第22話

「今回は軽い偵察だったのかな?」


俺を狙った刺客だったら、俺が1人でノコノコ目の前に現れた時点で仕掛けて来るかと思ったけど。あっさり引いて行った。


慎重なのか、それとも俺以外が標的なのか。

疾風迅雷もかなり有名なパーティーなので、

疾風迅雷の誰かが狙われている可能性もある。


もしくは未開拓領域の開拓自体の失敗が目的とか。


かなり目立つ試みだし。妨害工作が行われるのは当然だろうし。


まぁ、とにかく何か仕掛けてくると考えて警戒しておいた方が良いだろう……いや待てよ。もしかして警戒させる事が目的だったり?


外部からの妨害に警戒すると作業の進みが遅くなるのは確実だし。


いつ行われるか分からない妨害を警戒し続けるのは精神的にかなり辛い。


なので、精神的にこちらを消耗させるのが今回接触してきた目的なんじゃ?


行けそうだったら襲撃を仕掛けてくる可能性もあるし。

思ってる以上に厄介かも。

フェンリルをけしかければこんなに悩む必要はないけど。

明確な証拠無しにこちらから攻撃を仕掛けるのも問題だからな。

少し様子をみるしかない。


「さて村予定地に戻って作業の続きをするか。さっきのやつらに関しては疾風迅雷の人達に報告して改めて対応を考えよう。フェンリルも知らせてくれてありがとうね。って魔法陣!?」


村予定地に帰ろうと思った瞬間、俺の真横に魔法陣が出現する。まさか俺が気を抜く瞬間を待っていたのか!

いや、おかしいフェンリルが魔法陣に対して何も反応しない。

もしかして攻撃じゃない?


その考えを肯定するように魔法陣の上にスレイさんが現れた。


「本物ですよね?」


「はい。魔導師である事を証明する懐中時計には帰還の翼の転移地点として登録できるように特殊な仕掛けが施されてますので」


そんな仕掛けまであるのかよこの懐中時計。


「こういった王都から離れた位置にいる魔導師を呼び戻すのに必要ですからね。魔導師の中には邪魔が入らない辺境で魔法の研究を続けている人もいるので」


「まぁ、文句は言いませんけど。どうして転移してきたんですか?開拓がどこまで進んでいるか確認にでも来たんですか?」


「それもなくは無いですけど。本題はシャン殿に国王陛下より『2級魔導師として戦争に参戦せよ』との勅令がくだりましたので、それをお伝えにまいりました」


戦争ね。魔導師になった以上仕方の無い事だけど。

反乱の鎮圧では無く戦争と言うことは他国からの侵略があったと言うことか。

こっちから侵略戦争を仕掛けると言う話は聞いてないし。

国内の貴族が反旗を翻した場合は反乱の鎮圧と言うはず。


それにしても他国から侵略戦争を仕掛けられる領地ねぇ……すっごい嫌な予感がするんだけど。


「もしかしなくてもフィレーム領ですか?戦争が起きているのって」


「大正解です」


俺とスレイさんで他国の工作員の基地を襲撃したりって事があったからもしかしてとは思ったけど。


「フィレーム領等滅んでしまえば良いのでは?……とは言えませんよね……」


「はい。いくら治める貴族が無能だとしても大事な王国の領土です。他国に奪われる訳にはいきませんので」


「ですよね〜。ところで件のフィレーム家の人間たちは何をやっているんですか?辺境伯としての責務を全うしていないんですか?」


俺に参戦の勅命が下ったと言うことはフィレーム家の戦力だけでは他国の軍を撃退する事すら出来なかったってことでしょ。

まじで何やってるの?


「敵はフィレーム家に対して相当対策してきたようですよ?ご自慢の蒼炎も細い泡の集合体のような壁で完璧に対処されてしまったとの事です」


「蒼炎で有名になってるんだから対策されることぐらい考えて策をいくつも用意しておくべきだと思うんですけどね」


どれだけ強くてもそれ一辺倒なら、対策されるのは当然だろう。


「その通りなのですが、グダグダ文句を言っている時間は御座いません。既に領都まで攻め込まれていると言う話ですので」


「分かりました。それで、帰りはどうするんです?また日数かけてここまで走って移動して来なきゃ行けないんですか?」


「転移地点が未登録の帰還の翼があるのでこの場所を登録すれば帰りは一瞬です」


それなら今開拓している場所で登録すればもっと楽になると思ったけど。

そんな事する時間も勿体ないか。

それにしても、一応希少品なはずの帰還の翼を大判振舞だな。

まぁ、貴重品だからって使うべきタイミングですら使うのを渋るよりかは断然マシだけど。


カレア達への伝言をフェンリルに任せて俺とスレイさんは転移地点がフィレーム領の領都の近くに設定されている帰還の翼を使い転移した。


「うわぁ〜壁が崩されて中に侵入されちゃってんじゃん」


領都近くの平原に転移すると。

既に領都を守る壁に穴が開けられて敵国の兵士が中になだれ込んでいる光景が目に入ってきた。

領都はほとんど陥落している状態と言っても良いだろう。


「中に侵入している兵は私が排除します。シャン殿は味方への誤爆を考えなくていい領都の外にいる兵の殲滅をお願いします」


周りの被害を考えなくていいのは確かに楽だけど。


余裕で万はいるだろう兵を1人で殲滅しろって中々鬼畜なこと言ってくれるね?


まぁ、やって見せるけど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読んでいただきありがとうございます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る