第21話七年前~ブリリアントside~


 鉱山送りになったモントール元伯爵は、初日から乱暴に陵辱されて男達の専属の「夜のお仕事」にまわされていました。絶世の美青年は屈辱に歪んだ顔もまた美しく、嗜虐趣味に目覚めた男が何人も続出していたそうです。

 また、責任者から「良い薬」として渡された媚薬に溺れ、昼夜問わず狂ったように腰を振り続けるモントール元伯爵はすっかり淫乱な体に作り変えられていたそうで、その艶やかな美貌と快楽に染まりきった表情は見る者を魅了したとか。王侯貴族の裏で密かに流通し始めた魔道具。それに映し出された世にも美しい青年の淫乱な姿は男も女も関係なく虜にしたようで、彼の映像に莫大な金をつぎ込む貴族まで出てくるのですから世も末です。元伯爵は毎日の「お仕事」を受けて悦ぶ日々を過ごしているそうで、天職だったようです。

 

 そう言えば、気になっていた事がありました。

 

「お父様、お聞きしたいのですが」


「なんだい?」


「モントール伯爵家は爵位も領地も王家に没収されたと聞きましたが、その場合、シュゼット側妃とユリウス王子はどうなるのですか?」


「ユリウス王子の場合は王妃殿下の猶子になっているし、父親の国王陛下もいるから大丈夫だろう。シュゼット側妃に関しては、恐らく当面の間は父親が後見人になるだろう。ただ、騎士爵の身分だからね。大したことはできない。いや、後宮では後見人とは言えないだろうな。仮にも王太子の生母だ。他の妃達のように臣下に下賜する訳にもいかない難しいところだな」


「シュゼット側妃の父君が爵位を断わったと聞いたのですが、本当なのですか?」


「ああ、本当だ。『なんの功績も挙げていない自分が受け取れるものではありません』と言って辞退したらしい。兄上も今頃頭をかかえているだろうな。王太子の生母に後見人が居ない前代未聞の事態に」


 どうやら噂は本物のようです。

 それにしても爵位を断わるなんて気骨のある方ですね。何故、あのような息子ができたのか謎です。


「元々は騎士として名を上げていた人物だ」


「そうなのですか?」


「ああ、今はダイヤモンド鉱山でこの国は潤っているが、この国は数十年前まで貧しい国だったんだよ。これという産業もなく、資源も碌になくてね」


「歴史で習いましたわ。確か、鉱山が発見される前までは軍国として各国に派遣されていたのでしょう?」


「ん~~……それは少し違うかな」


「違うのですか?」


「間違ってはいない。ただ、正しくもない。軍を派遣していたのは事実だが、正確には『傭兵の派遣』だ」


「どういう事でしょう?」


「分かり易く言うと、この国の正規軍を他国に『傭兵』という形で貸し出して、それで外貨を稼いでいたという訳だよ。シュゼット側妃の父親は元は平民出身だ。軍に入り、『他国での戦い』で多大なる功績を挙げて騎士爵を受け取っている。怪我で退役してからも暫くの間は講師として若手を指導していたと聞いた事がある。彼としては軍人としてのプライドがあるのだろうね」


「娘の七光りで出世はしたく無い、ということですか」


「まあ、そういうことだ」


 成る程、シュゼット側妃の父君はかなりの頑固者のようですね。

 ……しかし。

 そうなりますと、シュゼット側妃の後宮での立場が益々難しくなりますね。このままではいずれ彼女自身が潰れかねません。


「まさか、私達に側妃の後見人になって欲しいと言い出すんじゃないかしら?あの国王バカ


 お母様、流石にそれはあり得ないと思いますわ。

 私達とシュゼット側妃の繋がりなどユリウス王子の生母というだけ。王妃殿下の猶子になった以上は生母とはいえ、そこまでの面倒をみる必要はありません。それに、私達母娘に危害を加えようとしたのは側妃の実弟。それを踏まえてもあり得ません。


「あの兄上国王なら十分考えられるな」


 お父様!?

 混乱する頭の中で必死に考えをまとめようとしますが、上手くいきません。その間も二人はシュゼット側妃の後見人の打診が王家からきても断りを入れる相談をしていました。


 数日後、王家からの使者を丁重に追い返すお父様とお母様の姿がありました。お二人とも強いですわ。


 

 

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