第26話六年前~ウジェーヌ王妃side~

『何故、ブリリアント嬢はユリウスの見舞いに来ないのだ!謹慎とは言ったが来客は許可している筈だ!!』


 陛下、ブリリアント嬢から婚約者として見舞い品と手紙が届いています。相思相愛の恋人ではないのですよ。ましてや、王宮にくるなど社交界のお喋りな雀達スピーカー婦人に何を言われるか分かったものではありません。


『婚約者の生母の心配はないのか!? シュゼットとの後ろ盾になるのは契約違反だと言われた! これ以上無理を通すつもりならユリウスとブリリアント嬢との婚約も白紙にすると脅してきたぞ!!』


 当然のことです。婚約自体、無理を通したのですから。その上、生母の面倒までみろとまで言ったのです。図々しいと捉えられても致し方ありません。


『ルキウスの奴は娘の婚約者候補は他にもいると抜かしてきた!ブリリアント嬢の方もユリウスとの婚約に乗り気でないと侍従達から聞いた。王妃、ブリリアント嬢とユリウスの仲を深める事はできないだろうか?結婚するにしても夫婦仲が悪いとなると貴族派が煩い』


 私にどうしろと仰るのかしら。

 そもそも政略結婚なのです。国王夫妻が相思相愛の仲でいる必要はありません。


「はぁ……」


 溜息が止まりません。

 陛下の不安は二人の結婚後にあるのでしょう。ユリウス王子がブリリアント嬢を「妻」として扱わないかもしれないという不安。陛下が望まれるのは帝国の皇族の血を王家に入れること。「白い結婚」など論外なのでしょう。

 これに関してはどうしようも出来ません。

 そもそも、あの二人が恋仲になれるかどうかさえ疑問です。何しろ、お互いの事をよく思っていないのは傍目からも一目瞭然。いいえ、ブリリアント嬢は上手く隠していますから王子が一方的にブリリアント嬢を毛嫌いしているように見えるのです。思うに、ユリウス王子がブリリアント嬢に歩み寄らないのが原因でしょう。男性側から女性側に対して歩み寄る姿勢を見せれば何か変わるかもしれませんが、まだ子供の王子では難しいのでしょうね。

 ブリリアント嬢はともかく、このまま放置すればユリウス王子のブリリアント嬢に対する態度は悪化して取り返しのつかない事態に陥るかもしれない。今はまだ子供と言う事で大目に見られている部分があるというのに頭の痛いこと。


 頭の痛い問題と言えば王子の叔父の件。

 シャイン公爵のアラン・モントール元伯爵の処遇をユリウス王子とシュゼット側妃が知ったらどうなるのでしょうか。側妃は間違いなく取り乱すでしょう。いいえ、その前に、彼の境遇を他の貴族達が知ればどうなるのでしょうか?

 今は他国の王侯貴族しか知らない事ですが、ユリウス王子は母親似。当然、モントール元伯爵とも似てます。


 元伯爵が鉱山で毎日犯され、その様子を魔道具で撮影され闇ルートで他国に売りさばかれている事を陛下はまだ御存知ではいらっしゃらない。元伯爵は精神が崩壊し、今では嬉々として男性を受け入れている始末。


 他人の空似で、果たして通じるでしょうか?




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