20センチの距離
颯風 こゆき
第1話 告白
「諒!俺、お前が好きだ!」
顔から火が吹きそうな程、熱い。声も少し震えてる気がする。
でも、今がチャンスな気がするんだ。
ずっと、ずっと想ってきた気持ちを伝えたい。
恥ずかしくて目を見て言えなかったけど、諒ならわかってくれるはず。
1時間前・・・・
「瑞稀、そろそろ帰ろう」
食べ終わったトレーを片手に大男が席を立つ。
「そ、そうだな」
その後を小柄な男が席を立ち、着いて行く。
俺、
隣りに立つ幼馴染の大男に!
見上げた先には俺と20センチも身長差がある
168センチの俺に対し、諒は188センチもあり、特にスポーツもしていないのに、身長に比例してか体つきもがっしりだ。
俺と諒は幼稚園からの幼馴染で、家も隣り近所。
今はこんな体格をしているが、昔の諒は俺より小さく女の子と間違えられるほど、か弱く可愛かった。
俺はまんまとその可愛さに惚れてしまったのだが、小学校高学年になる頃には同じ背丈になり、中学で越され始め、高校に上がった頃には見上げるほどの背丈になっていた。
それでも、俺にはずっと可愛い諒のままで、もう気付けば12年も片思いだ。
来年は高3・・もしかしたら、大学は別々になるかも知れないという焦りから、ここ最近、ずっと悩みに悩んで告白する事にした。
諒からしたらいつものお出かけなんだろうが、俺は今日、この日!告白するためにデートプランを考えたのだ。
映画を見て、ショッピングして、諒の好きなスイーツ店に行って・・・ここまでは順調だ。
この後、ちょっと雰囲気のある公園に行って、そこで告る!
「り、諒。ちょっとだけ寄り道しないか?」
「別に構わないが、どこに行くんだ?」
「少し歩いた所に、大きな公園あるだろ?そこに行かないか?」
「え?何故に公園?」
眉を顰める諒を見て、俯き、グッと拳を握る。
わかる!男同士で公園なんて、不似合いの場所だよな!でも、そこはカップルで有名な公園なんだ!
口に出したい気持ちをグッと堪えて、少し引き攣った笑顔で顔を上げる。
「な、なんか、ネットで人気のある公園なんだよ。一度、見ておきたいと思ってさ」
「・・・わかった。ほら、行くぞ」
あまり納得していないような顔をするが、それでも俺の行きたい場所を否定せず、歩き出す。
いつもそうだ。諒は優しい。なんだかんだ言っても、俺の気持ちを汲んでくれて優先してくれる。
そういう所が居心地いいし、好きだ。
しばらくの間、緊張をほぐす様にたわいも無い話をしながら公園と向かう。
それでも公園に近づけば近づくほど、自分が何を話しているのかわからなくなっていく。
「り、諒。あの噴水の前のベンチに座ろう」
「・・・・わかった」
ぎこちない仕草でベンチを指差し歩く。
互いに腰を下ろすと、緊張がマックスになり、無言になってしまった。
「・・・・瑞稀」
「おぉう?」
「もしかして、好きな人でもできたのか?」
「へっ?」
「ここ、カップルの間で有名な公園だろ?それに、このベンチって告白するとうまくいくとか何とかのベンチじゃ無いのか?」
諒の鋭い指摘に冷や汗が出る。
なんで知ってるんだ!?恥ずかし過ぎる!!
「・・・下見に来たんだろ?」
「ちっ、違う!」
「じゃあ、なんで?」
「・・・・なぁ、諒。俺、チビだし性格もガサツだし、喧嘩っぱやい所もあるけど、そんな俺と長い事、幼馴染でいてくれて感謝してる」
「急にどうした?」
「・・・・で、でもな。俺、そろそろ幼馴染を卒業したい」
「・・・・どういう意味だ?」
「お・・・俺っ・・・」
くそぉ・・・肝心なセリフが出てこない。
あぁ・・・正直、怖い。諒の反応が怖すぎる。
心臓の音が激しく鳴り響く。だんだん顔が火照ってくるのもわかる。
緊張から変な汗が止まらない・・・。
黙り込んでしまった俺を見て、諒が口を開く。
「俺、なんかしたか?」
「ち、違う」
「じゃあ、なんで幼馴染を辞めたいなんて言うんだ?」
「そ、それは・・・」
「俺といるの、嫌になったのか?」
「それはない!」
「じゃあ、何なんだよ?言ってくれないとわからないだろ?」
諒の声に不安が入り混じっているのがわかる。
これ以上、誤解させたらダメだ!頑張れっ!俺っ!
自分にそう言い聞かせ大きく深呼吸をすると、一気に想いを伝える。
「諒!俺、お前が好きだ!」
一息で言い放ち、グッと拳を握り俯く。
ほんのちょっとの沈黙が、永遠に感じるほど長く感じる。
「俺・・・俺、お前と幼馴染じゃなくて恋人になりたい」
一気に言い放った時とは違う、か細い声が出た。
「瑞稀・・・俺・・・」
諒の声に居た堪れなくなって席を立つ。
「ごめん!急に変な事言って・・・でも、俺、本気だから。お、俺・・・ごめんっ!先に帰る」
「えっ?ちょっと、待っ・・・」
呼び止める諒を無視して一目散に走り出す。
あぁ・・・俺の臆病者・・・・!!
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