優秀なメイドと軍司令官は、なんだかんだで協力している。

ウメコ

第一幕

第1話 とある国のお話です。

 漆黒に輝く西洋城の、一部屋。

いかにも高そうなスーツを着た若い男は、つい先程注がれたシャトーブリヤンの入ったワイングラスを眺めていた。

そして、彼は視線を横にいる女へと移動させる。

彼は口を開く。

「ね、レイカちゃん、一緒に乾杯しよ〜」

『レイカちゃん』と呼ばれたメイドは、ため息をついた。

「…………私はメイドです。立場をわきまえてください」

なんでよ〜と言いたげな顔で、彼は一人食事を始めた。


「ねぇねぇ、レイカちゃん絶対髪巻いたら似合うよ〜! 」

まあストレートで一つにまとめるのも可愛いけどさぁ……と彼は言った。

「……普通に面倒です。色々と時間の無駄になる気がしますし、第一私には似合わないので」

でもなぁ……と言いながら、男はステーキを口に運ぶ。

「っていうか、今日は疲れたなぁ……報告書の中でも軍のおえらいさんが頑固でさぁ……」

レイカは、はぁ……と呟く。

「あなただって、十分な『おえらいさん』ですよね」

「レイカちゃん相変わらず強すぎ……。そんなこと分かってるんだけど、やっぱり疲労回復したいな。よし、レイカちゃん癒やして〜」

メイドは、何を言っているんだ……という眼差しで彼を凝視していた。

「……冗談はやめていただけないですかね、シューベルト様」

彼は微笑んだ。

「ねぇ、お願いだから『ご主人様』って呼んでよ〜! 別にどっちでも良いでしょ〜? これでも一応立場的には僕が上だからね! 」

「…………国に訴えますよ」

何言ってんのレイカちゃん……とでも言いたげな顔で、バルレック・シューベルトは夜景を眺めた。

もちろん、何の変哲のない鬱蒼とした森林が広がっている。

「それにしても、最近は変わった魔術師が多くて困るね。こっちは頑張って作戦考えてるのに、攻撃が効かないとか意味分かんないんだけど! 」

「……どうゆうことですか? 魔術というものは必ず地水火風空ちすいかふうくうのどれかの属性に当てはまりますよね。もしかしたら……って、どうされたんですか? 」

彼は頬を膨らませた。

「だってだって、いっつもレイカちゃん仕事絡みの話にしか食らいついてこないも〜ん! 普通に話してるとスルーされるし……」


その後もほぼ、いや完全に一歩的に会話をしていた(ちょっと)怪しい男。

彼は、このストーリック王国軍の司令官である優秀な人材だ。

近年、この国は敵対する様々な国から攻め込まれていて、常にこの国のどこかで戦いをしているとのこと。

軍隊の人数にも限界があるので、どこに何人配置するのかを指示しているのだ。

そんなシューベルトは、とあるメイドを愛している……らしい。(ちなみにメイドは全力拒否している)

その理由には彼の恋愛的感情も含まれているのだろうが、最大の理由が一つある。


彼女が、『天才』だからだ。

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