ディナーは埋めたあとに
かじ
俺とあいつの関係
第一印象は最悪だった。いけ好かない。嫌いなタイプ。胡散臭い。絶対に関わらないような人種。
春。桜が散り、新しい門出である高校の入学式で、新しい環境、新しい人間関係。
そんな門出を祝う式でその男は新入生代表として『いかにも優等生です』というオーラを全身から発しながら大勢の新入生や保護者、教師たちを前に臆せず爽やかに言葉を紡いでいた。
その男を見て、女子達は静かにキャーキャー騒いでいた。その男は新入生代表に選ばれるほど成績も良く、見た目も良く、更には性格も良かった。誰にでも優しく接し、漫画だったらキラキラとしたトーンが貼られているだろうとこっそりと思っていた。
老若男女問わず全校生徒から好かれるのは時間の問題で、教師からの評判はすこぶる良く、女子は勿論、男子からも好かれいつでも人の輪の中心にいるのはその男だった。
平凡で、今まで彼女が一度、しかも2か月で別れたような自分とは世界が違う。
一生関わらないような人間だろうと思っていた矢先、夏目前の爽やかな日、転機を迎える。
体育委員の俺は、昼休み——午後からの授業に使う道具を体育館裏の倉庫から持ってくるよう教師に頼まれていたため、嫌々向かうとそこには人目を忍び喫煙している全校生徒から好かれている〝あの男〟がいた。
「あちゃー 見つかっちゃった」
少しはにかみながらそう言った男は、秘密にしてね、と言いながら俺の仕事を手伝い始めた。
「隠れて煙草吸ってるなんて、女子や教師が知ったら大騒ぎになるだろうな」
ただただ思ったことを言い、初めての会話をした。体育の準備を手伝ったことくらいで口止めになると思っているのだろうか。
「うーん……それは困るなあ。好きなご飯奢ってあげるからそれで手を打たない?」
「乗った」
食欲旺盛な年頃である俺は、その男、水瀬柚希との契約を高1の初夏、結んだ。
それからは、水瀬が煙草を吸いたいときに呼び出され、見張り役をしていた。お礼として食事を奢ってくれたり、テスト前には学年順位が真ん中より下程度の俺に勉強を教えてくれたり、自然と学内学外問わず一緒にいる時間が増え、高2になる頃には周囲から「本当に仲良いよね」と言われるようになっていた。
第一印象は最悪だったが、話してみると流石全校生徒から好かれるはずだと感心し、実は結構気が合うことに気付いた。
水瀬はというと、一年にして生徒会役員になったかと思うと二年にして異例の生徒会長にまでなった。流石全校生徒から好かれているだけある。
俺はというと、モテる水瀬とは裏腹に彼女の一人すらできない生活を送っていた。充実していないわけではないが、気になった女の子は皆、大抵一緒にいる水瀬のことが好きになっていくのだ。とうとう一人も彼女ができないまま高校は卒業した。
大学こそは、と思っていたが進学先の大学も水瀬と同じだったのである。
だが、学力が圧倒的に違う俺達二人が同じ大学に進学することになったのか分からず、本人に聞いてみたらけろっとした表情で
「天沢あまさわといたら退屈しないから」
と言われたが、隠れて煙草を吸っているようなやつだ。本心ではないだろう。
成人を迎えるまでの約5年間だけ、俺達は共犯者だと思っていた。成人したらこの契約も終わりを迎え、ただの友人になる。
そう、思っていた。
「天沢?今大丈夫?あのさ、俺、人殺しちゃった」
大学三年の春、突然友人から電話がかかってきたかと思ったら唐突に爆弾発言を喰らう。
「ちょ……っと待て、今どこにいる?家か?とりあえず向かう」
「うん———待ってる」
急いで水瀬が一人暮らしをしている家———両親は水瀬が高校へ入学してすぐに転勤したため、転校するのを拒んだので一軒家に一人暮らしをしていた———へ向かうと、この間付き合い始めたと報告を受けた水瀬の彼女が頭から血を流して倒れていた。
「別れ話切り出したら揉み合いになっちゃって……とりあえず黙らせようと思って灰皿で殴ったら動かなくなっちゃったんだよね」
人を殺したというのに飄々とした様子で淡々と起こったことを説明している水瀬と、驚きながらも死体を見てもそんなに驚きも焦りもしない自分がいた。
「とりあえず、ビニールシートか何かで包んでこれ以上部屋に血が滲みないようにするぞ」
「風呂場である程度血抜きする?そしたら運ぶときに困んないでしょ」
「運ぶって?」
どこに運ぶというのだろうか。警察を呼ぶのなら運ぶ必要はないし、なにより血が滲みるというだけで現場を動かすのも良くはないことを刑事ドラマで見た。
「埋めようよ。こないだお互い免許取ったしさ、ドライブがてら山まで行って、〝それ〟埋めよう」
彼女だったモノをそれ呼ばわりし、悪びれることもなく埋めようと提案してきた友人の表情を見て、冗談で言っているわけじゃないことがわかる。
一瞬、自首しよう、と提案するか悩んだが、そうすればこいつとはもうお別れになる。
犯罪は犯罪だ。しかし、バレなければ問題ない。
「アリバイはどうする?」
「大丈夫。そこらへんは俺に任せて」
俺達は、終わりのない共犯者になった。
室内から行けるガレージに死体を運び、適当にスコップや軍手を詰め込み早速出発した。
ポップな曲を流しながら、街を抜け、住宅がだんだんと少なくなって周囲に緑が増えていく。どんどんと山の奥へ進んでいく。道中の会話はなんてことはない大学で誰々がどうのやあの教授がどうのといった、殺人を犯した後の会話とは思えない程普通の会話だった。
舗装がされていない土の道を突き進み、ゴトゴトと車も俺達も死体も揺れる。
車で行ける限界のところまで行き、水瀬は停車した。
「ここでいいか~よし、掘ろう!」
明るい声で死体を埋める穴を掘る合図をされ、助手席に座っていた俺は準備していた軍手をし、後部座席に積んであった大きなスコップを取り、誰の所有地かもわからない山の中で穴を掘り始めた。
水瀬が言うには、一メートルは掘らないといけないらしい。山に動物がいた場合、掘り起こされる可能性があるからだそうだ。
死体の身長と深さを考えて頭痛がしてきた。土はそれほど固くはないが、柔らかいわけでもない。考えていても仕方がないので、二人でどれだけ掛かるかわからない作業を前に気を紛らわせるため鼻歌を歌いながら掘り進めていく。
どれぐらい経っただろうか。
「もうこれくらいで十分じゃないか?」
掘るのが嫌になったのもあるが、自分の身長から計算して一メートルはもう掘れていると思い、そう告げた。うん、これくらいで良さそうだね、と水瀬も汗を拭いながら承諾してくれたので穴を掘る作業も終わりとなった。
死体を二人で運び、穴に投げ入れる。これからまた埋める作業が待っているのか。
「これが済んだらさ~!ラーメン食べに行こうよ!お腹すいちゃった~」
確かに腹はすいた。しかし今する会話か?と思いながらも「とんこつな。」と自己主張しておいた。
埋め終わり、帰りの運転は俺がすることになったが全身の疲労がすごい。まだ20歳とはいえ、掘って埋めての作業は流石に疲れた。
時計を見ると、もう日付が変わっていた。腹も減るはずだ。
「どこのラーメン屋がいい?とんこつだと~ここから行くとするとあそこがいいかも」
「とりあえず美味しければなんでもいい。道案内しろよ」
「はーい」
スマホで道を調べながら、軽い返事をした。人を殺して死体を埋めたことなど忘れているかのようだった。土まみれになった服と軍手は用意しておいた袋に詰めて、持ってきた服に着替えたが———俺の服は勿論なかったため、水瀬が貸してくれた———やはり全身が土臭い気がする。
帰り道に食べたラーメンは、すごく美味しかった。店の味がいいのか、肉体労働後の食事だからこそなのか、わからなかったが今まで食べたどのラーメンよりも美味しいと感じるほどに俺も水瀬も満たされた。自分達にこびりついた土の臭いなど、完全に忘れるほどに。
それから、数か月ごとに水瀬に突然呼び出されることが増えた。
全て彼女を殺したという内容で。刺殺、絞殺、溺殺、撲殺……いろいろな方法で殺されていた。一番多いのは絞殺だった。俺が一度、血が出る殺し方は面倒だから止めろと言ったからだろうか。
ふと、こいつはそういう性癖なのかと思い聞いてみたが否定された。本当かどうかはわからないが。
そして俺はそのたびに俺は埋めるのを手伝い、帰り道のディナーを楽しみにするようになっていった。
もう普通の食事とは違う、特別な、最高の食事。
脳から汁が出ているのかと思うくらい中毒になっていた。ラーメンから始まり、鰻、ちゃんぽん、しゃぶしゃぶ、フレンチ、精進料理……一番を決めるのは難しいが、やはり焼肉が一番幸福感に満たされた。人の死体を埋めた後に同じ哺乳類である動物の肉を食べるのはどうかと思うがそんなことは関係なと思うほどだ。
一度、死体を隠蔽するのに楽だからというネットから得た情報を元に海へ行き捨ててみたが埋めるよりも遥かに手っ取り早く済んだ。
ただ、帰り道に食べた食事では全然満たされることはなかった。
そんな生活を続け、俺達は大学を卒業した。
俺はサラリーマン、水瀬はアルバイトしていたカフェにそのまま就職。
就職してからも俺達は埋めてからのディナーを楽しむことを辞めなかった。
もう人が死んでいても何も感じなくなっていたし、一度水瀬が何時に家に来てと言ったとき、時間通りに行ったら生きている彼女と遭遇し驚いたことがあったが、
「あ、ごめんごめん。今からするからちょっと待ってて」
「同じ大学だった天沢幸樹くん……だよね?なんで来たの~?」
彼女の最後の言葉がそれだった。水瀬が近くにあったコードの紐で彼女の首を絞め、どんどん血の気が引いていく顔と必死に抵抗しようとする彼女を俺は「おっ猫がいるな」程度の感情で眺めていたのだ。
水瀬のアリバイ工作や死体を埋める場所の選択———毎回違うところに埋めに行っていた———はばっちりで、事情聴取どころか死体が発見されたニュースすら見かけない。
お前本当に世渡り上手(?)だよな、と皮肉を込めてただの友人として休日に家に遊びに行ったときに言ったらそれほどでもないよと返されたが、それほどでもあるだろう。
「そういえばさ、今日店に変なお客さんが来て~」
とどうでもいい話を切り出してきた。ホームレスか何かでも来たのだろうか。
「どんなやつだったんだ?」
「なんか~見た目はチャラい感じで柄シャツ着たお兄さん?おじさん?なんだけど、突然『お前そうとう女から恨み買ってんな~女の怨霊がめちゃくちゃ憑いてるぜ。俺様ならなんとかできるけど、自業自得だし自分でなんとかしろよ』って言われてさ~意味わかんないじゃん?でも言われた通りとりあえずファブリーズ買って来たんだ~」
そう言って服ではなく自分の身体にシュッシュとファブリーズをかけている。
「なんでファブリーズなんだ?ファブリーズが取ってくれるのは臭いだろ」
「いや、ググったら除霊にも効果あるんだって!物は試しじゃん?」
その霊能者らしき人は、本当にそういった力があるんだろうな、と心の中で俺は思った。しかし、今のところ水瀬に怨霊が憑いていると言われても本当に?という気持ちしかでてこないのである。
「う~ん。なんとなく肩が軽くなった気がする!」
「気のせいだろ」
事故に巻き込まれることもなく、怪我をすることも、病気どころか風邪をひいたところすら俺はみたことがない。怨霊が憑いていたらそういう現象が起こるのではないのだろうか。
12月24日 クリスマスイヴ
恋人たちの日だ。
まさかとは思ったが、こんな日に呼び出されるとは思っていなかった。
「ごめんね~流石に今日は天沢にも予定あったでしょ?」
「嫌味か?彼女いないの知ってんだろ」
ははは、と笑いながら、俺達は手慣れた様子で山へ向かった。
外は雨が降っていたが、埋める予定の山奥へ着くころにはもう止んでいた。
先程まで雨が降っていたせいで、噎せ返るほどの土の臭いだ。軍手をはめた手で鼻を少し覆いながら、早く終わらせて飯食いに行こうぜと作業を開始した。
埋める作業も終わりを迎えるころ、桜が舞い散るようにひらひらと白いものが降ってきた。
「雪——」
俺は口から自然と言葉が漏れていた。
「えっ?呼んだ?あぁ、雪——降ってきたね。突然名前呼ばれたかと思ってびっくりした~ホワイトクリスマスイヴだね!」
そういえばこいつの下の名前は柚希だったなと、言われて思い出した。お互いずっと苗字で呼び合っているからだ。
雪が降るだけあって、その日はとても寒かった。恋人達は仲睦まじく、くっついている頃だろう。
埋め終わり、待望のディナーへ赴く前に近場のコンビニで温かい物を買おうという話になった。
当然支払うのは水瀬だ。今までの食事も全て水瀬が支払っている。
俺は温かい缶コーヒーと肉まんを買ってきてもらい、水瀬は缶のコーンスープを車内で飲んでいた。時計を見るともう0時を回って25日。クリスマスになっていた。
「そういえばさ、なんで天沢は彼女つくんないの?高校から一人もいないよね?」
「気になる子がいても全部お前の彼女になってったんだよ」
今まで嫌味でも言ったことのない事実を、水瀬に言ってやった。
「まあ、全部そうなるようにしてたからね」
?
言われたことがよくわからなかった。全部そうなるようにしていた、ということは嫌がらせだったのだろうか?俺の表情から何かを察したのか、
「あ、嫌がらせじゃないよ。俺が、天沢と誰かが付き合うのを見るのが嫌だっただけ」
そう言って、水瀬は初めてしゃべったときのこと覚えてる?と聞いてきた。
「体育館裏でお前が煙草吸ってるとこ見たときだろ」
「そう。あれもね、計算。違うクラスだったけど、天沢が体育委員だったの知ってて、あの時道具を取りにくるって知ってて——待ってたんだ」
違うクラスだったけど天沢のことずっと見てたんだよ、と笑顔で言われた。
「どこから……どこまでが計算だったんだ——?」
「う~ん……だいたい全部?でもここまで仲良くなれるとは思ってなかったかな」
続けて、煙草を吸っている優等生の共通の秘密がなくなってしまうと関係も終わってしまい、疎遠になってしまうんじゃないかという心配から殺人に及んだと話した。馬鹿だな。と小さい声で呟き、水瀬の話を静かに聞いていた。
「どうして俺にそこまで執着するんだ……?お前には他にも仲が良いやついただろ」
「好きだからだよ」
一瞬、何を言われたかわからなかった。
「いや、俺もお前のこと好きだけど、それだけでここまでする必要あるか?」
手の中の缶コーヒーは、もう冷めていた。
「天沢の言ってる好きとは違う〝好き〟だよ。Likeじゃなくて、Loveなの」
「———。」
男に言われたのは初めてで、なんと反応していいのかわからない。いや、女に言われたのも中学が最後だし、きっかけは自分からだったが。
「天沢はさ、なんで俺のやったこと——誰にも言わなかったの?」
煙草はともかく、殺人は流石に警察に行こうって言われるかと思った、そう続けた水瀬の顔は、笑ってはいたが少し寂しそうに見えた。
「最初は——驚きはした。でも、警察に行ったらもうお前と会えなくなるな、って思って……共犯者になることにした」
「はは、共犯者って……的確な言葉だね。それって天沢も俺のこと大事に思ってくれてるって思っていいの?」
言葉に詰まる。
俺は、水瀬柚希が好きだ。友人として。しかし、先ほど告白された際は驚きはしたが嫌な気持ちどころか嬉しい気持ちになった。もしかして、俺も友人としてではなく、水瀬のことを好きなのかもしれない。正直な気持ちを、全て本人に伝えた。
助手席の水瀬は顔を覆い、足をバタバタさせたかと思うと顔を半分出し、
「やべー……嬉しい——」
独り言を言っていた。暗くてあまり良く見えないが、耳まで赤くなっているように見える。俺も何故か顔が熱くなっているのを感じた。
沈黙が続く。
お互い、顔を見合わせられない。俺も恥ずかしい気持ちだし、恐らく水瀬もそうなのだろう。
チラッと、見てみようと助手席のほうに目線を送ると、同じタイミングで水瀬もこちらを覗いて目が合ってしまった。
「ねえ、キスしていい?嫌ならよけていいから」
声を少し震わせながらそう言った水瀬は、顔をゆっくりと近づけてきた。どうすればいいかわからない俺は、少し躊躇った後——水瀬の方にゆっくりと顔を近づけていった。
あと数センチで唇と唇が重なる——その時、誰かに頭の方向を無理矢理変えられたかのように自分の顔の向きが変わった。?という表情の水瀬が視界の端に見える。
顔の向きを戻そうとしても動かない。
赦さない。赦さない。赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦サない赦さナい赦さなイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ
頭の中で複数人の声が重なって聞こえる。そして景色がぐるぐると回って———
—— Side minase yuki
目の前で何が起きたのか分からなかった。
ずっと、ずっと片想いしていた人と、両想いになれた。
最高の時間だった。もう少しで、唇を重ねられた。
なのに、少しずつ、顔が近づいていき、心拍数も同じように上がってもう少しというところで急に顔の向きを変えたかと思うと、人間では不可能なほど頭が何回転もしていき、俺の膝に最愛の人の首が落ちてきた。
何故 何故 何故 何故
今までしてきたことの報いだろうか。こんな形で最高の時間が終わるなんて思っていなかった。
俺は、気付いたら車の外へ飛び出していた——最愛の人の首を抱えて。
『12月25日未明、〇〇県△△市の山林で、男性二人の遺体が見つかりました。所持品から二人は××県在住の水瀬柚希さん(24)・天沢幸樹さん(24)。水瀬さんは自殺とされ、天沢さんは事件の可能性を含め現在警察が———』
—— Side Police
「うわ、なんですかこれ……人間ができる殺し方じゃないですよね——これ、首のところ捻じ切れてませんか……?」
「あぁ——お前はこういうの初めてか?たまにな、あるんだよ。こういう理解できないような死体ってのが」
新人とみられる刑事と、初老のベテラン刑事がしげしげと車内に残された首のない死体を眺めていた。
「まあこういうのはだいたい未解決事件か適当な理由つけて事故になるかだけどな。あっちの首吊りは自殺で片付くし」
「首吊った下付近にこの捻じれ死体の頭部と思われるのが転がってるのも謎ですよ……」
そう言って、新人刑事は顔を歪めながらあっちと言われた方を向いて話した。
「そこのコンビニ店員の聞き込みでも、普通に買い物して出て行ったとしか言ってなかったですし、その後何が起きたのか……」
「そりゃもう亡くなったこの人達に聞くしかわかんねえわな。まあ、そこはもう考えずに後部座席とトランクから出てきたスコップと泥のついた服、鑑識に回せ」
ディナーは埋めたあとに かじ @kaji-taka
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