加入者

「あと一つ、おび?マフラー?布……と、とにかく!この『メギンギョルズ』、欲しい人はいるかな?」



「ユウトが貰うのは、どう?今回、一番活躍したのはユウトだし……」




 マコトの提案に、みんなも賛同の意を示してくれる。単純に力を増幅させてくれる布なら、俺にとって相性も良さそうではある。




「じゃあ、お言葉に甘えて……俺が、いただこうかな。この秘宝は」



「うん。それで、良いんじゃない?ギルドとしても、エースが強化されてくれるのは頼もしいかぎりだし」



「そ、そう?ありがとう」




 エースか。アスカから言われると、嬉しい。

 すると、彼女は何かを思い出したかのように言った。




「そういえば!候補生のみんなは、参加してみてどうだった?朝日奈さんは、加入を決めてくれたけど……」




 その質問に少し悩むそぶりを見せて、最初に答えたのは周防さんだった。




「ほんなら、私も入らせてもらおうかな。こんな秘宝いいものも貰っちゃったし、チームの雰囲気も悪くないし」



「おっ、マジ!?嬉しいけど、『白銀の刃』には戻らなくて良いの?」



「うん。向こうには、他にタンク役は一杯おるやろうし……こっちに、壁役はおらへんのやろ?まぁ、何かあったらヘルプぐらいは行くつもりやけど」



「ありがとー、ホノカ!助かるよ。うちはギルド初心者が多いから、経験者の加入は色んな意味でありがたいんだよね」




 心なしか、アスカも嬉しそうだ。旧友で大手ギルド経験者が入ってくれれば、実質リーダー的役割を担っていた彼女の負担も減ってくれるだろう。

 本来なら、俺が減らしてあげなきゃなんだけど。


 周防さんは次に、隣にいた委員長に話をパスした。




「明智さんは、どうするん?」



「わ、私も必要としてくれるなら入りたいけど……お役に立てるかどうか」




 自信なさげに魔導書を両手で抱えてうつむく彼女に、スッと横に来て神坂さんが励ました。




「必要どころか委員長の指揮がなかったら、危なかったよ?私たち。自信を持っていい、明智さんは十分に優秀なアンサーだから」



「神坂さん……ありがとう」




 その二人のやり取りにニコッと微笑むと、アスカは腕の中の猫を撫でながら言った。





「じゃあ、明智さんも加入ってことで決まり。これから、よろしくね」



「は、はいっ!こちらこそ、よろしくお願いします!!」



「うん。あとは、男性陣か」




 アスカの問いに、先に答えたのはコースケだった。




「ここも魅力的なギルドだけど、実は大手の生産系ギルドからスカウトされててさ。そっちの方に、進もうかと思ってるんだよな。俺」




 生産系ギルドとはその名の通り、生産系のユニークスキルを持つ冒険者を集めた支援特化のギルドである。各団員に店舗を持たせてあげたり、提携ギルドに武具を提供したり、普通のダンジョン攻略に至るまで活動内容は多岐に渡ると聞く。

 コースケのユニークなら、スカウトされるのも頷けるというものだ。




「そっか。そういうことなら、仕方ないね」



「悪いな。ただ個人的な武器提供なら、いつでもお安くしとくからさ!気軽に相談してくれよ」



「うん、ありがとう。頼りにしとく」




 次に答えたのは、レイジだった。




「俺も、パスだな。お前たちの実力は認めるが、学生だらけの新興ギルドに身を置くような判断ギャンブルは今はまだ出来ん。これから、大手ギルドから声が掛かることだってあるかもしれん。そっちに進んだ方が将来的には安泰だからな」



「なるほど、三浦くんらしい回答ね。ただ、それも正しい選択だと思う」



「だが、まぁ……卒業するまでに、気が変わることもあるかもしれん。その時は、こちらから申請させてもらうとしよう。それまで、名声を挙げてギルドの価値を上げておいてくれ。出来る限りな」



「はいはい。言われなくても、そのつもりだっての!あの時に入っておけば良かったって、後悔させてやるんだから」



「ふっ。楽しみに待っているとしよう」




 さすがは、三浦。現実主義者リアリストな解答だ。まぁ、俺も不安ではある。ダンジョン攻略は問題ないだろうが、ギルド運営なんかは全くの未経験。果たして、どこまでやれるものなのか……。




「でも、これで目標の10人は達成したわけだ。ようやく、正式にギルドを発足できそうだね」



「協会に申請すれば、良いんだっけ?」



「うん。今度、一緒に行こう?ついでに、ユウトの冒険者ランクも査定してもらいなよ。ギルマスが、いつまでもランク無印は格好がつかないし」



「はーい」




 いよいよ、本格的にギルド始動か。「ギルドの始め方」みたいな攻略サイトとな、転がってないものか。


 そんな俺とアスカの会話を見て、サクラがクスッと笑った。




「なんか……二人とも、親子みたい。ふふっ」



「はぁ?ちょっと、サクラ!?私、そんなに年取ってないから!」



「違います、違います!なんか、関係性がそんな感じに見えただけで、えへへ」




 それは、俺が子供っぽいということなのか……強く、否定できない。人生経験は人より多く積んでるはずなんだけどなぁ、情けない。




「と、とにかく!改めて、今回はお疲れ様。みんなの活躍のおかげで、何とか『アルゴナウタイ』の初陣を勝利で収めることが出来ました。今日はゆっくりと休んで、後日に祝勝会でも開きましょう」



「おっ。おごりか?」



「はい。ギルマスのおごりです」



「よし。参加しよう」




 そこ、勝手に決めるな。アスカにレイジ。



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