お似合いの言葉が見つからないよ

夜闇桴月

1.can’t

友達が、彼と結婚した。

純白のドレスに身を包み、桃色の口紅を引いて彼の隣で微笑む姿は、友人の私から見ても美しかった。

「おめでとう!」

素敵な2人にお似合いの言葉が、この世にあるだろうか。否、見つからない。

「夏帆、ありがとう。」

彼女は私に優しく微笑んだ後、一番の友達である由美ちゃんの手を握った。

「由美も、ありがとね。」

感動的なシーンだ。由美ちゃんはこの二人をくっつけたキューピッドである。

そりゃ沢山思うこともあるだろう。

「いいよ、気にしないで。是非、彼と幸せになってね。」

そう言った由美ちゃんの顔は、こちらが怖くなるほどに笑顔だった。

現に、目の前にいる彼女の笑顔は歪んでいる。そのまま、彼女の耳に唇を寄せる。

何を言っていたのか分からなかったが、彼女の動きが止まったことから、二人の仲は良好ではない事がわかった。

由美ちゃんはもう一度微笑むと、この部屋を後にした。

「由美ちゃん!!」

私は背筋を伸ばして颯爽と歩く背中に声をかけたが、返事は返ってこなかった。

堂々と長い廊下を歩いていく姿は、さながらヒーローの去り際のようであった。

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