第55話産業問題~大臣side~
宰相から注意喚起を受けた。
ついに陛下が知ってしまったのか。
大層ご立腹だと言われた。
あの方の事だ。
顔を真っ赤にして怒り狂っていたに違いない。癇癪を起こして花瓶等を壊していないだけマシだろう。
陛下が語るのは理想論だ。
政治の世界では綺麗事で済まされない時の方が多い。
それが外交となると、特に。
子供の遊び場とは訳が違う。
『僕を外交交渉の場に立たせろ!』
外交に失敗した前例がある。無理だ。
『大臣達の処理した書類も僕にまわせ!!』
そんな効率の悪い事を誰ができる。
ただでさえ、仕事が遅れがちなのだ。
国王になったからといって何でもできる訳ではない。
独裁国家ではないのだ。
その事を理解しているのだろうか?
自国の政治家達と会話が成立しない陛下に外交は無理だ。
『僕ならもっと有利に交渉できる!!!』
あの自信は何処から来るのか……。
はぁ……頭痛い。
外交で勝利をおさめるには事前準備が必要だ。
我が国と他国の関係、相手の国の情報や民意など調べるべき事は山ほどある。
陛下はその事前調査を怠りがちだ。
それ故、相手国に足元を見られ、不利な条件を突きつけられる事が多々あった。
外交は情報戦でもある。
情報がなければ勝てるものも勝てなくなる。
そして、外交に失敗した場合どうなるか分からない筈もないだろう。
陛下は馬鹿では無い。
しかし、自分の目で見たものしか信じず、耳で聞いた言葉しか聞かない為、物事の本質を見誤る事がある。それは致命的な欠点だった。
陛下が即位してから、我が国は急激に衰退の一途を辿っている。
先代の時は良かった。
国内も安定し、平和な国であった。
しかし、陛下が即位した途端、国は荒れた。
原因は解っている。
それでも公爵一家に戻って来てくれと頼むことも出来ない状態だ。
いつか痛い目をみれば、あの性根を叩き直す事ができると思い放置していたが、もう限界かもしれない。
これ以上悪化する前に手を打とう。
「それならば、婚姻政策が良いのではないですか?」
「婚姻?あの陛下をか?」
「えぇ。結婚すれば少しは大人しくなってくれるかもしれません。それに陛下には後ろ盾が必要です」
「確かに……」
この案は即採用となった。
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