これが全事件の真相

轟翔が最後の事件について語り始める。

「俺はな。アイツの口から両親を殺したことを聞き出す必要があった。それを警察に見せつけることで、無能さも知らしめてやる必要があったからな。だからよプロジェクションマッピングだっけ?あれの勉強をしてよ。ホントやったことねぇのにスポンジのように吸収できてよ。復讐ってよ、人を変えるっていうけどマジなんだって思ったぜ」

「お陰で私は同僚に鶴田啓一殺しで捕まりそうになったわよ」

「まぁ、狙いだったんだけどよ。あの管理官にアッサリ見破られて、拍子抜けだったぜ。しかも今殺したことまで見破られたんだからすぐに鶴田邸から逃げなくちゃならなくてよ。チェーンソーで切断した頭だけ持ち逃げするのが精一杯だったがまぁそれもドロドロに溶かしてやったから良いんだけどな」

そこまで静かに聞いていた山波さんが轟翔の胸ぐらを掴んだ。

「テメェはそんなことのために大和を利用したのか。あぁ。轟の想い人だった人を散々貶めてよ。アイツが首なしライダー、ふざけんじゃねぇよ」

「姉さんの想い人?」

「えぇ、神崎くんはね。照美の初恋相手だったの。報われることはなかったけどね。神崎くんが好きな人は、宇宙のお母さんだったから」

「なんで、姉さんより年増なんだよ。もっとメチャクチャに貶めてやるべきだったな。だって、そいつが姉ちゃんと付き合ってくれてたら姉ちゃんがあんな目に遭う可能性もなかったかも知れねぇしな。テメェこそ。ふざけんじゃねぇぞ。そもそもテメェのクソババアが若い男のエキスに色狂いするからじゃねぇか」

パチーン。すごい音が鳴り響いてびっくりしたが楓が会心の平手打ちを轟翔にかましていた。

「アンタみたいなガキに想いあってた2人を侮辱する資格なんてない。あの2人は相思相愛だった。卒業したら結婚の約束もしてた。宇宙のお母さんと神崎くんは、お互いを心底想い合う素敵な恋人同士だった。だから照美も自分の気持ちを神崎くんに告げることはせずに懐の中にしまい込んでた。それが照美の神崎くんへの優しさであり、応援する気持ちだった。貴方は神崎くんのことは殺してない。違う貴方のせいで神崎くんは首なしライダーの汚名を着せられ2度殺されたのよ。貴方はクズで殺戮を楽しむ殺人鬼よ。恥を知りなさい」

こんなに言われても怯むそぶりすらなく楓のことを罵る轟翔。

「うっせえよ。そもそもテメェがもっと姉さんのこと気にかけてくれてたら良かったんだ。そうすれば、あんな目に遭うことも無かったんだ。親友、ふざけんじゃねぇよ。苦しい時に支えてねぇテメェなんかに言われる筋合いねぇんだよ」

「楓、もうやめとけ。轟と違ってコイツには心が感じられねぇ。復讐に取り憑かれて心を無くししまったんだよ」

「へっ。わかった口聞くんじゃねえよ。復讐に取り憑かれた?違うな復讐することこそが天命だと知っただけだ」

「もう良いわ」

楓も心底呆れたようだ。だが山南さんと楓が離れたのが不味かった。

「やっと離れてくれたか。そもそもさ。ここまで自分の犯行を認める犯人がさ。このあと何しようとしてると思う?」

「まさか」

「刑事さんは思い至ったみたいだね」

バサっとライダースーツを脱ぐと身体にダイナマイトを巻き付けていた。全員の顔がみるみる青ざめていく。

「いいねぇ。その顔だよ。何度見ても恐怖を浮かべた人間の顔は興奮するねぇ」

「そんなことをすれば貴方たちを守ってくれていたアケミママも殺すことになるわよ。構わないの?」

「仕方ないよな。そもそも、庇いきれてなかった時点でその女の役目ってもう用済みじゃね。じゃあ、道連れで一緒に死ぬのも仕方ねぇよな」

アケミさんは轟翔の冷めた目から発せられる言葉に涙を浮かべる。

「どうしてなの翔くん。私は私は貴方のためを思って」

「俺のため?偽善者として、己の心を満たしてただけだろ。じゃあサヨナラだ」

ダイナマイトに火をつけようとするが一向に火を付けられない。

「はっなんだよ。なんなんだよ。離せよ。お前。くそっ」

しかし轟翔を止めているものなどいない。

「おい、お前何すんだよ。くっ苦しい。やっやめて」

ジタバタとしたあとパタリと動きが止まった。轟翔に近寄り脈を見る。

「亡くなってます」

全員が一体何が起こったんだという驚愕の表情を浮かべる。

その時、楓の携帯が鳴る。楓は表示を見るとスピーカーに変えた。

「はい、もしもし」

「久根総合病院の橘です。轟照美さんが先程息を引き取られました。毎日来ていただいていたので一応連絡をさせてもらいました」

「うっうっ。わざわざ、御連絡ありがとうございます」

電話を切り泣き崩れる楓。

「轟のやつ、弟にこれ以上犯行を行わせないために一緒に連れてったのかも知れねぇな」

「弟想いのテルミちゃんならそうかもしれないわね」

「違うだろ。俺が心底惚れてた優しい照美のことだ。みんなを守りたかったんだろ。だから無くなる直前に弟の犯行を霊体になってでも止めたかったんだろう」

そんなことがあっていいわけがない。そもそも被疑者が原因不明で亡くなりましたなんて報告が通るのだろうか。頭を悩ませる美和であった。報告書はすんなりと通った。そして気になる轟翔の死因なんだが首を圧迫されたことによる窒息死だった。その首にはしっかりと人の手形がついていたらしい。だけどその場にいたどの人間とも手形は一致しなかった。1人を除いて、その手形は轟照美と一致したそうだ。警察は、轟照美が最後の力を振り絞り、弟のこれ以上の犯行を食い止めるために絞殺したと結論付けた。時間的なことを考えた場合でも轟翔が亡くなった後に轟照美も亡くなっていることからなんの問題もないだろうとのことだ。こうして、出雲美和の怪奇特別捜査課としての初めての事件は解決を迎えた。

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