有隣堂 大宮駅店

岡田 悠

有隣堂 大宮駅店

「思うんだけどさぁ、なんで、T書店とかに出し抜かれちゃうわけ?ガラスペンとか?早くやんなよ」


「すみません……弊社はがあまりにも……」


「いやぁさぁ、規模とかおしゃれさでは、あれだけど。キャラでは勝ってるよ」


「ハイ!いい社員ばかりですから」


「いやぁ、そうじゃなくて……。岡崎さんとか間仁田さんとかキャラはいいのに、書店としての地位がさぁ」


「ハッ!!」


「神奈川、東京、千葉、なんか足りない」


「足りない?」


「そう、足りなくない?」


「どこが……」


「一都?」


「六県?」


「いやいや、広すぎだよ。郁さん、その半分」


「三県ですか……ブッコローさん、話が、見えません」


「郁さん。三県でいま有隣堂に足りないのは?」


「さい……たま?」


「そう!埼玉県!」


「千葉の前に、埼玉でしょ」


「はぁ」


「なんで、埼玉飛ばして千葉いったの?」


「T書店さんの店舗一覧を御覧になったことありますか?」


「ないよ、どれ」


ブッコローは、郁さんからタブレットをうけとり、検索した。


「はぁはぁ。代官山ね、あのサインだらけにした。ほうほうほう、六本木、いい場所ばっかりだな。おっ!?湘南?すごいねぇ。洒落てんね~。うん?柏の葉?どこ?えっ!?千葉?柏のこと言っての!?」


「そうです。ブッコローさん、問題は、その下です」


「あっ……浦和 T書店。なんのひねりもない。しかも規模が……」


「残念ですが。その下は、北海道です」


「つまり、埼玉は……」


「模倣かもしれませんが、東京、神奈川、千葉なんです」


「くっ、そうか、それが現実か……。創業113年の有隣堂なのに、新規参入に抜かれていくとは……」


「すみません。拡散力が弱いばっかりに」


郁さんは、秘書らしくそそそと涙をハンケチで拭った。


「郁さん。わかったよ。もうひと肌ぬぐよ」


「ブッコローさん」


「おれ、中のひといる設定だけど」


「それ以上は、言わないで!!」


「いいや、郁さん!もう、岡崎さんと間仁田さんのボケに頼って、正体を隠し続けるのだって限界があるし。こんなオレを助けてくれ、オレの踏み台になった『つんどく兄弟』のためにも、オレの力を使わせてくれ!!」


「ブッコローさん!!」


「オレの全パワーよ!埼玉に有隣堂を!!!ハァっー!!!!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁ」







ズガガガガガっという地響きとともに、大宮駅構内に突如書店が現れた!


岡崎さんをはじめ、突如、『有隣堂 大宮駅店』に転移させられた店員は、


驚きをかきせなかった。


「こっ、ここは?」


「岡崎さん!大変です!本棚が空っぽです」


「!?」


岡崎さんをはじめ、書店員は、自分の近くの棚をみて青くなる。


「すっ、直ぐに出入り口、店の正面をなにかで覆って、『準備中』のふりをしろ!!」


ふたりの若者が、その声の指示に従い走った。


「岡崎さん、いつまで、ボケッとしているんだ!はやく取次店に連絡して!今すぐ搬入手配!それから、応援確保!!」


かつて、こんなに頼もしい間仁田氏を見たことがあるだろうか?


 こうして埼玉の地にめでたく有隣堂がやってきたのだ。


なぜ、こんなことが、有隣堂、いや、ブッコロー氏になしえたのか。


そう、彼はSSSランクの魔獣神『ブッコロー』なのだ。










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