番外1
これは、少し時間が巻き戻ってのお話である。
「ああああああああああ」
「ドウシタの『運び屋』。トリガーを連れて帰ってカラ変よ?」
「ああああああああああ」
「こいつもドクターに見せた方がいいんじゃないか?」
警官コスプレ女が机に突っ伏している。机の高さはそこまで高今のではなく、ソファはあるのだが何故か床に膝をついて何かを思い出したかのようにぺしぺしと叩いている。
「ああああああああああ」
「全く、男の誘いを振ったからって落ち込む必要ないだろ」
「誘い?アア、この任務のセイで遊べなかったの」
「トリガーさえ負けてなければ遊べてたのに…………っ!」
「上手くいけば2人手に入ってたんだろ?そりゃトリガーが悪い」
そう、ここは誘拐犯の一味が使っているアジト。金さえ払えば使えるという闇の居所である。
「シケタ依頼で集まったと思っタラこんなことになるなンテ」
「まあ、暴れられただけマシだろ?むしろトリガーが負けた事が信じられないんだが、どんな怪力でやられた?」
「分からない、でも顔に靴の跡と拳の跡があったからそれでなされたと思う」
机に伏していた顔を横に向けコスプレ女は言う。
「ただ、彼女の腕に銃で撃たれた跡があった」
「つまり何だ、銃を持った『異能』持ちが居たのか?」
「撃ったのは男よ」
「男が?何カの間違いジャないの?」
「追いかけてたのは男とナツメ・ユキジ。脳筋の逆転負けファイターに銃を扱える技術は無いわ」
コスプレ女は見たままのことを伝える。
そもそも、この場にいる女達は誘拐に失敗した際にミスをした部下を始末しつつ状況に合わせて男も連れ去って公安相手に足止めというなの暴力の宴を開催する。
レイの元に応援が来なかった理由である。ここにいる若干言語が怪しい女とヤンキー風味な女も宴の参加者である。
コスプレ女の役割は戦地に戦力を瞬間移動でばら撒く事。適切な戦地に彼女は戦力を送り、そして回収する事をメインにしている。
「トリガーめ、何で失敗するのよ〜!」
ナツメだけならトリガーだけで完封できるだろう。イレギュラーが起きたせいでヤれる事がヤれなくなった。
「脳筋に勝てる相手か?距離だって十分とってただろ?」
「男の方が銃を使ってたのよ。しかも私の変装を1発で見破った」
「ソウなの?一見したら分かラナいと思うけど」
「めっちゃ理論並べられた上に間違いだったら身体差し出すって言われた」
「理論」
「身体ヲ差し出す」
「しかも顔に傷だらけ。さらに私がトリガーを連れていく時に銃を向けられた。あれで場慣れしてない訳ないわ」
「なんか、羨ましいと思ったけど罠にしか聞こえないよな?」
「ソレ、男に変装しテルでは?」
「かもしれないけどさぁ、わざわざ顔に傷のペイント入れるかしら?それに、顔に傷だらけの男がそもそもの発端よ」
誘拐が失敗したとしか聞いていない彼女達、だからこそレイの情報については知らなかった。
「つまリ、傷さえ除ケバ貞操観念が低くヤれそうな男と?」
「多分、私が本物の警官だったら抱かせてくれるほどの真摯さはあった」
「ふーん?ま、結局逃しちまったから意味ないけどな!ざまーみやがれ!」
「次に依頼がブッキングしても貴女の『オトモダチ』は転移させないでいようかしら?」
「ダメだぞ!こいつらが居なきゃ、あたい死ぬよ!?」
そう言ってヤンキー女は小さなドローンを抱える。
「だから人間の友達作りなさいよ。人脈も大切よ?」
「ふん、『オトモダチ』が弱みを握ってくれるからそんなもんいらないもん!」
「本性が見えテルわよ」
ドローンを大事そうに抱きしめて若干の幼児対抗を見せたヤンキー女にやはりどこかイントネーションがおかしい言語で、されど東洋人の風貌をした女は呆れた顔をしている。呆れ顔する人間が多い。
「さて、話は変わるけどお小遣いくれないかしら?新しい服が欲しいの」
「ふーん、それは輸送代金って事?」
「取れるものはこっそり取ったわ。もうこの誘拐組織もおしまいに近いし、逃げるなら今じゃない?」
「ソレはそう。あれだけ暴レタら目をつケラれたでしょうね」
「今なら安く済ますわよ?」
瞬間移動の『異能』は決して安くない。ほぼノーリスクで高跳び出来る『異能』はとても貴重である。
報酬の金は前払いで貰った。メインの報酬は誘拐した男のつまみ食いだったが、それは達成出来ないようなので彼女達にとって残る意味もない。
「乗ッた。でもトリガーはどウスるの?」
「目が覚めたら取引を持ちかけてみるわ」
この日、『4人』の指名手配犯は気づかれない内にとある誘拐組織から姿を消した。
『トリガー』、『スターキャリアー』、『飛翔機雷』、『似非撫子』と呼ばれた4人の指名手配犯である。
どう言った経緯で雇われたのかは分からない。だが、許されざる人間達と言うことだけは忘れてはならない。
とある誘拐組織が崩壊する2日前の話であった。
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