第15話 本物の諜報部員
昨日、入浴中にグレン団長が騎士団規則と書類と共に置いておいてくれていた朝食用のパンやリンゴをいただいて部屋を出た。
結局、規則や書類はついでで食堂だとまた注目されるだろうから朝食を持ってきてくれたということだろう。
この気遣いはきっと出世する!いやしている、この上なく出世している。
部屋を出てすぐ正面にカールがいてびっくりした。なんだか思いつめた顔していて顔色も悪い。「おはよーどうしたのすごい顔してるけど?治安警察に捕まるよ!」
「治安警察いねぇし捕まらねぇし!てか治安警察って何だ?」聞かれたのでカールみたいな人捕まえる組織だよって説明しておいた。
カールは更に深刻な表情と声で「昨日あれからロゼットについて質問攻めにあったんだ」まぁ私と一緒ですわねロゼロジャ呼びを卒業されててよかった。
「私、スパイだと思われてるのかな?」
「いや、スパイは俺だ!」
「はっ?」何言ってるのだろう?
「中学を出て王国に来たんだ、親でもない人と父親という親子設定で王国の侵略政策とか兵力と武力を探るために来ていた」
「それで騎士団に?」
「騎士団は関係ない、トレバスがあんなことになって偽装親子も解散で腕に覚えがあったから食ってくために騎士団に入った。だが俺の戸籍は王国生まれの王国育ちになっていた」
そっか私が大失態を招いたのか!
騎士団に隠していた出自が露わになってしまったのね!
これヤバイよね、軍法会議で銃殺か!一生重労働か?「ごめんなさい、でも謝って済む問題じゃないね、どうなるの?銃殺?奴隷戸籍に格下げ?」
「お前の方がよっぽど怪しいぞ!治安警察に銃殺とか奴隷戸籍とかねぇよ!」
私も同罪か?すぐに話しを切り上げて逃走ルートを確保しないと。
カールは続けた「それで全部を上層部に話してお咎めなしになったんだ、その代わり父親役の男は探さないといけない、騎士団の任務のついでに見つけたら申告する程度だから実質お咎めなしなんだ。」ん、よかったねって言っていいってこと?
「朝までかかって最後は涙でぐちゃぐちゃになっちまった」そっかカッコ悪いとこまで話してくれてありがとう。
「それでこれを機にして俺たち付き合わないか?」
なんだお前は?
徹夜で頭やられてるな?
「頭はしっかりしてるぞ今も!」口に出ていたらしい、失態だ。
「ロゼットさん!」階段方面からグレン団長が上がってきて声をかけられた。
「団長おはようございます、昨日は大変ありがとうございました」
「時間になってもいらっしゃらないので失礼ですがまだ寝ていたのかもと伺いました」
「失礼いたしました、すぐ行きます!ではカール新人団員!休養しっかりとって正常に物事を判断するように、ここはセレアシャトン連合王国である!」
「上官か?俺は正常だって!」カールに敬礼して急いでグレン団長の方へ駆け寄って返答は聞かないことにした。
返事って聞かせてもらえるだよなぁとか後方で聞こえるけど知らん。
グレン団長と執務室へ向かう途中「私もカールの事情は聞きました。ここは彼とは距離を取った方が賢明だと思いますね」
「そうですよね!スパイ疑惑同士でつるんでいたらで治安警察にしょっぴかれて銃殺とか強制重労働とか考えただけで怖いです」
「まだ騎士団規則読んでないですね」
「すみません、罰則規定はのところはまだです」罰則なんだろう?この感じだと銃殺や強制重労働はなさそうだから魔物のエサとか?囮の役目とか?
午前中は団長に来客があり秘匿の事項でもないので追い出されることなく執務室の隅で騎士団規則をじっくり読めた。
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