第13話 ネットの反応

 最初の四人が集まるチャットルーム。

 通称、四天王の間。


 ミーコのお披露目配信が終わった後、直ぐに新しい投稿があった。


:我が生涯に一片の悔いなし

:最高だった


 ぽつりぽつりとコメントが投稿される。

 四天王達は、しばらく感動を共有していた。

 

:ずっと「かわいい」ってコメントしてる奴おったな?

:それはワイや

:お前かよwwww


 このチャットルームは完全な匿名である。

 参加者は、自分以外のコメントについて、それが誰の投稿なのか分からない。


:横になります

:突然どうした

:パパは、お兄様。ママは、ママは……アァァァァァァ!?

:お兄様ガチ勢さん、こんばんは^^

:こんばんは^^

:ちょりー^^

:ムキィィィィィィ!


 ただし、四天王の中において、一人は発言の傾向から中身を特定されつつあった。


:我々の感想はこの辺にして

:今日の配信、どうだったよ?


 もちろん一人が連続でコメントすることもある。


:良い感じだったんじゃない?

:謎の技術、盛り上がってたな

:ワイはソースコードのくだりすこ

:ちょっと緊張しててかわいかった

:みんな言ってること違くて草

:パブサするか


 パブリックサーチ。略称、パブサ。

 有名人や知人等、自分ではない他者の名前をインターネットで検索すること。


:5chで名前出てるけど、大半はクソみたいなレスやな

:あいつらまず否定から入るから

:専スレ以外は全部アンチスレみたいなもんやろ


 専スレ。専用スレッド。

 主に、特定の対象について語り合うための場所。


 四天王達が見ているのはVtuber全般を扱ったスレッドだった。

 その大半はミーコの配信を見ておらず、とりあえず否定的なコメントをしている。5chとはそういう場所である。


:嫉妬もあると思いますよ

:だって、あっという間に二万人弱でしょ?

:普通の個人勢なら、一万人すら難しいもん

:確かに。グリーフシード濁り放題やな

:お兄様ガチ勢の「もん」頂きました

:きっつ

:あ”? 開示されたいのですか?


 開示。開示請求。

 ネット上の誹謗中傷について、相手を訴訟する為、プロバイダーなどを通して本人の個人情報を獲得すること。


:心配だね

:ミーコの事情を考えると、アンチコメ見た時とか、やばそう

:事情? なんだっけ?

:普通の女の子はヒキニートになりません


 それは言葉を選んだコメントだった。

 しかし、他の四天王達には十分に伝わった。


:いじめか

:オブラート

:まぁ、可能性はあるわな

:アンチは有名税とか言うけど……


:いざとなったらお兄様が解決するやろ

:確かに。ワイらが心配することじゃない

:お兄様ガチ勢、レスバすんなよ。無視が一番や

:しません


:とりま、今日は大成功やろ

:アンチの心配する程度に勢いあるってことじゃん?

:それな

:そうですわね

:このまま百万人まで行ってくれ!


:ミーコ、これから忙しくなるんかな

:嬉しくもあり、寂しくもあり

:今はツイッターで鬼のように返信してるね

:ま?


:マジで全部のコメントに返信してて草

:えぇぇ……?

:何時間かかるのwww

:かわいい


:ほんま、健気過ぎるでこの子

:はしゃいでるんやろなぁ

:推せる

:このまま元気に百万人到達してくれ


 四天王達の会話は、ここから数分で一段落した。

 そのまま深夜を迎える。そして、今宵も五人だけの配信が始まった。

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