第9話 選択
「……星から脱出する? ……へぇー?」
シズルはラナが話すスケールの大きさに面くらっていた。
「まぁ、そうなりますよね……」
「……規模が吹っ飛んでるわね。アナタ普通にすごいやつなの?」
「ギャクにこのようなことしかできない。セントウだとこのホシのセイメイタイにカナラずマける」
「まぁ、なるほど。確かにそれをすれば敵からも完全に逃げられるかもね?ラナは追われることを気にしなくてもいいってこと」
(その敵もさすがに星をまたいで追って来るってこともないでしょうし)
「はい。ワタシの炎の問題もそこに行けば治るかもしれないらしいです」
「カクヤクはできないが、カノウセイはある。このジョウタイがキュウヘンするともカンガえにくい。ホシからのリダツはトウキがシコウするナカでイチバンアンゼンなホウホウ」
「安全ねぇ……」
シズルはラナに向き直り、
「確かにラナはそれでおびえなくても済むかもしれないわね。でも、ラナの心はそれを許せるの?」
「それは……認めることはできないです。だから、いま悩んでいます。あいつらは許せないです。でも、メテットさんの方法なら誰も傷付きません。シズルさんが傷つくよりは……ましです。シズルさんはワタシの恩人です。もし復讐をせずとも全てが丸く収まるのなら……」
シズルはラナの話を聞いてきょとんとした顔をする。
「私が? ……ラナ、貴方は本当に優しいのね」
シズルはラナの目線に合わせて
「気にする必要ないわよ。これは私の復讐でもあるのだから」
「え。」
「さんざん言ってたでしょ。私も焼かれたし私にとって今一番大事なラナが苦しめられてるし恨まない理由がないのよ。だから私はね、元から自分一人でもそいつら探し出して一匹残らず串刺しにするつもりでいたわ」
それからシズルは少し困った顔をして、
「だからごめんね? 私は星からの脱出はちょっと考えられないわ。もしラナがそれを選ぶなら、私はここに残る。まぁ、私としてはラナと一緒に復讐する方が嬉しいかな。寂しくないし」
「……そうなんですね」
「これほどリフジンなこともない。おタガいカオもシらないのにイッポウテキにウラまれるなんて」
「いや、理不尽じゃない。これは因果応報よ」
「……それもそう」
「それでどうする? ここに残るか、一緒に行くか、メテットと星から脱出か」
「ワタシは……」
〈元から自分一人でもそいつら探し出して一匹残らず串刺しにするつもりでいたわ〉
(自分一人でも……。シズルさんはそれほどの覚悟を持っていたんだ)
(ワタシ一人ではそんなことできない。でも、シズルさんの様な強い人と一緒ならできるかもしれない)
(情けない話だ。誰かがいないと、ワタシは何も成すことが出来ないなんて)
(でも)
ラナは顔を上げて言った。
「シズルさんと一緒に行きたいです。でも、決してシズルさんの足手まといにはなりません」
(何も出来ないからって、何もしてこなかったわけじゃない!)
「ラナ?」
メテットはラナの様子が変わったことに気がついた。
「……シズルさん、貴方はここから外に出たことがないのですよね?」
「そうね」
「なのでワタシが父と共に生きてきた今までの知識と世界のあちこちにある拠点や拠点内の物資を渡します。それで私の復讐を手伝っていただけないでしょうか?」
(ワタシが父から教えてもらった全てを使ってシズルさんを助けて、シズルさんに復讐をしてもらう)
(情けないのは最初から。せめて精一杯やってやる)
(これがワタシの復讐だ!)
何かが変わったラナを見てシズルはにやりと笑う。
「……へぇ。それはとてもありがたいわ。いくら私でも、何もわからない場所で不眠不休とはいかないからね。休める場所があるのはありがたいわ。いいわよ」
「ありがとうございます。ではメテットさん!」
ラナはメテットの方に向き直る。
「……トウキにナニか?」
「観光中とか言っていましたよね。可能性を探しに来たとも」
「コウテイ」
「では、 “黄金の夜明け”に興味はございませんか?」
メテットの表情が一変する。
「! それは」
(やっぱり、メテットさんは戦闘力はない、なのにこの星に滞在する理由があるとしたら、 “夜明け”しかない!)
「ワタシの父はその“黄金の夜明け”を何十年もかけて調べていました」
「なんだと!? まさかラナ、アナタはシっているのか!」
「ワタシ自身はそこまで知りません。途中から父の調査に加わったのでそこまで聞かされていないのです。でも、情報の場所は分かります」
「……キョテンのバショ」
「その場所に案内します。そこにある父が集めてきた資料をお渡しします。だから、貴方の力も貸していただけないでしょうか!」
「……ふむ、タイカとして、トウキのマドをショモウか。イドウシュダンがホしいと」
(メテットさんはワタシの復讐のためには重要な力だ。なんとしても……!)
ラナはメテットに対してこわばった表情を向けていた。
(このコ、ジブンのイマできることをサガしてメテットとまでコウショウをするとは、ヒョウジョウにデてるとかまだアマさがある)
「リョウショウ、アナタのジョウケンをのみましょう」
(だけど、メテットはそういうアマさ、キラいじゃない)
メテットの了承を聞いてラナは思わずガッツポーズした。
「やった!」
「あら、どんどん快適になるわね。助かるわ~」
「……トウキはベツにシズルとコウショウしたオボえはないゾ」
「またそれか! もうなんなら釘千本渡そうか!?」
「あんなキケンブツイッポンイジョウもいるわけないだろキサマ」
シズルとメテットの視線がバチバチとぶつかり、良い雰囲気から一転、一触即発の状態になる。
「あ、あの! ワタシとシズルさんはその…なんていうか同志? みたいなものなので」
「そうよ。私も送りなさいよ。戦闘力ないっつってたし私の近くにいたらまぁ守ってやるわよ~?」
「まさか。ナガれクギでうっかりトウキはハカイされるだろう。」
「そんなへましないわよ。あんたこそうっかり私を大海原に放り出すんじゃないの?」
「それはいいカンガえ」
一触即発の空気が抜けない。その様子を見てラナは慌て始める。
「えーちょっと!? せっかくまとまったのに!? なんでここで喧嘩するんです!?」
真剣に慌て始めるラナを見て二人共ニヤッと笑い
「ふっジョウダン」
「そうね。他愛ない冗談よ。喧嘩やめるから。さっ行きましょラナ?」
「えっ?」
「マドはイマからヒラキにイく。フナツキバアトに」
「あら、仕事早いわね。気に入ったわ。いい性格もしてるしね。」
メテットとシズルの二人は船着き場に向かって進む。
切り替えの早い二人をみて、
「えー!? なんなんですかもー!」
わけのわからないラナはぷりぷり怒っていた。
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