閑話 

「それで」

「前にも説明しましたが、あの場所の払下げは、難しいのです。払い下げになるように細工するのは、無理です」

「聞き飽きましたよ、そのセリフ」


「先代クレナータは、領主と昵懇の仲でした。ですから土地の規制が最もキツくなる指定になっていました。調べ上げるのも大変でした。

これはクレナータですら知りません」


「だが、先代の息子がいるじゃないですか。彼にも所有権が発生するはずだ」


「何度も申していますが、すでにあの場所は公共地として確定しています。

だから、色々調べて、払い下げできるか画策しました。

生前に寄付している形になっているんです。息子が入り込める余地はないのですよ。

寄付された遺産に関しては、現在クレナータが公共費となったものの再分配の検討を申請しています。それだって、遺産管理者だったクレナータが申請したから、検討案件になったんです。

そうでなければ孤児院運営の公共費以外としては、ビタ一文動きません。


そのクレナータが申請したとしても、あの場所が払い下げになる事は、殆ど無いでしょう。先代の息子も、遅くともクレナータが遺産を継ぐ前であれば、何とかなったかもしれません。今更ですが。

先代がそこまで手を尽くした理由は、わかりませんが」


「実に忌々しいことだ」


「先代の息子も、クレナータが認めたから、話になっているだけで、本来なら門前払いだっておかしくないのですよ。だから彼を足がかりにしようとしても無駄です」


「せっかく、連れてきたというのに。役に立たないとは」



「なぜ、あの場所にこだわるんです。商売をするにしても、もっといい場所はいくらでもあるでしょうに」

「そんなこと、貴方がが知る必要は無いのですよ」


「それで、捕まった男達はどうしますか? 」

「別段、放っておけばよいでしょう。

依頼をした男は、もうこの街にはおらんのですから。

別の街の支店に移しました。こちらに繋がる手がかりなどないのです。

そうですね、貴方が変に気にしなければ全く問題はないと思いますがね」


「判りました」


「クレナータの動向はしっかり掴んでおいてくださいね。

そのくらいの役には立ってください。

それから、もしあの建物を建て直すとかいう話が持ち上がってきたら、こちらの系列の人間に仕事を依頼してください」



「全く忌々しい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る