第16話 全力逃走
シズルがロウソクの騎士と接敵する少し前。
ラナが騎士を見つけたとき、様々な感情がラナの心の中を駆け回っていた。
憎悪、憤怒、殺意そして、恐怖。
ここまで心をかき乱されてしまえば、当然抑えられるはずもなく。
「!? しまっ……」
ラナは自分の内側から漏れ出そうとしている業火に気が付くのに遅れてしまった。
ラナの中の業火が暴れだす。
「ラナ!?まさかアナタの……」
ラナの左眼の穴から炎が噴き出す。それにより、ロウソクの騎士が隠れていたラナ達に気付く。
「……まずいミつかってしまった! ラナ、ここはニげるべき」
「でも……!」
「ラナ! ココロもカラダもそのジョウタイではタタカえない!」
「ニげて、オちツかせて、せめてバンゼンのジョウタイでオいかけてくるテキをゲイゲキする! わずかでもショウリツをアげなきゃトウキタチはイきノコれない!」
「ぐうぅ……分かりました。」
メテットがラナを説得している間に、ロウソク頭の騎士は体を分裂させて、片方がラナ達に向かって走り出していた。
「あいつ、ブンレツデキるの⁉ ラナイソいで! ハヤくマドに…! 〝ヒラけ!〟」
「は、はい……!?」
その時だった。メテットの窓をラナが通ろうとしたとき、噴き出る炎が窓に燃え移り、瞬く間に焼き尽くしてしまった。
「メテットの……マドが……!?」
(しまった。キヅくべきだった! ラナはマモノだ。そのカラダはマリョクでできてる)
(このホノオは、マリョクもヤくトクシュなホノオだったんだ!)
メテットの窓もエネルギーを窓に変える魔法で出来ている。その魔法を焼かれてしまい、窓が壊されてしまったのだ。
騎士がどんどん迫る。
ラナは何か起きたのかわからず慌てていた。
「メテットさん!? 一体何が……窓を閉じたのですか!?」
「ラナ、すまない。このジョウタイではマドでのイドウがフカノウ。……ラナ、キミはハシってニげて……メメメテットがああアしドめを……」
「そんなこと、絶対にやりません!!! 絶対に!!」
ラナは燃えている手のひらをかざして集中する。
(何回か燃えたんだ。痛みは慣れた!それに制御の要領はつかんできてる…!)
ラナの左手を燃やしている炎が掌へと集まる。
「ラナ……!?ホノオをアヤツって……!?」
「火よ〝纏まりなさい〟……!」
ラナがそういうと掌に集まっていた炎はピンポン玉くらいの小さな火球へと変わる。
メテットは驚きを隠せない。
「そんな。それは……」
(それは、マホウじゃないか……!)
そんなメテットはお構いなしにラナは火球を走ってきている騎士に向ける。
「火よ。〝起こせ〟!」
小さな火球は騎士にめがけて飛んでいく。
しかし、火球は騎士にあたる前に剣によって防がれてしまった。
蠟でできた剣は少し溶けただけで、切れ味もさほど変わっていなさそうだった。
「あっダメです。逃げましょう!」
「イけそうなフンイキだったのに!!」
メテットとラナは走って逃げ出す。
「しかし、いずれは追いつかれる……! そうだ!」
「メテットさん! 窓を! あいつに使わせましょう!」
「……あいつに!?」
ロウソク頭の騎士からの逃亡を続けて時間が経つ。やはりというべきか、騎士はラナ達にかなり迫ってきていた。
しかし、それはラナもメテットも承知の上だった。
(ここです!)
ラナは後ろを向き騎士めがけて今度はソフトボール球の火球を放つ。
(威力は度外視、あくまで目くらまし……拡散するように!)
「火よ。〝散らせ!〟」
火球は派手に燃える。しかしその火球は今度は騎士にあたることなく消える。
しかし、騎士の目の前は炎で覆われ、騎士は一瞬前の景色が見えなくなった。
「〝ヒラけ〟」
火を切り払い、その先で騎士が見た物は空間に開いた窓。
次の瞬間、騎士はメテットの作った窓の中に入ってしまう。そしてその出口はラナ達の進行方向とは逆方向に作られている。
騎士はラナ達とは逆方向に加速しながら飛んでいく。
「やった! うまくいきました!」
「ああ、オクのホウにデグチのマドをオいたからかなりジカンをカセげるはず。ラナ、イマのうちにカラダのホノオケせる?」
「抑えることはできますがまた収めるのは難しそうです。すいません……」
「ふむ。やはりスベてうまくはいかない」
(しかし、ラナはタシかにマホウをツカった。カラダにヤドしているゴウカのノロいのマホウを)
(……ありえない。マホウをかけられたモノがそのマホウをアツカウなんて…。タニンのマリョクをジブンのマリョクにカえるマホウ。もしやマリョクのセイシツもジブンのものとできるのか?)
(もしかしてラナがネラわれたのはこのマホウのためなのか?)
メテットが考え事をしていると少し遠くから、
バリーンッ
何かが割れる音がした。
「……な! あいつ、メテットのマドをウチガワからワった!」
「え! じゃあ……」
ラナは後ろを振り返る。
遠いが確かに騎士が窓から脱出し、こちらに向かって走ってきていた。
(……あいつからは逃げられない。なら……)
それを見てラナはある決心をした。
「メテットさん逃げるのはやめです。あるところで迎え撃ちましょう。」
メテットはすぐさま否定する。
「ムカえウつ!? ダメ、トウキタチにはろくなコウゲキシュダンがない!」
「いえ、ある場所にいけば、今起きている問題がまるっと解決します。実は今その場所に向かっているのです」
メテットは目を丸くする。
「そうなのか!? そんなツゴウのいいバショが!」
「はい。そこにつけばワタシ達の勝率は高まります。あっあそこです! あそこの井戸に入ります!」
「――イド? ミズでラナのホノオをケすのか?」
「迎え撃つって言ったじゃないですか。それにあの井戸はとっくに枯れてます。今あの井戸は別の用途で使われているんです。」
枯れた井戸に使い道があるのだろうか。メテットは疑問に思う。
「ヨウト? 一体どんな?」
「――酒蔵への通り道です。怠惰亭の、魔力を宿したお酒が眠る場所への」
その時怠惰亭の方向で大きな爆発音が聞こえた。
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