第11話 進路
今日は休みだ。
流石に毎日あの
……まあソアラは、今日も騎士さん達相手に絶賛訓練中ではあるが。
村をふらふら散策していると、偶然イモ兄妹に出くわした。
挨拶をして暫く雑談を続けていると、ベニイモが急に意味不明な事を聞いて来る。
「師匠とソアラさんって、やっぱり付き合ったりしてるんですか?」
「……いや、そんな訳ないだろ」
俺とソアラはまだ8歳だ。
何をどう考えたら、付き合ってるという発想になるのだろうか?
まあ俺のトータル年齢はもう40を越えてはいるが……
8歳児に恋に落ちるロリ趣味はない。
「ほら!やっぱり違うじゃないか!」
何故か俺の返答に、タロイモが勝ち誇る。
ひょっとして賭けでもしてたんだろうか?
だとしたら、ベニイモは随分分の悪い方にかけたものである。
というかまだ10歳なのに、人の恋話とか少しマセぎだぞ。
「うーん、お似合いのカップルだと思うだけどなぁ」
「どこがだよ?」
あんな怪獣みたいな奴とお似合いとか言われても困るわ。
「二人の稽古とか、見ててすっごくカッコいいですし」
「カッコいい?」
「はい!達人同士のやり取りみたいで!スッゴク!」
達人同士のやり取りねぇ……
ソアラが滅茶苦茶して来るから、俺はただ必死に食らいついてる感じなんだが?
こいつらには、それが達人ぽく見えるのか。
まあ仮にそうだったとしても、恋愛関係なくね?
「俺も早く師匠達みたいに強くなりてぇなぁ」
「目指せ、後2年でレベル30!そして試験をスルー!」
イモ兄妹は将来騎士になるべく、王都にある騎士学校への入学を目指していた。
入学するには色々な試験をパスする必要があるのだが、上級職に覚醒している場合はそれが免除される。
――この二人は脳筋寄りなので、レベルで苦手な筆記試験をパスする目論見の様だった。
「まあ今のペースなら大丈夫だろう」
彼らには経験値アップのスキルはないが、それでもこのままのペースなら、余裕で達成できるはず。
寧ろ心配なのは、入った後勉強で苦労するのではないかという点だ。
騎士には教養が必須だからな。
覚醒でテストをすっ飛ばせても、必要な知識が身に付く訳じゃない以上、きっと学校でしごかれまくる事だろう。
因みに、俺は騎士学校などのクラス毎の専門校へは行けない。
市民だからな。
その手の学校に入る為の最低条件は、クラスで全て決まってしまうのだ。
まあ才能至上主義ではないが、クラスによる影響がでかいので、それは仕方のない事だとは思うが。
「師匠は12になったら、大師匠と一緒に特殊な訓練を受けに王都に行くんですよね?」
大師匠ってのは、ソアラの事だ。
彼女は12才になったら、勇者専用の訓練を受けに王都に行く事になっている。
実はそれについてこないかと、少し前から騎士さん達に俺も誘われていた。
どうやら俺が第二のゾーン・バルター――王国最強の称号を持つ市民――になる程の天才と上に報告しているらしく。
そのせいで、俺も勇者と一緒に連れて来いと命令されている様だった。
まあソアラとは違い俺は強制じゃないので、当然その話は断り続けているが。
「行く訳ねぇだろ。俺は市民だぞ?」
「何言ってんですか?8歳で騎士さんと互角以上に戦える師匠に、クラスなんて物は関係ありませんよ」
「そうです!あの日俺は、師匠の強さにほれ込みました!共に国の平和のために戦いましょう!」
無手の年下に木刀で殴りかかってきた奴に、国の平和とか言われてもなぁ……
「タロイモ。ベニイモ。重要なのは才能じゃない。何がしたいか、だ。お前達はクラスが盗賊や僧侶だったら、喜んで騎士の夢を諦めるのか?」
まあこの二人が盗賊や僧侶ってのは全く似合わないが、それは置いといてだ。
「それは……」
「俺は父さんの跡を継いで、立派なモーモ農家になりたいんだ。他の事に才能があるからって、それを諦めたくはない」
正確には、俺の夢は何もせずだらだら過ごす事なんだが……
まあ、流石に最低限働かないと生きていけないからな。
そのための親の跡継ぎである。
志が余りにも低すぎて親不孝に聞こえるかもしれないが、するからにはちゃんとついで働く気ではあるから安心して欲しい。
「うう……滅茶苦茶凄いのに、もったいないです。折角の最強カップルが」
カップル言うな。
まあベニイモには、訂正しても無駄そうなのでスルーしておく。
「俺の分は、お前達が頑張ってくれればいい。優秀な騎士になって、ソアラの事を支えてやってくれ。期待しているぞ」
「「分かりました!師匠の分も頑張ります!」」
いい返事だ。
まあぶっちゃけ、ソアラに関しては一人で無双しそうなので支えはいらなさそうではあるが。
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