悪役令嬢アリシア七歳
大きな戦艦の中。
ある戦艦の一室の作戦室に眩い金髪の長い髪を高い位置に結び輝く碧眼の恐ろしく整った顔立ちをした少女が入ってきた。
「アリシア少佐、楽にすると良い。公の場ではない故な」
「ハッ」
私は敬礼をしてから大きな机に置いてあるチェスを見た。
チェスには一コマ一コマが国旗や軍艦になっており私はこのチェスで遊んでいる人物を無言で見つめた。
大佐は団の為には個を切り捨てるお方だ。
私はあれから乙女ゲームのフラグを回避するためにずっと悪魔だってバレないようにしながら鍛錬を積み重ねて戦場にずっと出てきたけどツライ......この生活が。
おっと早く右翼の状態を報告しなければ。
「今、右翼は負傷者1020未満、犠牲者209程でございます。先程敵兵からマナ石を用いた爆弾を設置され少々戦艦が壊れてしまい復旧中で2時間ほど戦闘不可能状態です」
私が報告すると大佐の目が鋭くなった。
大佐はため息を吐くと目の前のチェスの駒を一歩、動かした。
「アリシア少佐はこの機に少しは学ぶと良い。あと本国から援軍が来るようだ」
嗚呼、可哀想に。
援軍に選ばれた人はもう未来は明るくない。
そんな私を気にせず大佐は更に言う。
「丁度、少佐の手持ちが少なかったね?いくら2000でも厳しいだろう。少し多めに配分しとくよ。あとね、この戦争に王族も参加することになった」
え!?王族?
こんな危険な所に来るの?
乙女ゲームでも王族は攻略キャラだったからこういう所に来ないはずだけど!?
もしかして私がシナリオに抗って動いたから?
「アリシア少佐、驚いているところ悪いが王族には三人王子が居るだろう?」
「えぇ」
「だからね、コレは王子の希望らしく少佐の所に第一王子、俺の所に第二王子、中佐の所に第三王子って配分するらしいよ。多分もう現地についてるんじゃないかな?」
「whats」
「『whats』じゃなくてね、君は第一王子をなんとしても守ってほしいんだよ。どうせ第二からはスペアだから一人いればいいしね」
はぁー今まで必死に避けるために軍人になった意味ないじゃんか。
しかも王子みたいなイイトコ坊っちゃんが技術もなしに来たら即死よ。
私も今七歳だけど一日も休まず訓練してきたのよ?
悩んでも仕方ないか。
私は礼服に手を当ててまた敬礼を取る。
「分かりました、大佐。有り難くお引き受けしましょう」
「じゃ、よろしく〜」
私は踵を返して作戦室を出た。
「やっぱりアリシア、君は僕の常識をどこまでも崩すんだね」
そう言いながら誰もいない作戦室の中大佐はチェスの駒を一つ倒した。
その倒された駒の後ろにはこう字が彫ってあった――『アリシア・エディス・フィアシア』と......
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